小島歯科医院 名誉院長ブログ

口腔扁平上皮癌の悪性度に関する臨床ならびに基礎的研究

2012年05月27日(日)


-特に高悪性4D型癌の特徴について-
と き  2012年5月27日(日) 午前10時~12時 
ところ  ホテル金沢 4階 風月の間
講 師  川尻 秀一氏
      金沢大学大学院医学系研究科がん医科学専攻細胞浸潤学分野教授
      (歯科口腔外科)
対 象  会員、会員医療機関の スタッフ(定員 50人)
参加費   無 料  チラシ川尻講演会   
主催   石川県保険医協会

メモ
1.口腔癌の統計
   1988年8月から約20年に金沢大学歯科口腔外科を受診した悪性腫瘍患者
     (病理組織学的に確定診断された症例)284名
   舌ガンが最も多く、ほとんどが扁平上皮がん
   白板症に赤い部分が見えてきたら要注意
   頸部リンパ節腫脹にリンパ腫の可能性あり
2.癌かどうか?
   硬結をみる(初期の注意点)
4D型癌3.癌の悪性度(生命危険率に及ぼす影響)
   TNM分類では腫瘍の大きさに一番左右される
   浸潤様式(4D型癌がリンパ節転移率が高く、著しく予後が悪い)
   視診では外向型より内向型が悪性度が高い(腫瘤硬結型が特に悪い)
     参考に
      ・外向性腫瘍(白板型、乳頭型、肉芽型)
      ・内向性腫瘍(びらん型、潰瘍型、腫瘤硬結型)
   4D型癌は腫瘤硬結型にのみ見られる
   口腔癌のスキルス癌
4D型癌2    浸潤様式4D型癌の間質量が非常に多い
    線維細胞によってガードして浸潤を抑制しているメージだったが、
    癌の浸潤をサポートしている
4.浸潤様式4D型癌の治療
   線維芽細胞増殖抑制剤と抗がん剤の併用投与が効果的
   抗がん剤を早期に投与しないと転移抑制効果がない
     (増殖抑制は投与時期に関係しない)
   切除範囲 Jによる不染帯を含める
     (Jを塗布、洗い流して染まらず白く抜けているところ)
   参考に
  口腔がんの浸潤像(特に4D型)と悪性度
kojima-dental-office.net/20111119-2249
5.告知
   本人に告知→本人の了承を得て家族に告知
    以前の告知の流れとは変化してきている

◆ご案内
 今回は、昨年8月に金沢大学大学院医学系研究科歯科口腔外科教授に就任されました川尻秀一先生に、ご自身の研究結果を中心に口腔癌についてお話しいただきます。
 口腔癌の発生は必ずしも多いものではありません。全癌に占める割合は3%程度、年間の症例数は7,000人程度とされています。部位としては、舌癌、歯肉癌などが好発部位です。その部位的特性により、様々な施設で治療されていますが、日々直接口腔内を診察する歯科医師が患者救済に果たす役割はきわめて大きいと言わざるを得ません。
 歯科において遭遇する疾患の中で唯一致死的な疾患であるため、口腔外科領域においては、最も重要な疾患として位置づけられております.そのほとんどが扁平上皮癌ですが、肉眼的所見は多彩です。口腔は摂食、嚥下、発音などの日常生活に密接にかかわる機能を有しており、癌術後には多くの障害を後遺します。
 口腔扁平上皮癌の5年生存率は、60-70%程度と言われています。川尻秀一先生はこれを上げるべく、口腔扁平上皮癌の組織学的悪性度を長年にわたって、研究されてこられました。それが今回の講演のメインテーマでありますY-K分類です。悪性度の高い癌を選別し、悪性度別に治療法を確立されてこられました。
 日本では、口腔癌が増加傾向のあると言われています。口腔癌は幸い視診で早期発見が可能です。
 今回の講演が口腔癌の撲滅への一助となれば幸いです。
 
◆抄録
  現在の口腔扁平上皮癌症例の5年生存率は約70%である。しかし、その悪性度は様々で、良性腫瘍と変わらないようなおとなしい癌もあれば、非常に危険な癌もある。治療の際、この癌の性格を見極める必要があるが、口腔癌の場合、浸潤像の観察が有用であることが報告されている。そこで当講座では、口腔癌の浸潤像と転移や予後との関連性についての研究を行ってきた。その結果、臨床病理学的には浸潤像が転移や予後と最も相関する因子であることが明らかになり、浸潤機序の解明が治療成績の向上につながるものと確信し、基礎的研究を併せて行っている。
 口腔癌の浸潤様式は1型、2型、3型、4C型、4D型の5つに分類されている。それぞれの5年生存率を比較すると4D型では極端に低く、25~40%である。そこで、臨床組織を用いて、各種の蛋白発現と浸潤様式との関連を免疫組織化学的に検索した。その結果、高度浸潤癌で基底膜の破壊、細胞間接着分子の消失、蛋白分解酵素の過剰発現、細胞運動因子の発現を認めた。また、癌細胞のみならず、癌細胞周囲の間質にも変化を認めた。さらに、ヌードマウスを用いたin vivo の浸潤・転移モデルと、線維芽細胞をコラーゲンゲルに組み込んだin vitro の浸潤モデルを作製し、高度浸潤癌に対する抗癌剤や分子標的薬の効果を検討している。以上、口腔癌の悪性度に関する研究と、高度浸潤癌の特徴を中心に講演する予定である。

<講師のプロフィール>
平成1年3月 愛知学院大学歯学部卒業
平成6年4月 金沢大学大学院修了(医学博士)
平成8年11月 金沢大学医学部歯科口腔外科助手
平成11年1月 Eastman Dental Institute, University of London 留学
平成19年5月 金沢大学医学部附属病院歯科口腔外科講師
平成23年8月 金沢大学大学院医学系がん医科学専攻
       細胞浸潤学(歯科口腔外科)教授
日本口腔外科学会・専門医・指導医
日本がん治療学会・認定医

◆参加申し込みは石川県保険医協会まで
医療機関名、電話番号、参加者名と職種を、電話・FAX・Emailのいずれかの方
法でお知らせください。
石川県保険医協会
TEL 076-222-5373
FAX 076-231-5156 /
Email  ishikawa-hok@doc-net.or.jp

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