こんな重症患者が歩いてくる その②
2012年05月17日(木)
講師 心臓血管センター金沢循環器病院 名村正伸先生
参考として
こんな重症患者が歩いてくる その①
kojima-dental-office.net/20111117-2165
名村正伸先生の前回講演会
kojima-dental-office.net/20090620-2117#more-2117
メモ
1.かかりつけ医にもウォークインで受診する中に、緊急を要する患者さんが増えていく
・救急外来のウォークイン患者さんの約3割が緊急治療を要する
・医師不足などによる救急医療体制崩壊を避けるためにウォークイン患者を制限
・コストを公表 救急車の1回の出動に4万円
2.ウォークインで受診する緊急性が高い患者に循環器疾患は多い
・ウォークイン患者のうち救急救命センターに入院した患者の4割が循環器疾患
・循環器疾患は治療に一刻を争う場合が多く、診断までの時間が運命を決定する
・鑑別診断として地雷疾患を思い浮かべることが重要
3.地雷疾患を診断するために
・まず地雷疾患を思い浮かべて、否定できるどうかをチェックする
・否定できないようなら専門医への紹介
・3大地雷疾患は64MDCTで容易に鑑別診断が可能
*地雷疾患番付 疾患の特性から診断や緊急治療が困難なことがあり、
その結果突然死として患者を失ってしまうリスクの高い疾患
ある救急医グループによる地雷疾患番付表
横綱、大関は循環器疾患
東 西
横綱 肺血栓栓塞症 大動脈緊急(解離または瘤破裂)
大関 急性冠症候群(心筋梗塞を含む) 心筋炎
関脇 くも膜下出血 急性虫垂炎
小結 絞扼性イレウス(腸閉塞) 急性喉頭蓋炎
4.症例から得られた教訓
あらゆる可能性を考えて心電図、頬部レントゲン、心エコー、CTなどの検査をし、地雷疾患の可能性をチェックする
①高齢者の急性心筋梗塞は典型的な胸部症状を伴わないことが多い
②陳旧性心筋梗塞の既往があり強い胸部症状を認める場合は、
受診時に無症状でも即入院を考慮すべき
③最近の急性冠症候群は20代でも珍しくない
④急性心筋梗塞と考えられる場合は歩いてきても救急車搬送を考慮すべき
⑤冠危険因子を複数有している患者が持続する胸部症状を訴える場合は、
たとえ心電図や血液検査に異常がなくても急性冠症候群を疑うべきである
⑥風邪様症状+胸部症状があれば急性心筋炎も念頭におくべきである
⑦異常所見のない持続する胸背部痛を診たら、まず急性大動脈解離を疑うべき
⑧異常所見のない労作時息切れを診たら、まず肺血栓栓塞症を疑うべき
塞栓源の9割は下肢あるいは骨盤内静脈
第23回 よろず勉強会
日常診療に必ず役立つ・・・・・・
シリーズ「見逃してはいけない」
~よろず勉強会の“新バージョン・パート②”です~
とき 2012年5月17日(木)午後7時15分~午後8時45分
ところ 近江町交流プラザ4階「第1研修室」
※駐車場は近江町駐車場へ(無料)
対象 保険医協会会員(参加は無料、定員は先着30人とさせていただきます)
申込み 5月10日までFAXでお申し込みください 第23回よろず勉強会・案内
主催 石川県保険医協会/学術・保険部
電 話;076(222)5373 / FAX;076(231)5156
FAX用・参加申込書
医療機関名 会員ご氏名
前回から、「よろず勉強会」がバージョンアップしています。これまでのテーマ設定による講演会方式から、テーマを特定せずに、謎解き方式で日常診療の要点に迫ります。
診療所には、実にいろいろな患者さんが訪れます。症状もいろいろ、訴えもいろいろの中で、わたしたちは治療に当たらなければなりません。時には専門外であることから、大切なことを見逃してしまうことも・・・。そんなときに、他科や専門外の知識があれば、患者さんの訴えをより深く聞き取れ、治療に活かすことができます。
バージョンアップの「よろず勉強会」では、外来患者さんの主訴や何気ない会話の中から、決して見逃してはいけないことを学び合いたいと思います。会場も駐車しやすい近江町交流プラザに変えました。ぜひ、たくさんの会員の先生方にご参加いただければ幸いです。
第23回よろず勉強会報告記事
理事 三宅 靖(金沢市・内科)
五月十七日、「第二十三回何でも学術・何でも回答・よろず勉強会」が近江町交流センターの第一研究室で開催されました。この勉強会では「見逃してはいけない! こんな重症患者が歩いてくる」をシリーズ化しています。
そこで今回は、金沢循環器病院の名村正伸先生に講師をお願いしました。循環器疾患のエキスパートの講演を聞くことができるまたとない機会とあって、当日は十九人の参加がありました。
講演の内容も期待にたがわず素晴らしいものでした。まず、歩いて外来を訪れる「ウォークイン」の患者さんの中にも、緊急的治療を必要とする例がかなり含まれているというお話から始まりました。そしてその中には、診断が遅れると不幸な転機を取る危険のあるいわゆる「地雷疾患」があり、その中には循環器領域のものが多いということでした。
その後、代表的な「地雷疾患」として狭心症や心筋梗塞などの急性冠症候群、心筋炎、急性大動脈解離、そして肺梗塞の症例が多数示され、各症例とも確定診断に至るまでの考え方、治療経過、そして問題点などを詳細に説明していただきました。
心筋梗塞では胸部症状のほとんどない高齢者の症例、二十六歳と若年の症例、また心電図所見に乏しい冠動脈左回旋枝の閉塞例など興味深い症例が次々と紹介されました。また、肺梗塞では急激な発症もありますが、徐々に労作時の呼吸困難が増強していく例も多く、慢性閉塞性肺疾患との鑑別に注意が必要であるとのご指摘もいただきました。その上で講師は、地雷を踏まないためには教科書的な知識にとらわれずに、鑑別疾患としてまず重症な疾患を思いつくことが重要であると繰り返し強調しておられました。
まさしく明日からの診療に役立つ大変有意義なお話で、フロアからも数多くの質問があり、活発な質疑応答が繰り広げられました。
今後もよろず勉強会では、このシリーズを継続していく予定です。さらに多くの会員の先生方のご参加をお待ち致しております。
- カテゴリー: 歯科に必要な一般医学