食べる働きの習得にはアイコンタクトが必須
2024年06月24日(月)
基本的な食べる働きは、生後11か月から1歳半頃に育つ。応用編は6歳頃までかかる。遅れても必ず食べる働きは習得できる。
但し、前提条件がある。情報が入りやすい体と心が形成されていること。そのためには、アイコンタクト(スキンシップと話しかけ)が必須である。子どもと見つめ合い、優しく全身を触ることが必要。ところが、母親がスマホを見ながら目を合わさず母乳やミルクを飲ませていると、過敏で情報が入りにくい子どもになりやすく、以下の2つが次のステップへ移行せず、食べる働きが育ちにくい。最近、原始感覚が優位な子や随意運動が獲得できない子が増えている。
口腔機能発達不全症を学ぶ レジュメ
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「お口の機能を育てましょう 歯科医師からのメッセージ(改訂版)」発刊
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お口の機能を育てましょう
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①原始感覚系 → 識別感覚系
原始感覚が優位な子は、ざらざらした食べ物を受けいられず、食べ物の物性を識別できず、口唇と舌などとの協調運動も育たず上手く食べられない。
触覚には、二つの神経伝達ルートがある。
原始感覚系の神経回路 生体の防御や危険回避を行う
識別感覚系の神経回路 対象物の大きさや性状や形などの識別を行う
・生まれてしばらくは、原始感覚系の神経回路が優位にあるために、
子どもは不意に顔や身体を触られることを嫌がる。敏感な子は特に。
・敏感な口を持つ子供は周囲との協調性だけでなく、
学習や行動に対しても好き嫌いが出る
・危険回避が食べ物に現れると偏食になる。
イチゴ味が嫌い
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だまして食べさせるより、その過敏な身体や口を触り
穏やかな刺激が入力するように作ることが有効
・不思議なことに、手と口の感覚は連携しているから、
手で触れられないものは食べられない
ここに手づかみ食べの大切さがある
・原始感覚系の神経回路が優位なお子さんを診療する時も目を開けること(アイコンタクト)から始める
まだ何もしていないのに目を閉じて「痛い」と言う子どもたち
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②反射的な運動 → 随意運動
意識して学習しないと、食べる働きは育たない
・口の感覚が敏感でいつまでも随意運動が獲得できない子どもは、
食物の取り込みから咀嚼や嚥下機能が獲得できない
・新生児期の反射的な運動が、
やがて「意識」して動かす、いわゆる随意運動へと変化する
・反射的な運動
口に手を持っていく運動
音の方に首を向ける運動
乳汁が空になるか筋肉疲労で吸えなくなるまで吸啜する
→ 哺乳を中断し遊び飲みができるようになる。「意識の目覚め」
・運動発達に意識が深く関わる
食べる働きの育ちに遅れや問題がある子に対して顎や舌の運動を行わせる(舌を前に出してから丸める)と、鏡を見ているにもかかわらず自分自身の体を意志通りに動かすことができない。つまり、食べる働きが上手く発揮されない原因として意識下の運動学習が不足していることが想像される
③「固有感覚」の発達
・固有感覚とは、身体の内部(関節や筋肉、腱の動き)からの刺激によって
自分の体の位置、動き、力加減などを脳に伝える感覚
・未発達だと運動能力や力加減の調整、社会性に影響が出る
姿勢を制御し、バランスを保てないために動作が速く乱暴になりがち
しゃべり声の強弱が付けられないので怒鳴ったようにしゃべる
不安が強く、新しい場所や活動が苦手
廊下をバタバタ歩く、転びやすい
強い刺激を求める傾向があるため、衝動的で危険な行動が増える
身体が硬い、指が上手く折れない、折り紙の端が合わない、
枠からはみ出して字を書くのでいつも消しゴムは離せない
適切な力で握れないから筆圧が強い
・固有感覚を育む
外遊び: ぶら下がり、ジャンプ、木登り、ボルダリング、プールなど
家遊び: 相撲、トランポリン、クッションに挟まる遊び、粘土遊びなど
日常生活での工夫: 料理の手伝い(野菜をちぎる、こねる)、布団をたたむ
力加減を学ぶ:荷物を運ぶなど
参考に なぜ人間は、足の小指をぶつけやすいのか
ざんねんな人体
kojima-dental-office.net/blog/20251103-23036#more-23036
人間の身体には、現在、自分がどういう位置にいて、どのように動いているかという情報を認識する「固有感覚」というものが備わっている。
日本機械学会で発表された「人間の身体位置の研究」では、足の小指をぶつけるのは、人間の感覚において、自身が考えている足の大きさよりも足の指1本分が「外に飛び出している」からではないかと結論づけている。つまり、人間の固有感覚は、足の小指の位置を正確に認識していない。
しかし、足の小指は重要な役割を持っている。事故や凍傷で足の小指を失った人は、真っ直ぐに歩くことが困難になるとの報告があり、体の微妙なバランスが崩れた時に、それを察知するセンサーとして働く。筑波大学名誉教授の浅見高明博士の研究では、5本の指がきちんと接地すれば、足の指を曲げる力が発達し、きれいな「土踏まず」もでき、バランス感覚、運動能力にも優れた形になる。
参考に
①「古い脳」→「新しい脳」→「前頭葉」
早寝早起き朝ごはんによって脳と心、からだのバランスを維持できる。なぜなら、脳は身体の機能、情動、自律神経などの働きを司る「古い脳」ができてから、記憶や思考、情感を司る「新しい脳」が発達し始める。最後に適切なコミュニケーションに欠かせない「前頭葉」が育つという順番がある。ところが、夜更かししたりしてベースになる古い脳を育てないまま、塾とか習い事等々で新しい脳を育てるところに走っても、バランスが崩れる。
ここぞという時自分の意思で動ける力は、日頃の生活の中で前頭葉を活性化させて、脳をきちんと成長させることで身につく。親が子どもにしてあげられることは、「早寝早起きと朝ごはんをちゃんと食べる」の良い習慣をつけてあげること。
②起立性調節障害(OD)
・思春期に好発する自律神経機能不全の一つ
・たちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、動悸、頭痛
などの症状を伴う
・症状は午前中に強く、午後には軽減する
朝起きようとすると、立ち上がれない起立性調節障害(OD)が、軽症例を含めると、小学生の約5%、中学生の約10%。約半数が不登校になる。怠けているわけではない。症状は午前中に強く、午後には軽減する。起きづらい朝でも横になっていればスマホは使用できる。スマホの長時間使用により睡眠が障害され、更に症状が悪化する。
③愛着障害と発達障害の違い
愛着障害は発達の遅れ、特に認知や言語習得の遅れを併発するため、症状からだけでは発達障害と区別が付かない。発達障害の子は、成長とともに症状が落ち着く傾向にあるのに対し、愛着障害は、適切なケアを施さないと症状が改善されない。
愛着障害
子どもは生まれてから5歳ぐらいまでに、親や養育者との間に愛着を形成し、これによって得られた安心感や信頼感を足がかりにしながら、周囲の世界へと関心を広げ、認知力や豊かな感情を育んでいくという成長過程をたどる。子どもの未来を守るためにも、幼少期の親子関係をしっかり築くことが非常に重要。
愛着障害とは、こころを落ち着けるために戻る場所がない状態。愛着障害がある子どもは、成人してからも健全な人間関係を結べない、達成感への喜びが低く、やる気や意欲も起きない。
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