小島歯科医院 名誉院長ブログ

癌の患者さんについて

2009年05月23日(土)


 診療室にも告知された患者さんが時々訪れるようになってきた。これまでは定点での理解であったが、斉藤先生の話を聞き、断片的な知識がつながり、患者さんの来院時の状態が縦軸、横軸においてどういう状態でどちらの方向へ向いていっているのかある程度理解できた。また、化学療法を受けている患者さんには、出血傾向、免疫状態の抑制、低栄養状態に気をつけて診療していきたいと思う。
 化学療法を受けている患者さんの注意点
  ①出血傾向     血小板数、PT時間、aPTT時間
  ②免疫状態の抑制  白血球数、発熱時
        ③低栄養状態    アルブミン値、リンパ球数
  ④突然死      突然の出血、肺塞栓
 FDG-PET検査の普及

歯科に必要な医科一般医学の講演会シリーズ
第3回 ■この10年で大きく変わった癌治療
~手術から化学療法、緩和ケアまで~
■癌の患者さんについて、歯科の先生に知っていただきたいこと
講 師:斉藤典才保険医協会理事(城北病院外科部長)
と き: 2009年5月23日(土)18時~21時
ところ:ホテル金沢4階エメラルド
対 象: 会員医療機関の歯科医師、医師、スタッフ(定員50人)
参加費: 無料(会員医療機関からの参加の場合)
※非会員医療機関の場合5万円ですが、当日までにご入会いただければ無料となります。
主催 :石川県保険医協会

メモ
1.  癌の発生
  ヒトの身体は、60兆個の細胞で構成され、毎日4千個の細胞(150分の1)が自然死「アポトーシス」している。がん細胞とは、何らかの理由でDNAの遺伝子に傷がついて「アポトーシス」ができなくなった細胞である。がん遺伝子(myc遺伝子など)によりつくられるタンパク質が増えすぎて、際限なく細胞増殖が引き起こされる。また、がん抑制遺伝子(p53遺伝子R8遺伝子、MLH1遺伝子など)は、それぞれ、細胞死の誘導、細胞増殖の抑制、DNAの修復に重要な働きを持っている。
 がんによる死亡率では、肺ガン、大腸がん、膵臓がんが増加し、特に女性では乳がんによる死亡率が年齢調整しても増えている。欧米に比べると胃ガンによる死亡が多く、また、男性では前立腺がん、女性では乳がんによる死亡が少ない。

2.  手術術式の変遷
 鏡視下手術や内視鏡手術が普及してきている。以前の胃ガン・大腸がんなどの手術では、術後1週間の絶飲食であったが、今は2日目から飲水開始、食事も4日目から開始している。また、検査も外来でするようになり、以前の約1ヶ月入院が、今は10日前後になっている。

3.  化学療法の進歩
 新規抗がん剤の登場により選択肢が増えると共に、明らかに生存期間は延長した。そして、分子標的治療剤は、がん遺伝子によりつくられるタンパク質を標的にした治療法であり、正常な細胞に影響を及ぼさなくなった。また、CVリザーバーを用いて外来や自宅での治療が可能になり、がんの根治よりもQOLを重視した方法が選択されるようになった。

  新規抗がん剤「オキサリプラチン、塩酸イリノテカン、タキサン系、TS-1、
         カペシタピン(内服薬)、塩酸ゲムシタピン」
  分子標的治療剤「メシル酸イマニチブ、ゲフィニチブ、トラスツマブ、ベバシズマブ」

4.  各論(乳がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肺がんなどーそれぞれの生存期間、治療成績)
5.  術後患者の栄養
6.  抗がん剤の種類と副作用
7.  患者の心のケア
8.  ターミナルケア

「抄録」                                              斉藤典才
 最近の癌の診療は大きく飛躍を遂げました。手術法では胸腔鏡手術や腹腔鏡手術といって、小さな傷で腫瘍をとりさり、術後の身体的・精神的負担が大幅に少なくなってきました。また化学療法では、いわゆる新規抗がん剤が登場し、いく種類もの薬剤が使えるようになり、明らかに生存期間が延長しています。また近年の化学療法の考え方として、生活の質(QOL)を落とさないような治療方法も検討されています。さらには分子標的治療剤が保険認可され、さらなる効果が期待されています。実際に、癌の患者さんを担当していると、生存期間が延長しQOLも良くなっているためか、歯科受診依頼をすることが増えてきた印象があります。
 今回、医科で行われている癌治療の総論的な解説を行った上で、外科医の立場から歯科の先生方に、あらかじめ知っておいていただきたいことをお伝えしたいと思います。

案内文
 我々は、歯科医院に訪れた癌の患者さんから薬剤名や検査数値を知ることができます。どんな治療を受けているのかも、おおよそは聞き出すことができます。しかし、その結果、何をどこまで理解し、どんな歯科の対処が的確なのかを判断できるでしょうか?不安ではないでしょうか。今回、その不安が少しでも解消できればと思い、癌に関する講演会を企画しました。 講師は、第一線でご活躍中の外科医です。明日から臨床に役立つお話を数多くお聞きできると思います。皆さんの御参加をお持ちしています。

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