のぼるくんの世界

のぼる君の歯科知識

歯科衛生士のためのヘルスカウンセリング

2021年09月11日(土)


宗像恒次監修・著
1998年1月10日発行
クインテッセンス出版
6500円
 本書で述べるヘルスカウンセリングは患者さんが必要な行動改善に自ら気づき、自分の意思によるセルフケア行動を育てるための行動科学に基づいた効果的な係わり方である。
 頭で分かっていながら行動の決断と実行ができない背景には、不安、怒り、悲しみなど隠された感情を持った意思が働いていて行動を妨げている。歯科医療従事者は患者さんの隠された感情や意思に気づき、自分自身で決断できるように支援できるカウンセリング技法を身につける必要がある。
 我が国のカウンセリング法は、C.ロジャースのカウンセリング法が主流。
www.jsccp.jp/near/interview5.php
 言葉や行動の背後にある隠れた感情や意思に気づくことに時間がかかりすぎ、長期になる。そのため、依存心を高め、自己決定や自己成長が困難になる場合が多い。
 ヘルスカウンセリング法は、構造化連想法を用いて右脳を効果的に作動させるもの。
www.healthcounseling.org/greeting.html
 限られた時間で隠された感情や意思への気づきを経て、本当の問題が見え、解決のための自己決定や自己成長が可能で、忙しい医療現場に最適である。
 ステップアップしていく学習法や様々な事例が紹介されている。
参考に
 ヘルスカウンセリング -患者の隠れたニ-ドを知る-
kojima-dental-office.net/19990516-2823#more-2823
日時  1999年5月16日 (日)9時~15時
講師  筑波大学教授 宗像 恒次先生
 患者さんの世界に立つヘルスカウンセリング
kojima-dental-office.net/19950628-5011
 スタディグループ健康家族 第4号 はじめに
kojima-dental-office.net/19990801-1173

1.「情報提供」と「行動変容」は違う
 臨床の中で患者さんの行動変容に働きかけをしてきたが、従来の指導法では限界があり、予防や治療の方法を伝える「情報提供」に過ぎなかった。自分の健康をセルフケアしていこう、あるいは病気に立ち向かっていこうという気持ちにまで踏み込んでいなかった。
 専門家は専門的な枠組みの中で最高のことをしようと考える。でも、患者さんは職場や家庭などにおける様々な生活とのバランスの中での最も良い治療を望んでいる。自分の生活全体の犠牲を最小限、かつ簡単な方法で済ませたい。だから、医療者が求める完璧さなどに付き合いたくない。
患者さんの求めているものが分からないと、情報を与えても患者さんの気持ちは動かない。医療者の「外」から患者さんに働きかけるプロフェッショナルケアと、患者さんの「内」側から起きてくる行動変容とは方向性が違っていた。

2.ヘルスカウンセリング法
 「カウンセリング」という言葉は、これまで指導や相談などを含むものから含まないものまで多様に使われてきたが、本稿では基本的に意見や助言をすることを意味しない狭義のものであり、ここで言う「カウンセリング法」は、本人が自らの言動の背後にある気持ちや感情に気づくようになり、さらに様々な連想やひらめきが生じることで隠された感情に気づき、自分の本当の問題が見え、自ら解決法を見出すように支える方法である。
 行動科学の分野では、患者さんが自ら行動改善の必要性に気づき、自分の意思で動機を強め負担感を軽減し、行動変容を行おうとするセルフケア行動のための自己決定心を育てる効果的な手法がカウンセリングである。
 ヘルスカウンセリングにおいては、医療者は健康についての「権威者や保護者」ではなく、人々の健康問題の「相談相手」という立場で係わることになる。

3.構造化連想法(SAT)による効果的な右脳活用カウンセリング
 カウンセリング法では、思考ではなく、感情に焦点を絞る。「今ここに」わき起こる感情であればあるほど、そこに本当の問題が存在していると考える。意識から無意識へと、右脳機能による連想・ひらめき・直観を使い、意識の関所(心的防衛機制)を越えて、隠れた本当の感情に気づけるように助けることを促すものである。
 構造化連想法(SAT)が、C.R.ロジャースのクライエント中心療法やE.アイビーのマイクロカウンセリング法よりはるかに短期間で効果を奏するとすれば、それはこの右脳の積極的な活用による。
 追いつめられている状態にあり、ストレスや気になる問題を持っている人は「共感」されると、心理的な安全感が確保され心的防衛機制を弱められ、右脳をうまく働かせることができる。

4.ヘルスカウンセリングの基本姿勢
 観察、傾聴、確認、共感を常にとり続けなければならない。
1)観察
 話の背後にある気持ちや感情が分かるように相手の話を聴くことが大切である。
 「つらい」「苦しい」という感情用語を使っているのに、顔が笑っているなど不一致が見られる人がいる。言語と非言語の表現の不一致を告げ、相手の気持ちを言ってもらい、本当の気持ちの気づきを待つことも必要になる。
2)傾聴
 相手の話を聴こうとすると、しばしば自分の頭や心の中にそれを邪魔するものが生まれてくるため、相手のポイントを捉えられないことが多い。それは、「心のブロッキング現象」が起きるからである。
 相手の話が自分の経験したことと「全く一緒だ」と思うようになると、自分の経験した世界にはいるため、実際はズレがあっても自分の経験からのみ相手の話を聴きがちになる。そのため、心のブロッキングが生じ相手の言いたいことや求めているものからズレることになる。
 カウンセラー自身の意見、想像、評価などを心のブロッキングとして自覚しそれを意識的に脇に置きながらフォローしていくことが「傾聴」姿勢になる。カウンセラーの持つ知識や意見や判断力が、患者の気づきや成長を妨げることがあることを肝に銘じておく必要がある。
3)確認
 相手が話し終えた時に、カウンセラーの言葉で話のポイントを表現して相手に返し、その反応を見て確認することが大切である。気持ちを的確に捉えて確認した時には、相手は実に生き生きした表情を返してくれる。少しでも相手の反応に不自然さがある場合には、「どこが違いますか」と心のテーラーリングを徹底することである。特に非言語的な表現を合わせることは重要である。
4)共感
 共感とは同情や同感ではない。共感とは、「相手の気持ちに近似したものを自ら体験することである」。共感には心を開く作用があり、癒しの力がある。

5.カウンセリング技法と展開手順
1)開いた質問を用い、効果的に沈黙して聴く
 答えがイエスかノウかのどちらかの選択を迫るような“閉じた質問”では、心を閉ざしがちになる。そこで答えが自由で制約されない問い掛けが必要になる。これは“開いた質問”と呼ばれる。例えば、「どんことが気にかかっていますか?」
 相手の心を開いた話に対して、うなずきなどの効果的な沈黙法を用いて共感的に返すことで、分かってくれているという安心感がさらに強まり、次第に素直に話してくれるようになる。クライエントが自由に話せるよう、沈黙を用いて間をとりながら、同時にうなずきや目の表情などによって非言語的な共感性を表しながら聴く態度が必要となる。
2)ポイントを繰り返し、要約して確認をとる
 相手のキーワードを入れながら、カウンセラー自身の言葉でそれを表現して相手に返し、その反応を見て確認することが大切である。相手の気持ちに合うようにテーラーリングして繰り返す内容を修正していく。
3)各ポイントの背後にある感情を明確化する
 要約されたポイントそれぞれの背後にある思い、気持ち、さらにはその気持ちの背後の感情にまでできるだけ還元して明らかにしていく。
4)優先順位の高い感情とクライエント自身の自己イメージとの結び付き
 優先順位の高い感情から共感的に繰り返し、隠れた気持ちや感情が本人自らの心の中にふーっと浮かんでくるように支援する。
5)矛盾する2つの感情群を見出し対決する
 頭で理解していても、生き方を変えられず悩んでいるということは、これまでの自分を守り維持したいという気持ち(自己防衛心)と、今までの生き方を変えて自己成長したいという気持ち(自己成長心)が対立し、葛藤状態にある。
 矛盾する感情こそが問題解決のための行動を妨げているものである。隠れた矛盾する本当の感情や意思に気づくことができ、現在の問題に根ざす本当の問題が何かを自覚することができる。本人に必要な行動も自己決断できるようになり、自分への信頼も回復、強化されるようになる。
 カウンセラーは相手の自己カウンセリングをサポートしているだけだから、本人が気づこうと積極的になるまで待つことが大切である。

6.ヘルスカウンセリング法を学ぶステップ
 ブロッキングを避け、ポイントを探し、フォローを続ける傾聴と共感の姿勢
ステップ1 (開いた質問・閉じた質問、沈黙、相づち、促し)
      相手が安心し、話す意欲が出てくる沈黙や相づちや促しができる
ステップ2 (事柄の明確化、共感的繰り返し)
      ブロッキングを自覚的に避けて相手の話をフォローし続けることができ、
      話の内容の繰り返しや要約ができる
ステップ3 (感情の明確化、感情の意味の明確化、共感的要約)
      話の背後にある気持ちや感情やその意味を意識的に明確化でき、
      話のポイントを共感的に要約できる
ステップ4 (自己イメージ連想、逆流説明、共感的励まし)
      話の背後にある隠れた感情を気づかせる支援ができる。
      また、自己防衛心と自己成長心や言語的表現と非言語的表現
      の矛盾の気づきを支援できる。
ステップ5 (心傷風景連想、対決、解釈)
      矛盾に効果的に対決したり、
      本人が今後どうすればよいかが見いだせる支援をすることができる。

7.基本技法
1)閉じた質問
 長所
  ・答えやすい
  ・考えなくてすむ
 短所
  ・感情がこもってこない
  ・話したいことも話せない
  ・深く入り込まない
  ・深く考えさせない
  ・本当は何が聞きたいのだろうかと思う
2)開いた質問
 長所
  ・何でも話せる
  ・話しやすい
  ・話を展開しやすい
  ・話の連続性がある
  ・会話のキャッチボールがしやすい
  ・考えることが必要になる
  ・話しているうちにあやふやなところが出てきて、そこから話が展開していく
  ・お互いの気持ちを理解しやすい
  ・自分の考えが明確になる
 短所
  ・漠然としていて答えづらい
  ・気になっていることを初対面の人には話しづらい
3)効果的な沈黙法
 人の話を聴くには、効果的な沈黙が欠かせない。沈黙は、安心して話すことができたり、話す意欲が出たり、気づきが起こるような効果を持つ。

4)ブロッキングを自覚し、避ける傾聴姿勢
 相手の話したいことを聴こうとすると、しばしば自分の頭や心の中にそれを邪魔するものが生じてくるため、相手のポイントを捉えられないことが多々起こる。自らの関心、追体験、思いこみ、感情、意見、解釈、転移(同じ気持ちになってしまうこと)、心を読むなどが生じても、それを意識的に脇に置くことが大切である。
5)話のポイント探しをする観察姿勢
 相手の強い「感情」を探すための作業を行うことが重要である。相手の強い「感情」が、こちらの印象に残ったところにあるとは言えない。「感情」でないところは意識的に頭の中から消しながら、絶えず「感情の強いところはどこか」を探すことが必要である。キーワード、キーメッセージに注目して感情のあるところをつかみ取ることが大切である。
キーワード
①感情用語(つらい、悲しい)
②気持ち用語(生きている気がしない)
③せりふ(おまえが男ならな)
④独特の言い回し(自立心の微塵もないなど)
キーメッセージ
①眼と顔や声の表情の変化
②ジェスチャー
③身体姿勢の変化
④心のジーンとしたところ

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