小島歯科医院 名誉院長ブログ

顎骨壊死の今~BRONJからARONJに~

2017年06月18日(日)


001 ■第1部
  ・骨代謝の基礎、骨代謝異常の疾患
  ・ビスホスホネート剤とデノスマブ治療中の顎骨壊死の違い
  ・医歯薬の連携
  講師 木藤 知佳志 氏(あすわクリニック院長・内科)
 ■第2部
  骨粗鬆症用薬剤の作用と治療戦略
  講師 中西 剛明 氏(菜の花薬局・薬剤師)

 参考に 抜歯後に骨が露出
kojima-dental-office.net/20090407-841#more-841
 18日(日)ホテル金沢にて講演会「顎骨壊死の今~BRONJからARONJに~」
ペリオドンタル・メディシン 2000年7月22日に骨粗鬆症と歯周病をテーマに講師として木藤先生としてお迎えしコーディネーターを務めたことを思い出す。福井県立中央病院で事前打ち合わせしたこと、ペリオドンタル メディシンの原著を必至に和訳し、論点整理したこと、講演録の原稿を何度も読み返したことがよみがえる。
 今回の講演で一番衝撃を受けたことは、自分たちが信じ切っていたポジションペーパーが論拠無く信用できないものもあるということだった。骨粗鬆症の原因、病態が明確ではないにもかかわらず、ビスホスホネート系薬剤による投薬がなされている。また、顎骨壊死に関しても不明なことが多く、学会の見解にとどまる。
 現役薬剤師による添付文書の読み方は鋭かった。脱帽したけれども、自分の理解力のなさに老いを感じた。そして、この提案だけは広めたい。骨粗鬆症の基本治療はカルシウムとビタミンDの十分な補充。ビスホスホネート系薬剤やRANKL阻害剤の使用をできるだけ遅らせる。

メモ
■第1部
 1)骨代謝とホルモン物質、ミネラル  骨吸収と骨形成のバランス
  ・GFR(糸球体濾過量)の低下
                                         ↓
                 リンの蓄積
                                         ↓
  副甲状腺ホルモン(PTH)上昇、ビタミンD低下、fibroblast growth factor(FGF)23
                                         ↓   (腫瘍性低P血性クル病の原因遺伝子)

                    低カルシウム血症、骨吸収亢進     (骨粗鬆症)
                                         ↓
     さらにGFR低下すると二次性副甲状腺機能亢進症

  ・副甲状腺ホルモン→骨吸収→血清中のカルシウム濃度上昇
             低カルシウム血症→副甲状腺ホルモン分泌促進
   カルシトニン(CT)→骨吸収減少   甲状腺ホルモン
      高カルシウム血症→CT分泌を誘導

  ・エストロゲンの低下→骨量減少

 2)骨粗鬆症治療薬剤と顎骨壊死
   ONJとBPの関係は殆ど分からない
ONJ        Osteonecrosis of the Jaw              顎骨壊死
BRONJ    BP-Related osteonecrosis of the Jow  ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死
ARONJ    Anti-resorptive agents-related ONJ          骨吸収抑制薬関連顎骨壊死

 ビスホスホネートは破骨細胞に直接作用して破骨細胞を阻害する薬
 デノスマブは破骨細胞の形成や活性化に必要なタンパク質である「RANKリガンド」
   を標的とした世界で初の抗体薬

 3)骨粗鬆症の考え方
    骨粗鬆症の原因、病態は不明
 4)病診連携
  ・注射剤は薬剤ノートに書いてないので医家に聞かないと分からない
  ・歯科と医科、そして薬剤師との連携が必要

■第2部
 1)考える上での登場人物
   • 骨芽細胞  出身は間葉系幹細胞  寿命は3ヶ月
   • 骨細胞   骨芽細胞が分化 カルシウムの家に潜りこむ
   • RANKL   骨芽細胞の表面にいる 彼がいないと仕事が進まない
                     破骨細胞の分化を促す必須のタンパク質
   • 破骨細胞(多核細胞) 出身は造血幹細胞 分化前は肝臓と脾臓に待機
               寿命は2週間  
               表面にRANKLやエストロゲンの受容体
  *骨芽細胞と破骨細胞は全く違う発生

 2)ビスホスホネート系薬剤の歴史
  ・エチドロン酸(ダイドロネル)
    適応症は異所性骨化の抑制
    投与期間は3ヶ月を超えないこと
    ピロリン酸と非常に似た化学構造
      P-O-P → P-C-P
        人体にはなく分解できない
  ・ビスホスホネートの側鎖を開発して多種の薬が登場
  ・腸管からの吸収が悪い

 3)RANKL阻害剤 デノスマブ(商品名プラリア)
    ・6ヶ月に1回皮下注射
    ・十分なビタミンDとカルシウムを投与していること
  ・骨細胞の機能不全が原因かもしれない

 4)骨粗鬆症の基本治療
  *ビスホスホネート系薬剤やRANKL阻害剤の使用をできるだけ遅らせる
    •カルシウムとビタミンDの十分な補充
    •骨折リスクの非常に高い場合はテリパラチド
         (副甲状腺ホルモンPTHアナログ製剤)
    •SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
    •ビスホスホネート系薬剤
    •RANKL阻害剤

 5)番外編 抗生物質は何を選ぶ
      ・ペニシリン系薬剤は嫌気性菌に感受性がある
     ただし口腔内雑菌に対しては β ラクタマーゼ阻害剤が必要
  アモキシシリン+クラブラン酸(β-ラクタマーゼ阻害薬)(商品名:オーグメンチン)
  アンピシリン+スルバクタム(β-ラクタマーゼ阻害薬)(商品名:ユナシン)
    •経口セフェム系抗生物質は連鎖球菌属には強力に作用するが、
      緑膿菌、嫌気性菌、ブドウ球菌には弱いもしくは無効
    ※βラクタマーゼ阻害剤の配合されたペニシリン系薬剤は、
      歯科領域の適応症が認められていない(現状との不一致)

保険収載への提案     歯科領域における抗菌剤の適正使用に向けて

参考に
 抗生剤の選択・使用法を学ぶ
kojima-dental-office.net/20090725-2119#more-2119

と き  2017年6月18日(日)午前9時半~正午
ところ  ホテル金沢 4階 エメラルド
対 象  会員医師、会員歯科医師(定員50人、参加費無料)
申込先  石川県保険医協会
     電話:076-222-5373 FAX:076-231-5156
     Eメール:ishikawa-hok@doc-net.or.jp
参加申込書 チラシ顎骨壊死の今 
     FAXにて送信
主催   石川県保険医協会

<ご案内>
 かつては、顎骨壊死と言えばBP (Bisphosphonate)製剤だけが注目され、呼称もBRONJでよかった。しかし、この数年、がんの骨転移や骨粗鬆症に対する新たな治療薬として登場したデノスマブ投与患者にも顎骨壊死の発生が確認されたことを受け、2016年、専門学会はポジションペーパーを改定することとなった。BP製剤とデノスマブでは作用機序も異なることが知られているのに、なぜ同じ頻度で顎骨壊死が発生するのか。本講演会は、骨代謝の基礎及び薬剤の特性などを学ぶことで顎骨壊死のさらなる理解を深めることを目的に企画した。多数の会員のご参加を期待している。
(附)今回、講師をお願いした木藤知佳志先生は、2000年夏、当協会主催「歯周病と全身疾患研究会」(6回シリーズ)において、骨粗鬆症を担当されました。ご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。

■木藤知佳志氏の講演内容
1.正常の骨代謝
骨は生きているの? 死んでいるの?
どうしてわかるの?
2.骨代謝異常に伴う疾患
閉経後、老化、腎不全(透析者)についてひとこと
3.ビスホスホネート剤並びにデノスマブ治療中の顎骨壊死
起きる原因はなんですか?
二つの薬で差があるの?
どうしたらいいの?
4.歯科(口腔外科)、医科、薬剤師の関係
情報のやりとりとコンセンサスの形成

<プロフィール>
昭和47年 金沢大学卒業、同大学第二内科入局
第三研究室で腎臓、特にCa、骨代謝研究に従事。
昭和53年 福井県立病院に就職、副医長
昭和60年 同上 主任医長
平成22年 大滝外科胃腸科 副院長
平成28年 あすわクリニック 院長

■中西剛明氏の講演内容
 近年、新たな骨粗鬆症用薬剤が次々に発売され、薬物治療の選択肢は増えました。特筆すべきはアレンドロン酸をはじめとするビスホスホネート系薬剤で、腰椎圧迫骨折を減らすだけでなく、大腿骨骨頭部の骨折も減らすことができるため、治療では欠かせない薬剤です。一方で、作用点であるはずの骨に対する害について問題点が提起され、特に顎骨壊死が薬剤に起因するものなのか議論が巻き起こりました。ビスホスホネート系薬剤を中心に骨粗鬆症用薬剤の作用を再確認し、適切な薬物治療を考えていきたいと思います。

<プロフィール>
1993年、金沢大学薬学部を卒業後、薬剤師として城北病院、菜の花薬局、福井みどり薬局、寺井病院、二度目の城北病院の勤務を経て2008年8月から、また菜の花薬局で勤務、現在に至る。菜の花薬局が加盟する全日本民医連の医薬品評価委員として、臨床試験の審査報告書をベースとした新薬の評価や、加盟施設から寄せられた副作用報告を通して、有効でより安全な薬物療法を提起する取り組みをしている。日本静脈経腸栄養学会栄養専門療法士の認定も受けている。

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