のぼるくんの世界

のぼる君の歯科知識

よくできたウソの本

2009年07月09日(木)


よくできたウソの本守 一雄著
KKベストセラーズ
1999年7月5日発行
524円

 一般には「ウソをつくことは悪いこと」と考えられています。しかし、ウソの本質や肯定的な見方も必要かもしれないと思います。ウソを見破る能力や見逃してあげる智恵についても学び、自分や周りの人の心理も理解したいです。
おもしろい本ですよ。ウソではありません。

1.この本で私が述べたいこと
①世の中にはウソが蔓延していること
②そうした世の中で生きていくためにはウソを見破る能力を身につける必要があること
③ウソを見破る能力を身につけるためには、ウソをつく教育も必要であること

2.ウソの定義
 ドイツの心理学者シュテルンによれば、ウソとは「だますことによって、ある目的を達成しようとする意識的な虚偽の発言」ということができます。
 さらに、ウソをつく人について、
①虚偽の意識
②故意にだまそうとする意図
③だます目的
の3つが、いずれもはっきりしていると説明しています。
 つまり、ウソつきとは、
①自分が話している内容は正しくないと自覚しながら、
②相手に本当のことだと思わせておいて、
③何かの目的を果たそうとしている人です。
そして、ウソだけを言っているのではウソにはなりません。先ず相手を信用させる必要がありますから、巧妙な詐欺師ほど正しいことをたくさん言います。落とし穴をつくって誰かをだまそうと思ったら、穴の上に枯れ葉を置くだけではダメで、辺り一面に枯れ葉を敷き詰める必要があります。

3.心理学から見た「ウソ」の正体
 アメリカの心理学者ギロビッチは著書「人間この信じやすきもの」のなかで人間の認知的機能がいかに不完全で間違いやすいかをまとめています。そして、私たちの頭の働きにはウソを信じやすい困った性質もあります。その上に、
複雑な世の中では物事の真偽判断が難しく、人は「少しぐらいウソが混じっていても、おもしろければいい」と考えがちなのですから、世の中には迷信・誤信・ウソ・まやかしがあふれてしまうことになります。

4.認知心理学
 認知心理学者は、人間の認知の仕組みを明らかにし、間違った判断をしないためのいろいろな対策について研究をして、その研究成果を、できるだけ多くの人たちに広めていきたいと考えています。
 たとえば、私たち人間は、肯定文の理解に比べて、否定文の理解が難しいということが知られています。「週末以外に禁酒することに反対だ」と言われたら、日曜日には酒を飲んでもいいのかどうか即座に判断ができません。私たちは、そもそもそうした否定情報を考慮することそのものを止めてしまいます。おもしろい部分は誇張し、おもしろくなく、分かりにくい部分は省略します。
 また、人間には、ランダムに起こっていることでも、何かの法則があるのではないでしょうか?と思ってしまう性質があり、わざわざ法則を探し出し、間違った解釈してしまいます。これを、統計学では「ランダムデータの誤解釈」といいます。

5.テレビCMの巧妙なウソ
 なぜ電力会社もテレビでCMを流すのか考えてみましょう。視聴者がもっと電気を使った方が儲かるはずですのに、なぜわざわざ「電気を使わないでください」などと宣伝するのでしょうか。それは、テレビは電力会社が困るようなニュースを流さないのです。つまり、「言わないウソ」をつくわけです。NHKの様な公共の機関であっても、都合の悪いことは放送しないのが普通です。テレビは積極的にウソをついていることにはならないのですが、都合の悪いことは放送しないことによつて「言わないウソ」をついている可能性があることを忘れてはいけません。情報を発信することの第一義的な目的は、情報発信者の利益のためであって、情報を受け取る個体の利益のためではありません。

6.セルフ・ハンディキャッピング
 隠れて勉強したのに「勉強していない」フリをしたり、前もって言い訳をして、自分をベストの状態でないようにアピールすることを、心理学用語では、「セルフ・ハンディキャッピング」といいます。しかし、韓国人の大学生は、日本やアメリカの学生とはまったく逆の反応をするそうです。テスト前に一生懸命に勉強していない時でも「頑張って勉強した」と言い張ります。勉強すべき立場にいるのに一生懸命やらない方が、かえってかっこが悪いです。

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