がん患者さまの口腔管理の実際」実践編
2012年11月23日(金)
がん患者を支える口腔管理・連携事業
講師 辻本好恵先生
サンスター株式会社 医科歯科営業部
日時 平成24年11月23日(金・祝) 10:00~12:30
場所 石川県歯科医師会立歯科医療専門学校 実習棟2F
対象 歯科衛生士(定員20名)応募者多数の場合は抽選
主催 石川県歯科医師会
研修では、がん患者様に対応していただく際の基本的なことや普段見落としがちなケアの配慮についてご紹介し、実習を通じて臨床へ活かせる情報を持ち帰っていただきたいと考えております。2名1組となり、デンタルユニットを用いて実習していただく予定です。
【当日ご自身で用意していただくもの】
白衣、ナースサンダル
グローブ、マスク、表面麻酔剤、外科用バキューム、モスキート鉗子
基礎編の資料
「がん患者さまの口腔管理の実際」~実践編~を受講して
研修者 小島歯科医院
歯科衛生士 松川 嘉美
レポート
現在、在宅でがん治療をされている患者さんが増えてきている。そして、がん患者の予後とQOLのために、私達歯科衛生士へのニーズも高まることが予想されている。歯科医院にそのような患者さんが来院された時の対処方法を学んだ。まずは事前の情報収集が大事。原疾患、手術日、手術法、既往歴、全身状態などをふまえて実施可能な処置の予定をたて、患者さんへの問診より痛みやムセの程度、セルフケアの習慣、治療についての理解度をさぐり協力度を勘案して、スケーリング、PMTCやTBIの計画と注意点を考えることが重要である。この講習会で学んだことや相互実習で体験したことを今後に活かしていきたいと思う。
A.口腔ケアの基本
1.口腔内の観察
2.歯磨き
3.洗口(含そう)
B.セルフケア指導内容
1.歯ブラシ
・コンパクトヘッドで軟毛のナイロン製歯ブラシを選択。
・使用開始から約1ヶ月で交換する。
2.歯磨剤
・低刺激でフッ化物配合のものを選択。
・1回の使用量は歯ブラシの約四分の一程度。
3.歯磨きの方法
・スクラッビング法もしくはバス法。(その方に応じて指導する)
4.舌ケア
・舌苔は水を湿らせた歯ブラシか舌ブラシを使用し、
奥から手前へかき出すようにあてる。
5.洗口(含そう)
・アルコールを含有していない低刺激の物。
・しみが強い場合、水、生理食塩水を使用する。
・口腔全体にいきわたるようブクブクうがいを1日6~8回実施する。
6.義歯の清掃保管
・カンジタ菌の温床になりやすいので、
ブラシによる清掃と義歯洗浄剤をあわせて行う。
C.症例別ケア方法
1.セルフケア困難時の口腔ケア指導
がん治療中は倦怠感や吐き気、嘔吐、口腔粘膜炎、口腔トラブルなどが生じやすい。
歯磨きが困難な場合や、ケア実施により出血や感染の危険性が予測される場合は、患者さんに洗口など安全に無理なく実施できるケアにとどめることを指導する。
2.口腔乾燥による口腔粘膜ケア
洗口可能な場合は洗口指導、洗口が困難な場合は看護師または衛生士による、粘膜面の清掃と保湿ケアを実施する。
①口唇、口腔粘膜の順にワセリンや市販の保湿剤、白ゴマ油などを
手指かスポンジブラシで塗布する。
②粘膜が湿潤したら、スポンジブラシの柄を回転させながら奥から手前に移動させ、 粘膜面に付着する汚染物、粘膜剥離上皮を除去する。
その際粘膜面を強くこすらないようにする。
3.粘膜炎がある時の口腔ケア
①少しでも痛みを和らげるため
・開始前に粘膜炎の部分に表面麻酔薬を小綿球や綿棒などで塗布する。
(ミラーの背部にも塗りそっと広げる)
・使用するミラーや歯ブラシには潤滑剤としてワセリンを塗っておく。
・ケア時には粘膜を強く引っ張らないよう力加減に注意する。
②粘膜炎のある部位にはスポンジブラシによる粘膜ケアは行わないで、
市販の洗口剤や含そう液、消毒薬、水道水でうがいしてもらう。
しみる場合は生理食塩水を使用する。
③血小板減少、肝機能障害で歯肉出血を伴う場合は、
小綿球などで歯面のみを清拭する。
4.放射線性う蝕の対処
放射線照射範囲に耳下腺が被爆する場合、唾液の分泌低下により、自浄作用、抗菌作用が失われ一気にう蝕が進行する。対処法として治療開始よりフッ化物塗布を開始して、終了後も2~3ヶ月おきにフッ化物塗布を行い経過観察をする。
D.化学療法中の歯科治療
血小板数 4万/μL以上 歯科処置を安全に行うために
白血球数 2000/μL以上 必要な条件
◆ 歯科治療を行うのは、次の化学療法が再開する直前の時期。
ちょうど、次の治療開始2~3日前に行うようにすればよい。
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