小島歯科医院 名誉院長ブログ

がん患者を支える口腔管理・連携事業 第1回講習会

2012年12月09日(日)


がん患者を支える口腔管理・連携事業 第1回講習会日時  平成24年12月9日(日)13:00~17:00
内容  A.「がん」の総論
      ーがんの進展から治療まで(胃ガンを中心として)ー
        金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科 藤村隆先生
            B.がん患者に安心・安全に歯科治療・口腔ケアを行うための知識
        静岡県立がんセンター 歯科口腔外科部長 大田洋二郎先生
    C.サイコオンコロジー(精神腫瘍学)とがん医療における
              コミュニケーション・スキル
        金沢医療センター精神科医長(腫瘍精神担当) 小室龍太郎先生
場所  石川県歯科医師会館 2F大ホール
対象  歯科医師・歯科衛生士
主催  石川県歯科医師会

メモ
A.「がん」の総論
 1「癌」と「がん」の違い
  ①「癌」とは、上皮から発生した悪性腫瘍
     皮膚癌、胃癌、大腸癌、肝癌、膵癌など
  ②「がん」とは「癌」や「肉腫」・「血液悪性腫瘍」も含めた総称
 2.癌の増殖
  ①癌細胞の分裂回数と個数
    n回分裂すると2のn乗個
    10回分裂すると、1024個=約10の3乗個
    20回分裂すると、約10の6乗個
    30回分裂すると、約10の9乗個    
    40回分裂すると、約10の12乗個
  ②癌細胞の数と癌の大きさ
    癌細胞1個の大きさは約10μm
    臨床的に見つけられない径1mmには、約10の6乗個の癌細胞
    臨床的に見つけられる径1cmには、約10の9乗個の癌細胞
    死期が近い径10cmには、約10の12乗個の癌細胞 
  ③癌の増殖スピードと診療チャンス
    治療できるのは、癌の大きさが1cm~10cmであり、
    分裂回数では20世代~30世代の10世代に相当し、
    1mmから1cmになる時間と同じである。
    スキルス性胃癌のような分裂スピードの速い癌は、年1回以上の検診が必要

 3.リンパ節転移
    静脈への注ぎ口となる左鎖骨上リンパ節転移を重要視する
 4.胃癌の進行度と診療ガイドライン
    大きさよりも胃壁への深さを重視
胃癌の進行度と診療ガイドライン

 5.癌治療と歯科口腔外科との連携
    ①周術期口腔ケア   
    ②治療関連口腔内疾患
      化学療法による口内炎  5-FU系抗がん剤に多い  
      顎骨壊死
    ③栄養管理
      NST
    口腔内評価表(のと総合病院 長谷剛志先生作成)を参考に点数を付けている

歯科治療の原則B.がん患者に安心・安全に歯科治療・口腔ケアを行うための知識
 1.抗がん剤治療中の歯科治療
   ①歯科治療の原則
     担当医に問い合わせる
     血小板数(5万/μl)、白血球数(2000μl)以上
   ②白血球数の変化を理解
     抗がん剤治療1~2週間後に少なくなる
     2000以下をナディアと呼ぶ
   ③歯科治療の時期と処置内容
     観血処置は次回の抗がん剤治療開始前に行う
      必要があれば抗がん剤治療の先送りを相談する
     10日以内に白血球2000以下が予想される時は抜歯などをしない
ナディア RIMG3503

 2.口腔粘膜炎の対処
   ①口腔内清潔保持
     粘膜炎が起きやすい部位を理解する
     痛くなる粘膜にあたらない小さなヘッドの歯ブラシを選択
     痛い部位と歯ブラシヘッドに表面麻酔ジェルをつける
   ②口腔内保湿
     1日8回 2時間おきくらい
     1リットルの水に9グラム(小さじ2杯で10グラム)
   ③疼痛コントロール
     食事時の疼痛回避のために、鎮痛剤の服用や麻酔薬での含嗽 

C.サイコオンコロジー(精神腫瘍学)とがん医療における
              コミュニケーション・スキル
 1.サイコオンコロジー(精神腫瘍学)とは
   ①緩和ケア
     緩和ケアが受診後早期から必要(ターミナルケアは違う)
     死後の遺族ケアも必要
   ②がんによるストレス
     ストレスに対して「うつ病」や「適応障害」が2週間以上続けば対策が必要
     心のケアの専門家(がん診療連携拠点病院)の利用
   ③心のサポート
     理解の確認、共感、敬意
 2.よく見られる精神症状について
   ①せん妄
     意識障害
     急に生じることが多く、夜になると症状が激しくなる
   ②認知症
     回復不可能な記憶障害、実行機能の障害
 3.がん医療におけるコミュニケーションスキルについて
   ①コミュニケーション
     双方向の情報共有
   ②インフォームド・コンセント
     気持ちがおさまる
   ③基本的なコミュニケーション技術
     話を聴くスキル
     質問するスキル 開いた質問
     応答するスキル
     共感するスキル 沈黙を積極的に使う
 4.チーム医療について
   ①目的・目標がある
   ②ルールや決まり事がある
   ③目的・目標を成し遂げられる人材が揃っている 

がん診療連携歯科医
 がん及びがん診療について基礎的な知識を有する
 がん治療中の患者の口腔に惹起される有害事象について熟知し、適切な対処ができる
 がん診療病院などと診療情報や治療計画を共有する
    口腔管理の必要性を説明し、適切な対応をする
    歯科治療は血球が安定する「歯科治療安全期」に行う
 がん患者の口腔管理に関連する講習会等に年1回程度参加し、研鑽を積む
 連携状況や講習会受講状況を報告する

登録リストをがん診療病院に周知する
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