のぼるくんの世界

のぼる君の歯科知識

言語化の魔力

2023年02月14日(火)


言葉にすれば「悩み」は消える
樺沢紫苑 著
幻冬舎
2022年11月10日発行
1600円
 究極の「悩み」解消本、精神科医としての30年の経験とYouTubeで4000超の悩み相談に答えた実績の集大成。
 精神医学の世界では、科学的根拠に基づいて医療を行う「エビデンス・ベイスト・メデイスン」に対して、患者の言葉、物語にもっと耳を傾けようという「ナラテイブ・ベイスト・メデイスン」が、昨今、注目を集めている。今の時代は、「エビデンス」よりも「ナラティブ(語り)」のほうが、人の心に響く。
 本当に苦しい人は、ただひたすら「くるしい」「つらい」のであって、「どこ」「なぜ」かを説明(言語化)することができない。
 言語化で悩みが「見える化」できる。言葉にするだけで、深く沈んでいる「無意識」が「意識」に変わる。意識できるところに置くことができれば、客観的、具体的に捉えられ、取り扱いが可能になる。自己分析することができるようになり、自分で解決法を見出せる。
 悩みは解決ではなく、解消。「トラブルや問題=悩み」ではないことと、悩みを解消するのに、原因(トラブルや問題)を取り除く必要はないことを認識することが重要。
 「様子を見ましょう」は、自分の見立てに自信がないと言えないセリフ。
 問い合わせフォームからの質問(今にフォーカス)
kojima-dental-office.net/20230205-6857
A.悩んでいる人
 私のツイッターで調査すると、4人に3人が悩んでいる。面白いことに「悩みがない人」と「悩みを解決できる人」の割合は、ほぼ同じ。「悩みがない」と回答した人は、「最初から悩みが全くない人」というよりは、「悩みを抱えていても自分で解決できる人」と言い替えられる。つまり、悩みをなかなか解決できない人が「悩んでいる人」となる。
 a.3つの特徴、共通点がある
  1.ネガティブ感情「つらい、苦しい」
 悩んでいる人は、「つらい、苦しい」というネガティブな感情に支配されている点で共通している。つらく苦しくなければ、悩みではない。
 重要なことは、「トラブルや問題=悩み」ではないことと、悩みを解消するのに、原因(トラブルや問題)を取り除く必要はないこと。笑顔で「トラブっちゃってさあ」と言えるようになれば、つまり、ネガティブな感情を取り除くことができれば、悩みの9割は解消されたも同じ。
  2.対処法が分からない「どうしよう」
 先が見えないことが不安の原因。「悩み」を抱えている人は、どうしていいか分からないから不安になり、パニックに陥る。現実世界は、何一つ変化していなくても、対処法やTO DOが分かれば安心する。「対処法」が分かるだけで、希望が見え、悩みの9割は解消したようなもの。「視座転換」「言語化」「行動化」という3パターンの対処法を持っていれば、臨機応変に使い分けることができる。
  ①「対処法の検索」で悩みの9割は軽くなる
 検索が得意な人は、「悩み」があっても、瞬間的に「対処法」を検索できる。6割の人は一瞬で対処法を知って前進するが、4割の人がうまく検索できずに、あるいは検索すらしないで、同じことを何週間も、何ヶ月も悩み続ける。こんなふうに二極化している。
 悩みが深い人、不安が強い人ほど、「検索すれば対処法が分かる」という、当たり前の事実すら忘れてしまう。
  検索で不安を集めるのはやめる。ネット上には、ハッピーな情報よりも、ネガティブな情報、不安をあおるニュースの方が圧倒的に多い。「不正確な情報」「誤解を招く情報」も氾濫している。
 人はネガティブ情報に多く集まる「ネガティブ本能」(認知バイアス)がある。情報はニュートラルに収集すべき。不安な人は、「安心をもたらす情報」だけを集めるべき。
  ②「スルー力」で悩みは消える
  ほとんどの人は、攻撃を受けた時に、スルーできない。さらに、ストレスを受けて弱っている自分に自分で鞭を打つ。「自分はダメなんだ」という自責の言葉は、「自分への攻撃」。
 一番いいのは、ダメージを受けないこと。必要なのは、「スルー力」。ボクシングの強い選手は、「スウェー」上手で、相手のパンチをもらわない。どんなに強烈なパンチでも、当たらなければダメージはゼロ。スウェーとは、上体を前後左右に揺らんことで、相手のパンチをかわす防御技術。
 最近の心理学、精神医学の領域では、我慢強さのイメージがある「ストレス耐性」を高めるのではなく、「レジリエンス」を高めようと言われている。ストレスを我慢してはいけない。我慢する必要など、1%もない。レジリエンスは、「心のしなやかさ」「心のバネ」「回復力」と訳される。嫌なことがあっても凹むことがあっても、そこから、バネのように、速やかに元の状態に戻ればいい。
  【スルー力を高める魔法の言葉】スルー力を高めたい人にお勧め。魔法の言葉が3つ。
   ・一瞬でスルーする言葉「へー!」
     感情を込めずに、無機的に「へー!」と発音する。
   ・あらゆる攻撃をスルーする言葉「そんな人もいる」
   ・上司、先輩の攻撃をスルーする言葉「ありがとうございます」
     「へー!」は上司や目上の人には使えない。
  ③「悩みの再設定」で悩みは消える
 コントロールできないことで悩んでもしょうがない。
 「悩みの再設定」をしてみよう。「どうにもならない」「どうしようもない」と思えるコントロール不能の悩みを、「悩みの設定」を変えるだけで、「コントロール可能」な「なんとかできる」悩みへと変換できる。これが「悩みの再設定」。
 人生がうまくいかない場合、その理由を「コンプレックス」のせいにしたがるのが、人間の無意識の心理。心理学的には、「自己正当化」と言う。悩みを再設定することで、コンプレックス(劣等感)という呪縛から解放される。
 3つの質問を自分に問うと、「自分の悩み」が自分にとって「最も重要な悩み」「本質的な悩み」かどうかに気づく。深刻な悩みであれば、第一にお願いする。
  【悩みを再設定する3つの質問】
    ・本当に困っていることは何ですか?
 自分と向き合って「本当に困っていること」「本当に改善したいこと」を発見しよう。
    ・その悩みが解消すると、あなたは満足しますか?
 「コンプレックス」があなたの真の悩みであれば、それが解消すれば満足する。満足できなければ、「悩みの設定」が間違っている。
    ・その悩みが解消すると、幸せになれますか?
 不安に思っている地震が起きなければ、「幸せな人生だった」と思うか。悩みは、「地震が怖い」ではなく、「健康や安全が失われることが怖い」。いつ起きるか分からない地震への恐怖に時間を費やすのではなく、健康増進活動に時間をかける。
  3.停滞、思考停止 「どうしようもない」
人は、閉塞感や絶望感を憶えた時、不安が引き起こした「行動停止」や「思考停止」、いわゆる「頭が真っ白になる」という状態になる。これは、不安によって脳内物質ノルアドレナリンが過剰分泌されることが原因。生物学的、脳科学的な仕組みによるものだから、性格や能力とは無関係。自分を責める必要はない。逆をいえば、この「停滞」を少しでも改善できれば、途端に閉塞感や絶望感は消えていく。「行動できる」ようになり、「頭の回転」も良くなり、良いアイディアや解決法が浮かび、「悩み」「トラブル」「困った現実」が一気に改善に向かう。「停滞」から「一歩踏み出す」だけで、悩みの9割は解消したようなもの。
 b.悩みは解決するな
  1.「悩みの解決」ではなく、「悩みの解消」
  多くの人は、悩みに直面した場合、根本的な解決を求めて原因を取り除こうとする。一気に悩みをなくしてしまおうと考える。先ず、これが間違い。目標が高すぎる。一気に0にする「解決」よりも、「できること」を積み上げて、少しずつ「解消」するなら、誰にでもできる。ネガティブ感情がドンドン消えていき、状況はドンドン改善する。
  2.悩みの原因を解決する必要はない
 原因を保留したまま、やれることをやれる範囲で、1つずつ片づけることが重要。原因を改善しなくても良い、と分かるだけで、気分はものすごく楽になる。
B.悩みとは
 a.悩みの本質は、「停滞」
 私の解釈では、悩みとは、「困難で苦しい問題に直面し、『どうしよう』『どうしたらいいんだ』と前に進めず停滞し、足踏みしている状態」であり、その本質は、「前に進めない」「停滞」「足踏み」が「悩みの本質」と考える。困難な状況においても、少しでも前進しているならば、状況は改善し、悩みは徐々に軽くなっていく。
 b.「悩み」の3つのメリット
 「悩み=悪」の認識を改める。
  ①悩みは「人生のスパイス」
 人生を面白く、豊かにするための、必要不可欠な味付け。
  ②悩みは「心の筋力トレーニング」
 「楽」なことだけしていても、自己成長はない。そう考えれば、「つらい」「苦しい」は人生に絶対必要な経験。「悩み」は心の筋トレになり、それをしないと、ガラスのメンタルになる。だから逃げない。悩みを乗り越えることができた時、必ず「自己成長」が起き、大きな自信になる。それによって、問題解決能力はアップし、その後に抱えた「悩み」は、もっと楽に乗り越えられる。社会人として仕事をしていくためには、ストレスやネガティブな感情を処理する「スルーする技術」と、立ち止まらずに前に進む、最低限のメンタルの強さ「レジリエンス(心のしなやかさ)」を体得しなければならない。
  ③悩みは「成長の道しるべ」
 「悩み」は、あなたの弱点や改善点を教えてくれる。「悩みがある」「自分が悩みを抱えること」は、大きく成長できる絶好のチャンス。悩みを抱えていても、非観し、落ち込む必要はない。
 c.悩みを3つの軸で多角的に分析
 「コントロール軸」「時間軸」「自分軸」という3つの軸を使って、悩みを簡単に自己分析する。
  1.コントロール軸  「コントロール感」で悩みは消える
 「どうにもならない」「自分でコントロールできないこと」が、最大のストレス。
 悩みの根本原因を取り除かなくても、コントロール感があれば、「なんとかなる」という感覚が湧き、実際に行動に移す精神的な余裕も生まれる。「無理」と思えば、死にたくなる。「できる」と思えば、楽になる。
 ブラック企業に勤めて3ヶ月で「うつ」になる人がいる。3年以上働いているのに平然としている人もいる。違いは、「コントロール感」の有無。「うつ」になった人は、忙しいことがストレスになったわけではない。やりたくないことをやらされている状態がストレス。
  ①コントロール率を数字で把握する
 可能か、不可能かの二者択一で考えると、ネガティブ思考の強い人は、「コントロール不能」に偏る。少しでも、「悩み」にハマリそうになったら、「この悩みのコントロール率は、何%」と自問自答する。0~100までの数値化。
 明日の遠足に雨が降るかと心配で眠られない。「コントロール率0%の悩み」なら、どうにもならない。悩むだけ無駄。「明日の遠足、途中で雨が降ってきたらどうしよう」と悩みを再設定すれば、対処法が浮かび、対処可能なコントロール率100%。
  ②コントロール感を取り戻す3つの言葉
 「なんとかなるさ」「できる」「やれることを、やれる範囲でやっていく」を、意識的につぶやくだけで、悩みを減らしていくことができる。逆に、コントロール感を失う、言ってはいけない言葉は、「無理」「もうダメだ」「あーどうしよう」。
   ・「なんとかなるさ」「なんくるないさ」
 非常に楽観的な言葉。不安を減少させ、安心に繋がり、非常に高い集中力が発揮できる。逆に、悲観的な言葉は不安を増強させる。楽観的な人ほど、ストレスをやり過ごす心のバネ(心のしなやかさ)があり、「レジリエンス」が高い。
 脳科学的には必然のこと。人間は危険を察知すると、脳の「扁桃体」が興奮・警告し、不安が強まって、パニック寸前になる。その興奮を抑制する役目を果たしているのが、脳の「前頭前野」。前頭前野から扁桃体に流れる「なんとかなるさ」という言語は、脳科学的に見て、不安を鎮める効果がある。
  ・「できる」「できた」
 無理と思っていても、「できる」と声を出して言う。「できた」時のイメージする。ワクワクする気分になったら、ドーパミンが分泌されている。ドーパミンは「目標設定」した時に分泌される脳内物質で、注意力、集中力、記憶力をアップし、仕事の効率を飛躍的に高めてくれる。「できる」よりも「できた」と過去形の方が、プラスの自己暗示の効果がある。
 ドーパミン
kojima-dental-office.net/blog/20220201-15327
 ドーパミンが快楽を与える報酬物質ではなく、何に集中すべきかを伝える存在。
  ・「やれることを、やれる範囲でやっていく」
 達成できそうもない「高い目標」は、百害あって一利なし。「やれないことを無理してやる」を続けるとメンタルが病むか、スポーツなどでは怪我をしたり、身体を壊すだけ。
  2.時間軸 「今」にフォーカスすると悩みは消える
 過去を考えると後悔し、未来を考えると不安になる。「今」にチューニングすれば、「安心」が得られる。考えるべきは、「今、できることは何か」。
 「苦痛の再生」で「悩み」を作り出したり、「小さな苦痛・不安」を何度も思い出すことで増幅させる。
  ①「その悩みは、いつの悩み」と自問自答する
 「以前」や「昔」など漠然としていると分析しにくくなるが、「12年前」「7日前」「8時間前」と具体的に書くと、コントロール感が変わる。言語化の魔力。未来についての不安も同様。
  ②過去を振り切る究極の言葉「それはそれとして」
 どうしても過去の嫌な体験が思い出される時に、過去を振り切り、「今」に切り替える言葉。「日本最大の仏教研究家」と呼ばれる鈴木大拙がよく用いた言葉。彼の出身地である金沢にある「鈴木大拙館」に「それはそれとして」の掛け軸が飾られている。
 鈴木大拙館
kojima-dental-office.net/blog/20130922-5018#more-5018
 「それはそれとして」は、問題の次元を切り替える言葉。そして、それまでの問題、相手の考え方や感情を、「否定」も「肯定」もしていないという点が重要。相手を受容しながら、話しをより高次元へ引き上げる、非常に高度な心理テクニック。「あなたの悩みは分かりました。それはそれとして、Bという考えもある」。逆接の接続詞「しかし」を使うと、相手の悩みや感情を否定している印象を与え、言われた方は、自己否定されたような嫌な気分となり、アドバイスを素直に受け入れられなくなる。
 ネガティブな過去の記憶が蘇った時、脳は、「過去の出来事」「過去の体験」に執着している。「過去」にフォーカスしている脳の注意を、「今」「現在」に持ってくる。その後に、「今出来ることは?」と続けて言ってみる。
  3.自分軸 自分が変われば悩みは消える
 悩みの中で最も多いのが、過去についての悩みと他人との人間関係の悩み。世の中の4割の人が、他人を変えたいと思っている。「コントロール不能」である「他人を変えよう」と無駄な努力をして、エネルギーを消耗している。「相手を変える」のではなく、「自分が変わる」。
  ①悩みの「自分率」を変える
 「自分率」とは、自分でコントロールできる割合。自分の力で解決できるのか、相手の努力、協力が必要なのか、それとも自分の力では全く手に負えないのか?
 他人の性格を変えるのは極めて困難なので、「悩みの設定」を変えてみる。自分率を高めるために、自分ができることは?自分率が0%だとしたら、諦めるしかない。
  ②「人間は変えられないが、人間関係は変えられる」
 人間関係とはコミュニケーション、キャッチボールのようなもの。相手のことが好きだろうが嫌いだろうが、キャッチボールを続けていくと、人間関係は改善していく。
C.悩みを解消する3つの方法
 悩みは「解決」するな。心の中のストレス、モヤモヤ、不安を取り除いて「解消」する。何か新しい行動を始めるのは大変。しかし、「考え方」を切り替えるのは、それほど難しいことではない。具体的な方法には「視座転換」「言語化」「行動化」の3つがある。
  a.視座転換
 悩んで凝り固まってしまった見方を変えて、考え方を切り替えること
 悩んでいる人は、常に近視眼的になりがち。目前の「悩み」しか見えなくなってしまう。情報不足は不安を引き起こし、不安はさらに「視野狭窄」を招く。自分で意識して、視座を変えることが重要。
 【「心理的視野狭窄」という見えざる敵】
 人間は追いつめられると、何か1つの考えにとらわれてしまい、周囲の事柄に考えが及ばなくなってしまう。これを「心理的視野狭窄」と言う。周りのことが目に入らず、全てのことをネガティブに捉えてしまう。全ての人間が陥る心理的な癖。
 深い悩みを持つ人は共通して、実際には、いつでも相談にのってくれる人が、周りにたくさんいるにもかかわらず、「いない」と思ってしまう。これは、明らかな「認知バイアス」。「自分の相談を聞いてくれる人など一人もいない」と断言してしまう人は、メンタル的に相当追いつめられているか、脳疲労を超えて病気の状態に陥っている可能性もある。「うつ状態」になると、「考えがネガティブになる」「人に会いたくない」といった症状が出てくる。人との繋がりが減って、「孤独」になると、「心の扉」は閉じてしまう。
  1.見方を変えれば楽になる(意識すべき3種類の視座)
   ①ニュートラル(中立)で見る
 「ポジティブ心理学」で言うところの「ポジティブ」とほぼ同じ。日本語のポジティブの歪んだイメージに引っ張られないよう、あえて「ポジティブ」は使わずに、「ニュートラル」とした。
 「ポジティブ心理学」の立場から見た真の「ポジティブ思考」は、現状をしっかりと観察して、肯定的に捉えるスタンス。世間一般で言われる「ポジティブ思考」は、根拠のない過剰な「楽天主義」で、一か八かの博徒と同じ。
 ニュートラルに物事を見るためには、事実と感情を分けて考えることが重要。事実とは、誰が見ても同じもの。誰も異議を唱えない。しかし、「思考の偏り」や「思いこみ」によって、合理的でない判断をしてしまう「認知バイアス」が、先入観が判断と思考を歪める。
 ニュートラルな考え方ができる人は、苦境に陥っても一喜一憂しないので、ストレスを受けづらい。レジリエンスも高く、健康で長生きすることが、科学的なデーターで示されている。
  【ニュートラルとは】
 ・感情に振り回されて一喜一憂しない
 ・1つの情報に踊らされず、データを集め、先入観や偏見を取り除く
 ・部分ではなく、全体を見て判断していく
 ・中立的に判断・行動する
 ・すぐに諦めずに、冷静に観察しながら、ねばり強く続けていく
  ②ロングショットで見る
 全体を俯瞰し、見通して判断すれば、より正しい判断ができるし、絶好のチャンスを見逃さない。これが、「離れて見る」「ロングショットで見る」ということ。
 【とりあえず動きながら考える】
 東京の愛宕神社(港区)に「出世の階段」がある。多くの人は、一番上の86段目を見上げて、「自分には無理だ」と思う。「悩みの解消」も同じ。一番下から、いきなりゴールを見上げるので、難易度マックスとなる。とりあえず10段だけ上ってみる。振り返ってみると、景色が変わる。これが「視座を高める」。上りながら考える。行動、アクションしながら悩めばいい。
 愛宕神社
kojima-dental-office.net/blog/20171117-8182#more-8182
  ③極端な考え方を手放す
 「0/100思考」は人を不幸にする。中間がない、極端な考え方は、メンタル疾患になりやすい人の特徴でもある。「二者択一」で物事を考えてしまうと、選択肢が「極端な2つ」しかないから、結果として「コントロールできない感」が強まり、ストレスを多く抱えやすい。「0/100」から脱却すると選択肢が増え、思考が柔軟になり、様々なアイディアや対処法が浮かぶ。
 人間は、ポジティブよりも、ネガティブに引っ張られやすい傾向がある。「ネガティブで考えてしまう」のは、性格ではなく、脳の仕組み。「脳のプログラム」だから、「0/100思考をやめよう」「ネガティブ思考をやめよう」といってもなかなかやめられない。そこで、「認知(ネガティブ)バイアス」を正して「普通」を意識する。「三択で考える」「選択肢に『普通』をいれる」を意識しよう。そうすると、誰でも実践できるようになる。
 日本人の多くは、平均から外れることを嫌う。「普通」や「人並み」が安心で心地良い。みんな同じ劣等意識を抱えて悩んでいる。自分は「普通」であり、「多数派」だと知ることが大切。
  2.自分だけで悩まない(他人の視座で見る)
 目的を実現させるために必要なら、他人の力を借りればいい。悩みを解消したい人には、読書を勧めている。読む本の数を増やしていけば、考え方の基準や仕事を進める上での指針が次第にできていく。
  ①一人で1週間悩んだら、それ以上は無駄(「相談しよう」「検索しよう」)
 自分の視座(経験や体験、アイデイア)だけで考えようとすると、どうしても「答え」や「選択肢」の範囲が狭まってしまう。しかし、何日も悩み続けていた深刻な問題や悩みも、自分よりも多くの経験を積んでいる上司や先輩、専門家に相談すれば、一瞬で解決する。あるいは、対処法が示されることは多い。言い替えれば、「相談しよう」「検索しよう」ということ。実際には、できない人が多い。
  ②他人になりきる
 人前で話して緊張する人は、自分のことを観察するから、「自分が緊張している」という事実に気づく。自分ではなく、目の前の一人ひとりを観察すれば、心持ちが全く変わる。視座の転換、「他人になりきる」テクニック。
  3.未来の視座を持つ(時間を味方に付ける)
 自分にはできないと最初から諦めない。「今の自分には無理」でいい。でも、未来の視座を持って、半年後、1年後の自分を信じてみる。そこから逆算して、今すべきこと(TO DO)を明確にする。
  ①様子を見ながら待つ
 抗うつ薬の治療効果は、60~70%。黙って3ヶ月通院すれば、3人に2人は緩解する。初診時にそう伝えてあるが、「待てない人」が半数いて、1ヶ月で通院しなくなる。「待つ」ことができず、ジタバタすることで、「悲しみ」「怒り」「憤り」を何度も繰り返し、記憶を強化する。状況を悪化させ、1年も2年も引きずることになる。
  ②「様子を見る」のは良いこと
 「様子を見ましょう」というのは、「(薬を処方しなくても自然に治るはずなので)様子を見ましょう」という意味で、自分の見立てに自信がないと言えないセリフ。つまり、しっかり様子を見られる医者は「名医」の証。
 b.言語化
  1.言葉にすれば悩みは消える(「話せない」ことが最大のストレス)
 心の中のモヤモヤを言葉にできると、心がスッキリする。逆に、人に「話せない」ことは大きなストレスとなる。言葉にするだけで、ストレスは抜けていく。
 「言語化」は、表現に「化」という言葉が入っているように、ただ、何となく「話す」「書く」のではなく、「言葉にするプロセス」が重要。自分の頭の中にある「悩み」「苦しみ」「モヤモヤ」を言葉にして吐き出していく。それによって、「悩みが解消」し、「癒し」が実現する。「言葉にする」ことで、悩みの9割は解消する。
  ①言語化で悩みが「見える化」できる(「無意識」が「意識」に変わる)
 心理カウンセリングの領域では、「言語化」という言葉がよく使われる。
 幼少期の「トラウマ(心的外傷)」となる出来事を、自分で言葉にして説明できるようになると、その瞬間にトラウマは解消される。心理的な抑圧が強いと、「つらい体験」を言葉にすることができない。逆に「言葉にできた」ということは、そのしがらみから抜けた、ということを意味する。心理カウンセリングの、1つの目標ポイントが「言語化」。言葉にするだけで、「無意識」が「意識」に変わる。
 思考の95%は、無意識で処理される。その無意識下にあるネガティブな「思考」や「感情」を自分で改善、解消したくても、意識できないままでは、どうすることもできない。「言語化」とは、海の底深くに沈んでいるものを海面まで引き揚げる、意識できるところに置くこと。客観的、具体的に捉えられ、取り扱いが可能になる。言語化によって、「漠然とした悩み」を自己分析することができるようになり、自分で解決法を見出す人も多い。
   ②書いて話せば脳が軽くなる(頭で悩むな! 手で悩め!)
 悩んでいる人の頭の中は混乱し、堂々巡りを起こしている。それで前に進めない状態が「悩み」。脳の作業領域が極めて狭いことが原因で、脳の中で同時に処理できる情報は3つまでと言われている。1つを処理したら、脳の空きスペースができて、次の「新しい(考え)」が処理できるようになる。脳の中にワーキングメモリーが3つしかないから、たった1つ増えただけで、一気に記憶できなくなってしまう。つまり、脳の容量がパンクしてしまう。
 解決法が「言語化」。「考えごと」をノートに書きながら進めてみると、状況を冷静に分析できるし、対処法にも自分で気づくことができる。3つの案件を抱えれば、誰でも余裕を失いパニックになる。「悩み」「壁」「ハードル」を自力で突破できないのは、能力が低い性ではなく、「脳の仕組み」がそうさせている。「書く」「話す」という「言語化」作業を進めることで、脳の負担が軽くなる。その分、じっくりと冷静に考えることができる。
  【「外化」で気分はスッキリ】
 メタ認知科学において「外化」とは、頭の中にある考えを外に出すこと。それをすることで、客観視できる、他人と共有できる、保存可能になる(忘れない)など、多くのメリットがある。自分の「脳」の使用可能な領域も増やせる。外化すればするほど、脳は軽くなり、気分はスッキリする。一般的に、容量ギリギリで脳を酷使している人が多い。
  【言語化とアウトプットの相違点】
 アウトプットとは、「話す」「書く」「行動する」の3つのこと。言語化とは、自分の思っていること、考えていることを、「話す」「書く」ことを通して、言葉にして伝えること。つまり、アウトプットの1つの側面が「言語化」。「言語化」と「行動化」に分けることによって、「言語化」から「行動化」へのステップアップする重要性が明確になる。
  ③共感で心が軽くなる
 本当に苦しい人は、ただひたすら「くるしい」「つらい」のであって、「どこ」「なぜ」かを説明することができない。
言葉に出さない限りは、あなたが「その問題」で悩んでいることを誰も知り得ない。 不安だらけの状態で、それを主治医に話せないのであれば、決して病気が治ることはない。患者さんが、自分の症状を全く説明(言語化)できなければ、主治医は正しく診断して、最も効果のある薬を処方することは困難。言語化できないとは、「説明できない」ということ。「説明できない」と、大変もどかしく、ストレスを感じる。言語化できるほど、悩みの解消のヒントが沢山得られるので、改善も早い。精神科医は、シンプルな質問を投げかけて、具体的にどんな状態かを明らかにしていく。言語化(アウトプット)して、外化することで、その情報は、初めて他人と共有することができる。患者と医師の間で「共有」できれば、共感も生まれ、患者さんは「安心」する。
  2.言語化する勇気を持つ(相談できれば楽になる)
  ①「相談する勇気」「自己開示する勇気」を持とう
 「相談することが自己開示」だから、人に相談できない。ありのままの自分をさらけ出すことに「恐怖」を感じるのは、人の自然な心理。普段の自分は、ある意味「仮面をつけた自分」だから、多少批判されても我慢できる。しかし、「ありのままの自分」を否定されてしまうと、人は大きなショックを受ける。悩みを相談する際は、ある程度親密な人、信頼できる人を選ばなくてはならない。
 相手と親しくなりたいのなら、「嫌われる勇気」を持ってでも、自分から話しかけ、自分から心を開き、自分から相手を信頼する。コチラから心の扉を開いて、先に自己開示することで、相手も心を開いてくれる可能性が高い。相談して相手にスルーされたとしても、「悩み」や「トラブル」が悪化することはない。つまり失うものは何もない。
  【自己開示の返報性】
心理学の「自己開示の返報性」とは、相手が自己開示してくれた時に、自分も相応の自己開示をしたくなる心理のこと。自己開示のキャッチボールによって、互いの関係性が深まり、さらに深い開示ができるようになっていく。
  【自己開示は相手に喜ばれる
 「そんなことを打ち明けてくれるほど、私を大切な友達と思ってくれていたんだ」と感じるはず。
 上司と部下の関係性においても、ほとんどの上司は「仕事上の悩み」を打ち明けられ、相談されると「うれしい」と感じるはず。何の相談もなく、いきなり退職願を出されたりするのは、大きなショックであり、心が一番傷つく。深刻な問題を相談しているのに、「忙しいから、そんなことをいちいちいってくるな」と言う上司がいたら、それは最低の人間。上司として失格だから、落ち込む必要もないし、心が傷つく必要もない。別の人に相談すればいいだけ。
  ②ガスを抜くと楽になる
 日本人は、「他人に迷惑をかけず、自分一人で解決するのが美学」と考える。「解決できない(コントロール不能な)問題は、相談しても解決しない。だから意味がないので、相談しない」。
 「相談」という言葉をやめて「ガス抜き」という言葉を使う。「相談する」ことは、行動のハードルがものすごく高い。「ガス抜き」は、思っていることを、感じていることをそのまま話すだけ。
 【ガス抜きの特徴】
  ・解決しなくていい
 ・話すだけで9割解消
 問題の解決を目的とせず、だだ困っていること、悩んでいることを話すだけ。話を聞く側も、ただ「聞く」だけ。「助言」も「アドバイス」も要らない。アドバイスをするほど嫌がられる。
 「ガス抜き」の理論は、心理カウンセリングの理論と全く同じ。心理学では、「聞くだけでいい」を「傾聴」と言う。自らが「気付く」ことを重視する。「気付き」を促す。
 歯科衛生士のためのヘルスカウンセリング
kojima-dental-office.net/blog/20210911-14907#more-14907
  ・ガス抜きの「1回ルール」
  過去のネガティブな記憶を消したい、という悩みは非常に多い。対処法の1つが、「1回ルール」。ネガティブ体験は、1回だけ話して忘れる。繰り返し話したり、長時間話したりする人は、いつまでも引きずる。すぐ切り替えられる人と、いつまでも引きずる人の違いは「1回ルール」。
  ・過去を忘れる方法は「これにて一件落着」
 嫌な記憶を何度も人に話して忘れられなくなっている人には、その体験を「一件落着」させる。
 ロシアの心理学者であるブルーマ・ツァイガルニックは、ウェイターはコーヒーを提供するまでは、誰がどんなコーヒーを頼んだのかを覚えているのに、提供した後は、直ぐに忘れてしまうことに気付いた。後に心理実験で検証し、心理法則を確認した。心理学で言う「ツァイガルニック効果」とは、「一件落着した出来事は忘れやすい。継続案件は忘れない」。目標が完了していないタスクは、完了したものよりもよく覚えている傾向がある。
 【逆効果のガス抜き】
  ・「悪口」
 ネガティブな体験は、ガス抜きによって「流す」べきであって、「強化」してはならない。アウトプットの重要な法則。「2週間以内に、同じ話を3回以上話すと、記憶に固定される」つまり、「忘れられなくなる」。
  ・「ネガティブ体験の反復」
 「苦しい体験」は、話せば話すほど、記憶が上書きされて記憶が強化され、「悩みの解消」とは真逆のことが起こる。
 診察場面でも、「つらい話」を何度も話そうとする患者さんには、「その話は先ほど伺いましたので、大丈夫です」「その話は、前回、とても詳しく教えてもらいました」と言って、ネガティブな記憶を強化しないように注意している。
  ・「自己卑下」
 多くの人が、自分の「無意識」に「ネガティブな自己卑下」「自分はダメだ」「自分にはできない」の言葉を大量に捨てている。自分で取り扱うことができる「意識」の部分には何の影響もなさそうだが、それらは、脳の「無意識」の領域に蓄積して、いつの間にか溢れるほどに溜まる。それをを口走ったとき、扁桃体は興奮して、最強の記憶増強物質であるノルアドレナリンが分泌され、記憶増強効果によって、脳にへばりつく。その結果として、「ネガティブ思考」ができあがり、自己肯定感も下がり、ダメージも作り出す。無意識は、「性格」「行動」「考え方」に影響を及ぼす。意識でコントロールできない思考や行動は、全て無意識の指令によるもの。
 自己卑下の言葉は絶対NG。言えば言うほど、「ストレス発散」「癒やし」とは逆効果になる。すべきことは、自分を卑下する言葉を言わないようにすること。ポジティブな言葉を増やせば、無意識に溜まった「ネガティブ思考」は次第に浄化される。楽しい気分になっている瞬間には、ドーパミンが分泌される。ドーパミンは楽しい記憶を増強して上書きしてくれる。
  ③「書く」だけで楽になる
 悩んでいる人の頭の中は、とにかくごちゃごちゃ。自分が何で悩んでいるのかも分からない。それをうまくまとめられない人が多く、「つらい、苦しい」としか言えない。
 悩みは書き出すだけで悩みは解消できる。言語化によるガス抜き効果と、悩みの客観視ができる。自分の悩みを簡潔明瞭にまとめることができたなら、それは「悩みを9割解消した」のも同じ。しかし、悩みを書き出すのは、自分の短所、欠点、思い出したくない苦い経験など、「自分のダメな部分」と向き合う必要があるから、精神的に非常にきつい。
 言語化によって、自分がどういう状況に置かれているかが見え、感情と事実が整理されるので、すっきりした気持ちになる。悩みが可視化されれば、自分で対処法に気付ける。それに対処できる。
 c.行動化
 座り続けていると、頭の活動が低下する。逆に、ただ立っているだけで脳は活性化し、運動すれば脳は激しく活性化する。座って考えていても、悩みは解消しない。
 インプット(検索する、調べる、本を読む)は重要だが、アウトプットや行動をしなければ、現実は変わらない。行動しないと悩みが増え、行動すれば悩みは消える。
 扁桃体警報の基準を適正化すべき。
 悩みを解消するためには「心と身体を整える」こと。睡眠、運動、朝散歩、そしてリラックス。何かに悩んでいる人が、先ず、すべきことはセロトニンが活性化する「朝散歩」。セロトニンは「太陽を浴びる」「リズム運動」「咀嚼」によって活性化する。
 1.「脳疲労を悪化させる」ことをやめること
 「スマホ」「夜更かし」「多量の飲酒」「悪口」「ネガティブ注目」
 ①脳疲労
 「悩み」によって「脳疲労」になる。
 脳疲労とは、「お疲れモード」、健康と病気の間の状態。疲れている人ほど、「自分は疲れていない」と言う確率が高い。脳疲労は自覚しづらい。
 深く悩んでいる人のほとんどに、考えを「切り替えられない」状態が起きている。脳科学的に言うと「前頭葉の疲労」。脳の部位では、「前頭前野」、脳内物質ならば「セロトニン」が主に担当。つまり、「考えや感情が切り替えられない」という人は、前頭前野が疲労し、セロトニンが減少している。これが「脳疲労」の状態。
 脳疲労の人は、前頭前野の活動が低下し、それからの指令で鎮静化する扁桃体が興奮し、暴走している。「危険センサー」である扁桃体が過敏になっている。ほんの小さな危険でも、扁桃体が直ぐに反応し、緊急警報が過剰に鳴り響く。脳の壊れたメカニズムにより、「不安」「心配」「恐怖」を自分でコントロールできなくなる。ワーキングメモリーが減り、視野狭窄も起こし、論理的な思考もできなくなる。対処法が分からず、「視座転換」「言語化」「行動化」ができなくなり、負のスパイラルに陥り、悩みは深刻化する。さらに、「うつ病」などのメンタル疾患になる。
 ②スマホ
 悩みの最大の原因の1つに、「スマホの使いすぎ」がある。人間の脳は、視覚情報の処理に、そのリソースの80~90%を使う。仕事の視覚情報処理で疲れた脳と眼を、休憩時間にさらにスマホで酷使する。
 寝る前2時間前のスマホは、絶対避けるべき。夜間にスマホを見ると、脳は、「朝になった」と勘違いする。睡眠物質メラトニンを速やかに抑制するので、眠気はなくなる。
 スマホ脳は、「不安脳」。不安脳に陥っている人には、「視座の転換」「言語化」も効果が見込めない。逆に、スマホを遠ざけるだけで、不安、心配、ネガティブ感情は減る。
 アンデシュ・ハンセ ン著「スマホ脳」
kojima-dental-office.net/blog/20220201-15327#more-15327
 ストレスがかかっている人ほど、ゲーム、ドラマに夢中になる。興奮や高揚を伴う楽しさがある。「嫌なこと」を考えずにすむ。「悩み」からの格好の逃避手段となる。
 疲れている脳に必要なのは、「興奮」よりも「リラックス」。
 ③禁酒、適量飲酒
 メンタル疾患で治療中の方には、「禁酒しないと病気は治らない」と説明している。お酒を飲む限り、睡眠は悪化するので、メンタル疾患は悪化する。ストレスから逃げるための飲酒はやめよう。
 ④ポジティブ注目
「ネガティブ注目」を手放す方法は、3行ポジティブ日記。
 2.目標を小さく分割する
 目標が大きい人は、なかなか行動できず、自己肯定感を下げる。やれることを目標にしている人は、実績を積み上げて、自信もついて、自己肯定感も高まる。「停滞・停止」から脱出できる。今やれないことは「保留」でいい。余裕ができたら考える、行動する。「あれもこれも」やろうとする人は、何一つ行動できず、いつまでも停滞したままになる。
 「行動できない」を「できる」に変えるために、大きな目標を小さく分割して行動しやすくする。自分ができることをやっていく。今やれることに集中する。行動を起こせば、不安は収まる。何もしなければ、不安・恐怖は強まる。これが、脳の仕組み。
 3.正しく読む、読解力アップ
 検索や読書は、悩みや不安の軽減、解消のために極めて有効な方法。問題解決の手段として、検索や読書を利用している人は7~8割もいる。にもかかわらず、その大部分が、悩みの解消に至っていない。「精読」しているのに、「正読」できていない。
 先入観を持って読書しても、自分の固定概念でしか理解できない。著者の意図とは真逆の理解をする。新しい学びが得られるはずもなく、何の自己成長もない。むしろマイナス。誤読のせいで、自分の「悩み」や「心配」を作り出している。
 正しく読んで、正しく理解するだけで、不安や心配は減り、対処法もわかり、悩みは一気に解消へと向かう。「健康な状態」の時に、読書を習慣にする。簡単に読解力を高める方法は、「本を読んだら感想を書く」こと。
 4.もっと、ボーッとしよう
 特に何の作業もしていない「ボーッとした状態」の時、脳内では「デフォルトモード・ネットワーク」(DMN)が活発に稼働する。DMNとは、「脳のスタンバイ状態」。
 脳は、無意識レベルで、様々な問題解決を行っている。実際、何も考えずにボーッとしていると、急にひらめくことがある。DMNは、悩みの自動解決装置。
 意識的に、積極的に「ボーッとする」時間を作り出す。
D.悩みが消える究極の方法
 a.あきらめる
 「あきらめる」は、元々は仏教用語で、「明らかに見る」から来ている。先入観や執着を取り除いて、見ること。「できること」「できないこと」を明らかに見る、見極める。つまり、「悟りの境地」。ネガティブな感情に区切りを付け、次に進むこと。決してネガティブな行動ではなく、むしろ非常に前向きな行動。「中断」「放棄」「投げ出す」こととは違う。「できないこと」に悩むのは、時間と精神エネルギーの無駄。それ以上のもがきや努力は「苦痛」しか生み出さない。
 b.やめる、手放す
 「やめる」のではなく、「撤退する」。再戦に備えて準備する。
 c.親切、感謝、他者貢献
 他人を顧みず、自分のことばかり考えていると、自分の欠点やうまくいっていない所ばかりが目に入る。「ネガティブ集中」は、悩みを発見する能力でもある。
 自分のことばかり考えずに、人に親切にする「他者貢献」の意識を持つことによって、「自分の中のネガティブへの注目」から「他人の中のポジティブへの注目」への視座転換となる。
 他者貢献の脳科学。他人に親切にするとオキシトシンが分泌される。親切にされた人にもオキシトシンが分泌される。人に親切にされると、「ありがとう」と言いたくなる。「ありがとう」と言うと、「多幸感」をもたらす「脳内麻薬」のエンドルフィンが分泌される。感謝された相手にもエンドルフィンが分泌され、多幸感に満たされる。親切と感謝の連鎖によって、オキシトシンとエンドルフィンの幸福物質の「幸せ連鎖」が起きる。

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