がん患者を支える口腔管理・連携事業 第2回講習会
2013年02月03日(日)
日時 平成25年2月3日(日)13:30~17:30
内容 A.「石川県のがんの医療の現状と医療政策について」
石川県健康福祉部健康推進課 相川広一担当課長
B.「外来化学療法の現状について」
石川県立中央病院消化器内科診療部 山田真也医長
C.「通院がん化学療法・放射線治療法受療中の患者の口腔管理
ー目的・目標と管理計画書の作成ー」基礎編
栃木病院歯科口腔外科 岩渕博史医長
D.「がん患者に対する口腔ケアの実際」
石川県立中央病院歯科技術室 宮浦朗子主任専門員
場所 石川県歯科医師会館 2F大ホール
対象 歯科医師・歯科衛生士
主催 石川県歯科医師会
参考として
がん患者を支える口腔管理・連携事業 第1回講習会
kojima-dental-office.net/20121209-2334
メモ
A.「石川県のがんの医療の現状と医療政策について」
1.平成25年4月から新石川県がん対策推進計画が始まる
2.石川県がん対策推進計画(平成20年4月策定)
www.pref.ishikawa.lg.jp/kenkou/gankeikaku/gan-keikaku.html
B.「外来化学療法の現状について」
1.外来化学療法
・新規薬剤の開発や副作用の軽減する薬剤の導入などの医療の進歩
・外来化学療法加算が保険に導入された
・がん化学療法看護認定看護師
・専任の薬剤師が安全キャビネットという装置を使って無菌的な調剤を行っている
・疾患別利用割合(消化器、血液が多い)
2.画像強調内視鏡
www.onaka-kenko.com/endoscope-closeup/endoscope-technology/et_07.html
・粘膜表層の毛細血管や、わずかな粘膜の肥厚、深部血管などを強調して映し出す
・がんなどを見つけやすい
3.消化器がん
①胃癌
・標準治療はHER2陽性か陰性で抗がん剤を変える
・セカンドラインは決定的なものはないが、今のところ3方法
②大腸がん
・遺伝子を調べる
・抗がん剤の選択はほぼ決まってきている
・リンパ節転移がなければ内視鏡、あれば手術
④膵癌
C.「通院がん化学療法・放射線治療法受療中の患者の口腔管理」
1.口腔管理
・口内炎は減らないが、二次感染予防になる
VAP 人工呼吸器関連肺炎
・感染対策に尽きる
・口腔内感染源除去の基準 症状のないものは処置しない
但し、骨髄移植の場合は積極的に処置する
・小児で抗がん剤などを使用されていると、
乳歯が生え替わらないので抜歯する必要がある
2.口腔内併発症
・合併症とは原疾患に伴うトラブルであり、併発症は他部位に起きる副作用
・好中球が減少した患者に口内炎を併発すると、
口内炎のない患者に比べ敗血症の発生率が4倍になる。
3.カンジダ症
・がん療養中で痛みを伴う口内炎では、2人に1人はカンジダ症を疑う
痛くて磨けないわけではない
リスク因子が多いほどカンジダ症の可能性が高い
・口腔内をきれいにしても良くならない
・抗真菌薬を3日ほどで使うと良くなる(再発の可能性が高い)が、1週間使用する
使用量は1日5グラム(少量では効かない)
・術前にカンジダがいると、口内炎が重症度化する
抄録 石川県立中央病院消化器内科診療部 山田真也医長
これまでがん化学療法は入院して治療を行うことが一般的であったが、新規薬剤の開発や副作用の軽減する薬剤の導入などの医療の進歩によって、現在では外来で安全にがん治療を受けることができる。患者さんは自宅で普通の生活を送り、ご家族の心身両面の援助を受けながら、最新の癌治療を受けることが可能となった。
当院外来化学療法室の現状を報告する。2006年4月開設。利用件数総数は、開設以降、増加の一途をたどっており、平成23年には4949件となっている。
疾患系別の利用割合は消化器系39.5%、血液16.9%、乳腺14.3%、呼吸器系12.6%、婦人科系4.5%、その他12.2%。外来化学療法室スタッフは、専属の医師1名と看護師4名(がん化学療法看護 認定看護師1名)、薬剤師3名が勤務。ベッド数は14床。従来のベッドの他、リクライニングチェアーやテレビなども完備し、充実した施設での治療が行える。化学療法を専門とした看護師が患者さんの体調をきめ細かく観察し、できるだけ副作用が少なくなるように患者さんを援助している。正確な抗がん剤の調剤が不可欠であり、薬剤師2名か常駐。高い技術と最新の知識を持って正確な調剤を行っている。また、無菌性と安全性を確保するためにガウンやマスクを着用し、安全キャビネットにて無菌的な調剤を行っている。化学療法の実施において重要なのは何よりも安全管理であり、治療スケジュール(レジメン)は全て登録制となっている。レジメンは全て審査委員会で審査され、承認を得られたもののみが使用可能である。治療中の患者さんに重度のアレルギー反応や皮下への点滴漏れ、口腔内障害が起こることがあり対応が必要となる場合がある。その際は各科の主治医に連絡するとともに重度のアレルギーの場合は救急部医師へ、点滴漏れの場合は皮膚科医師へ、口腔内障害が重度の場合には歯科口腔医師へ連絡することをルール化しており、迅速かつ適切な対応を行っている。
当日は、消化器がん種別のレジメンの紹介、レジメン別の口腔内障害の発生状況、及びその対策について実例も交えて紹介する。
抄録 栃木病院歯科口腔外科 岩渕博史医長
がん化学療法や放射線治療中患者(以下:がん治療中患者)は基本的に全て虚弱者であり、3大不潔域である口腔の管理は感染予防という点で大変重要である。一概にがん治療中患者の口腔管理といっても、実施される治療や患者の病期により口腔管理の目標や方法が異なり、一様ではない。がん治療中患者の口腔管理の目的は感染症対策、口腔併発症の予防および対処、摂食機能の維持(義歯と硬組織疾患の管理)であるが、最も重要なことは感染症対策である。治療開始前に於いては、症状のない根尖性歯周炎、周囲歯肉に炎症のない残根歯は経過観察とする。急性症状のない歯周炎や智歯周囲炎は局所洗浄にとどめ、場合により抗菌剤を投与する。高度歯周炎や智歯周囲炎への罹患歯は基本的に抜歯する。観血処置は好中球、血小板が低下する3~4日前までに終了させる。また、口腔管理により口腔粘膜炎の発症自体を予防することは困難ではあるが、二次感染を予防することにより口腔粘膜炎の重症化と敗血症のリスクを軽減することが可能である。治療開始後には免疫能低下による日和見感染症発症や歯科疾患の急性転化、味覚障害や口腔乾燥症、慢性GVHDなどの晩期障害、体重減少に伴う義歯不適合などについての管理が必要である。もう一つ重要なことは、がん治療の経過や症状の変化により全身状態や口腔がどのように変化するのかについて事前に予測し管理計画を立案することである。口腔に問題となる感染源がなくとも、がん治療開始前にはプラークフリー処置に加え、フッ素塗布も考慮する。不適合な義歯は口腔粘膜を損傷させ、口腔カンジダ症や口腔粘膜炎を助長するので修理する。ビスフォスフォネート製剤の投与や口腔が照射野となる放射線治療を予定している場合には、近い将来に観血処置の必要性が高い場合にはこれらの治療開始前に観血処置を行うことが最善である。
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