本の世界
本の世界
2025年09月19日(金)
鈴木俊貴著
2025年1月28日発行
小学館
1700円
僕は珍しい生き物を対象としたわけでもなければ、特殊な技術を使ったわけでもない。身近な野鳥のシジュウカラを対象に、双眼鏡とレコーダー、そして、ちょっとしたアイデアで研究を進め,「シジュウカラは言葉を持つ」ことを発見した。
鳥たちは他の種類の動物の言葉まできちんと理解し生きている。種の壁を越えた会話は鳥同士に限らない。実はリスも小鳥の言葉を理解できる。シジュウカラが「ヒヒヒ」と鳴くと、リスは慌てて藪にダッシュする。リスよりも小鳥の方が目が良く、いち早くタカの襲来に気がつくことが多い。リスたちはそれを知っていてカラ類の群れの近くにいる。数十万年前、僕たちの祖先がまだアフリカで暮らしていた頃は、人間も鳥の言葉を理解していたに違いない。生まれて間もない赤ちゃんを猛禽類や肉食獣から守るためにも、鳥の言葉は役に立ったはず。
しかし、現代人のほとんどは正しく自然を見る目を失ってしまった。いつしか人間は自らの持つ「言葉」によって、人間と自然に乖離が生まれ、動物たちの言葉を理解できなくなってしまった。それどころか、自然の関わり方も、共生から利用へと変わってしまった。 続きを読む
2010年11月23日(火)
いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル著
鬼澤忍訳
早川書房
2300円
2010年5月25日発行
正義とは何なのか、自由に限界があるのか、自由市場は公平なのか、市場介入は許されるか、等々を具体的な事例を基に歴代の哲学者と共に考えていく。2、3頁読み進んでも10頁ほど戻り、なかなか理解困難な大物である。じっくり挑戦してみよう。
参考に 藤原 正彦著「国家の品格」
kojima-dental-office.net/blog/20090306-1364#more-1364
「まず公平に戦いましょう」は、「武士道精神」によれば「卑怯」に抵触します。強い者が弱い者をやっつけることは卑怯である。論理的に正しいことと善悪は別次元のことです。 続きを読む
2019年08月29日(木)
人体 神秘の巨大ネットワーク
丸山優二著
NHKスペシャル「人体」取材班
www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20171001
NHK出版新書
2019年5月10日発行
900円
本書は、NHKスペシャル「人体 神秘の巨大ネットワーク」シリーズで放送された内容をおさらいしつつ、さらに掘り下げたもの。 続きを読む
2011年08月04日(木)
野地秩嘉著
小学館
2011年2月12日発行
1800円
著者が1995年から取材を始め、完成までに15年間も要した力作である。
オリンピックを支えた者たちは、真正面からオリンピックに向かい合い、何年もの間、オリンピックだけのことを考えて人生を送った。オリンピックの主役である選手たちより、彼らはオリンピックの本質を理解していた。
彼らが大きな仕事を遂行するため、試行錯誤の上にたどりついたのがマニュアルとシステムを作ることだった。自分たちの体験を仲間に伝え、ミスが起こらないようにしたのがマニュアル化だ。自分の恥だと思って、抱えてきた失敗を他人に進んで公開することで、同じようなミスが起こるのを防いだのである。システムとは自分が知らせたくないことを他人に伝えることから設計が始まる。
今の日本人に足りない、がむしゃらな情熱と変化を恐れない腹のくくり方をこの本から学びたい。 続きを読む
2023年01月05日(木)
「究極のテレワーク」と困難を突破するコミュニケーション力
著者 野口聡一
世界文化社
2021年12月15日 発行
1400円
2019年末に現れた新型コロナウイルスの脅威は、世界中に広がり、人々の動きを止めた。大切な人が亡くなり、人々の心は分断された。否応なしに、私たちの生活を変えてしまい、長期にわたる在宅活動を強いてきた。ここ数年は耐え忍ぶ時代。
ポスト・コロナという時代を切り開いていくためには、「物理的に離れていても、心理的に孤立しないこと」を意識し、ダイバーシティー(多様性)、インクルージョン(受容性)、そしてレジリエンス(強じん性)が重要。
この本を、故・立花隆先生に捧ぐ 続きを読む
2023年10月20日(金)
君府名物考
著者 鈴木薫
講談社文庫
2020年9月9日発行
1000円
長らく品切れになっていた初版(1995年NTT出版から刊行された本書の原本)を学術文庫として刊行。本書は、イスタンブルの食の世界の文化史というべきもの。副題の「君府」はイスタンブルの漢名。「名物考」は、中国文学史の青木正児先生の名著「中華名物考」をならったもの。
イスタンブル食文化史、食文化論は、本書の初版刊行から四半世紀が経った現在もトルコ本国でも欧米でも見る機会がない。本書のめざすところは、1453年以来、「君府」を帝都としたオスマン帝国の歴史的発展の過程を踏まえながら、帝都イスタンブルの食の世界の展開を垣間見ることにある。トルコの食品の豊かさとトルコ料理の名物珍味の数々を紹介していく。
トルコ大周遊15日間
kojima-dental-office.net/blog/20231207-17636 続きを読む
2008年08月17日(日)
ひろがる人類の夢
著者
山中伸弥 京都大学再生医科学研究所教授
畑中正一 京都大学名誉教授 ウイルス研究
集英社
1100円
2008年5月31日発行
世界が注目した偉業を2人の対談でわかりやすく解説した1冊。これからどんな道が開け、何が課題なのかじっくり読んでいただきたい。また、研究の環境整備も考えさせられる。
山中伸弥、藤井聡太著「挑戦 常識のブレーキをはずせ」
kojima-dental-office.net/blog/20220115-15293#more-15293
山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る
kojima-dental-office.net/blog/20211124-15014#more-15014
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2018年08月14日(火)
生命をめぐる思索の旅
動的平衡と絶対矛盾の自己同一
著者 池田善昭 西田哲学の継承者
福岡伸一 分子生物学者
「生物と無生物のあいだ」
kojima-dental-office.net/blog/20200914-14306#more-14306
明石書店
2017年7月7日発行
1800円
「動的平衡」概念の提唱者・福岡伸一氏が、池田善昭氏を指南役に、専門家でも難解な西田哲学を鮮やかに読み解いた1冊。その過程で「生命の定義」にもたどり着く。 続きを読む
2025年07月19日(土)
最相葉月、口笛奏者・世界チャンピオン武田裕煕著
2025年2月26日発行
ミンマ社
2000円
口の働きを育み、歯並びを整えるために口笛を吹けるか吹けないかは大切な指標になる。それでも、指笛や手笛と同じく実際に教えるのは難しい。この本には、言葉でステップを踏んで解説してある。
増﨑英明 最相葉月著「胎児のはなし」
kojima-dental-office.net/blog/20191111-13390#more-13390
口の働きを調べるアンケート 口笛が吹けますか
kojima-dental-office.net/20100206-1518#more-1518
T4Kによる上顎アーチの改善
kojima-dental-office.net/20220811-3588#more-3588
音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む
kojima-dental-office.net/blog/20230815-17329
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2025年11月25日(火)
著者 秋山仁
2025年10月7日 発行
講談社α新書
1100円
来年80才。神様がいつまで与えてくれるか分からない時間を自分で精一杯面白く、かつ温かいものにできるか、いくつになっても人生は挑戦だと思うこの頃。明治から昭和にかけて活躍した小説家の正宗白鳥は、「人生は知ることではなく、味わうもの」と言っている。終活といわれる類のものに人生の時間を使うことが、自分の人生にとってはベストな解だとは思えない。
みなさん、この世に生を受けた者同士、“人生最後に向けての過ごし方”という難問に自分自身のベストな解を見つけるべく、お互いに頑張りましょう。 続きを読む
