本の世界
進化・生物多様性
2009年04月16日(木)
サイズの生物学
本川達雄著
1992年8月25日発行
中央公論社
680円
読み継がれてきたことに納得できる本である。
動物が変われば時間が変わるということを知った時は、新鮮なショックを感じた。時間が違うということは、世界観がまったく異なるということである。時間とは、最も基本的な概念である。しかし、自分の時計は何にでも当てはまると、なにげなく信じ込んで暮らしてきた。そういう常識をくつがえしてくれるのが、サイズの生物学である。一生を生き切った感覚は、ゾウもネズミも変わらないのではないかと思う。
サイズを考えるということは、ヒトというものを相対化して眺める効果があり、ヒトの自然での中の位置を知ることが出来る。人が己のサイズを知る、これは人間にとって、最も基本的な教養であろう。 続きを読む
2022年02月27日(日)
小林武彦著
講談社現代新書
900円
2021年4月20日発行
遺伝子の変化(変異)が多様性を生み出し、その多様性があるからこそ、死や絶滅(選択)によって生物は進化してこられた。その過程で人類を含む様々な生き物は、様々な死に方を獲得してきた。現在も「細胞や個体の死」が存在し続けるということは、死ぬ個体が選択されてきたということ。「生き物が死ぬこと」も進化が作った。
老化というヒトに特有の現象は、どういう意味があるのか。ヒトの体内にわざわざ細胞を死なせるプログラムを遺伝子レベルでなぜ組み込んだのか。 続きを読む
2019年07月10日(水)
渡辺佑基著
2019年2月28日発行
河出書房新社
920円
国立極地研究所に所属する生物学者。専門分野は、海洋動物(魚、海鳥、海生哺乳類)の生態。生態を研究するためツールとして、動物の身体に小型の計測機器を取り付ける「バイオロギング」の手法を使っている。10年ほど前の大学院生の頃、バイオロギング機器をタイマーで動物の体から切り離し、電波を頼りに回収するという独自のデータ回収システムを開発した。動物を捕獲する必要がなくなり、応用範囲が飛躍的に広がった。
本書では、体温という物理量が生物の姿かたちや生き方をどのように規定しているのかを明らかにしたい。昆虫にも、魚にも哺乳類にも当てはまる統一理論「生物の法則」にもチャレンジしてみたい。 続きを読む
2010年09月06日(月)
井田徹治著
岩波新書
720円
2010年6月18日発行
第6の大絶滅、生命史上最大の危機を迎えている。これまでの過去5回と質的に異なり、人間の活動が原因である。また、絶滅後に新たな種が生み出されてきた現場だった湿地や熱帯雨林も、今回は破壊が急速に進んでいる。
「生物多様性のホットスポット」を取材してきた環境問題を専門とする記者が、問題点とこれからの糸口を紹介している。ぜひ、この機会に当たり前が当たり前でなくなっていくことに気づき、考え行動したい。 続きを読む
2018年11月10日(土)
なぜ「私たち」が生き延びたのか
更科功著
2018年1月10日発行
NHK出版
820円
ネアンデルタール人の脳はヒトの脳より大きい。1700ccを超えることさえ珍しくなかった。言語がないか未発達な時に、多くの物事を記憶するのに脳の容量を大きくしなければならなかったのかもしれない。
1万年ぐらい前までのホモ・サピエンスの脳は約1450cc。ちなみに現在のホモ・サピエンスは約1350cc。文字が発明されたおかげで、脳の外に情報を出すことができるようになり、脳の中に記憶しなければならない量が減ったのだろう。また、高度な言語が発達して、高度な社会を発展させることができた。 続きを読む
2015年03月13日(金)
究極の生き残る技術
進化生物学者 宮竹貴久著
2014年3月19日発行
講談社新書
840円
一般的に「先送り」は、悪いことだというイメージがある。仕事も、勉強も、家事も、先送りにしたツケはたいてい後で自分に返ってくるとされる。しかし、先送りこそ、多くの生き物が進化の過程で身につけてきた賢い生き残り戦術なのだ。 続きを読む
2018年01月20日(土)
発生・発達・進化の謎を解く
著者 大隈典子 東北大学大学院医学系研究科教授
東京医科歯科大学歯学部卒業、専門は脊椎動物の神経発生
発行 筑摩書房
本体価格 860円
発行 2017年12月10日
福岡伸一 阿川佐和子著 センス・オブ・ワンダーを捜して
kojima-dental-office.net/blog/20111208-1185#more-1185 続きを読む
2012年01月15日(日)
本川達雄著
新潮新書
2011年6月20日発行
740円
衝撃的な『ゾウの時間 ネズミの時間』から20年。再び、著者が現代社会の問題点を生物学者の視点から切り込む。生物多様性、地球温暖化、南北問題そして共生やリサイクルなどを考えるヒントもおもしろい。また、今まで見逃していた生物や自然の不思議さに気づかされる。そして、還暦を過ぎたこれからの生き方にも驚かされる。 続きを読む