小島歯科医院 名誉院長ブログ

口腔粘膜疾患の早期発見法

2016年11月10日(木)


%e7%9f%b3%e6%a9%8b%e3%80%80%e6%b5%a9%e6%99%83%ef%bc%91講師 金沢医科大学 顎口腔外科学講座 准教授 石橋 浩晃

 石川県保険医協会学術保険部主催の「第44回なんでも学術・よろず勉強会」が11月10日近江町交流プラザにて開催されました。この勉強会では「医科会員のための歯科講座」が2回に1回のペースで行われています。今回は金沢医科大学顎口腔外科学講座准教授に講師をお願いし、口腔粘膜疾患の早期発見法についてお話しして頂きました。口腔外科専門医と口腔病理専門医のダブルライセンスは日本で1人だけだそうです。
 口腔粘膜にみられる様々な病態や扁平上皮癌の現れ方を供覧して頂きました。色調%e7%9f%b3%e6%a9%8b%e3%80%80%e6%b5%a9%e6%99%83%ef%bc%92(赤、白、黒)と形態(膨隆、潰瘍)が、どうしてそのように現れるのかを組織切片スライドを用いてていねいに解説されました。先生ならではの切り口でした。そして、扁平上皮癌の早期発見のためには、細胞診が非常に役立つことを、また、組織診断との使い分けも大切であり、前者はスクリーニングに、後者は確定診断と治療計画に有用なことも力説されました。これまでのものより進化した病院と歯科診療所の連携した口腔粘膜疾患の早期発見システムが紹介されました。綿棒で採取した細胞とその部位の口腔内写真も一緒に送ることによって、細胞所見だけでなく、診断と治療法なども提示されるというものでした。講演終了後、連携に関することや実際の手技について多くの質疑応答がありました。
 今後もこのシリーズを継続していく予定です。臨床に役立つ貴重なお話と臨場感あふれる活発なディスカッションを聞くことのできる会ですので、1人でも多くの会員の先生方にご参加いただきたいと考えております。

メモ
A.何かおかしいなと思われる口腔粘膜は白、赤、黒の三色である。
      また、膨隆か潰瘍を呈している
 a.白色病変
   1.原因
     ①角化亢進(角質の過剰生産
          ②繊維素の付着(治ろうとしている
                   ③真菌感染
                   ④壊死
*潰瘍部にケナログを塗布すると、表層が治ることもあるが深部のがんは進行している
     しこりが触診できる
   2.上皮異型度評価
  *下記12項目で点数を付け、数が多いほうが癌になりやすい
       ①基底細胞の極性の消失 
                   ②基底層の過形成
                    ③核・細胞質比の増加
                    ④滴状形の上皮脚
                    ⑤上皮の不規則な重層
                    ⑥有糸分裂像の増加
                    ⑦表層側半分の分裂像の増加
                    ⑧細胞の多形成
                    ⑨核のクロマチンの増加
                    ⑩核小体の増入
                    ⑪細胞相互の結合性の低下
                    ⑫棘細胞層における単細胞の角化や上皮真珠の形成
 b.赤色病変
        1.原因
                    ①血液の増加
                    ②粘膜のひ薄化
                    ③炎症性病変
    2.表層近くの扁平上皮癌は赤い潰瘍として現れる
 c.黒色病変
    1.原因
     ①メラニンの産生、沈着
     ②ヘモジデリン(鉄を含むタンパク質)
     ③異物(金属、マーキング、ホルマリン)  
    2.悪性黒色腫
     サランラップのような薄い膜の下に黒く見える

B.扁平上皮癌
 a.5年生存率  80%
   1初期の癌が見つけやすい
     ・腫瘍の大きさ(T分類)が4センチ未満が多い
   2.予後のよい順に並べた臨床視診型(発現率)
                   ・白板型(10%)
                   ・乳頭型(10%)
                   ・膨隆型(35%)
                    ・肉芽型(20%)
                    ・潰瘍型(25%)
 b.早期発見のために
   1.病理検査の使い分け
     ・細胞診はスクリーニングに(2日ほどで分かる)
     ・組織診断は確定診断と治療計画に(1週間ほどかかる)
   2.細胞診によるスクリーニング
                  ・正常
                  ・軽度上皮内病変
                  ・高度上皮内病変
                   ・扁平上皮癌
      3.病院と歯科診療所の連携した口腔粘膜疾患検査システム
           ・スターターキット(綿棒、スライドガラス、細胞固定スプレー)
                 ・細胞と一緒に口腔内写真も送る
                 ・細胞所見だけでなく、診断と治療法を提示
                ・経過観察をどこでするかも提示
                    歯科診療所、口腔外科医、高次医療機関
  c.細胞診の利点・欠点
   1.利点
     ・感染症か腫瘍かが分かる
     ・腫瘍であれば良性か悪性かが分かる
     ・カンジダも分かる
     ・患者に優しい 
            2.欠点
                  ・正確に採取しないと正しい判定ができない
                  ・炎症などにより良性細胞が悪性細胞に見えることがある
                  ・詳しい組織構築が読めない
                  ・有資格者が必要

日ごろの疑問の解決のために
なんでも学術!なんでも回答?よろず勉強会 第44回
シリーズ 医科会員のための歯科講座    チラシ「口腔粘膜疾患の早期発見法」

とき:2016年11月10日(木)午後7時15分~午後8時45分
ところ:近江町交流プラザ4階・研修室1
対象:保険医協会会員(参加は無料です)
申込み:11月7日まで(講師の先生への質問がある場合は、11月2日まで)に、
    お名前と医療機関名を記入の上、FAXでお申し込みください。
主 催:石川県保険医協会 
  金沢市尾張町2-8-23 太陽生命金沢ビル8階
   TEL 076-222-5373 FAX 076-231-5156
   Eメール ishikawa-hok@doc-net.or.jp 

【講演抄録】口腔粘膜は診察に特別な器機を必要としないので、単純な視診により早期発見が可能である。一方、口腔には肉眼的形態が類似する多彩な疾患が発生するので、正確な診断確定に苦慮する事が多い。これらの多くの口腔粘膜疾患の早期発見のために重要なのは、色調(赤、白、黒)形態(膨隆、潰瘍)の観察である。そこで、口腔粘膜疾患における色調・形態異常について臨床的、病理学的に解説し、さらに、診療所と大学が連携する口腔粘膜疾患の早期発見システムを紹介する。

<略歴・専門医等>
略歴
1989 九州大学歯学部卒業
1993 九州大学大学院歯学研究科単位取得退学
同 九州歯科大学口腔外科学第二講座助手
1995 歯学博士(九州大学)
同 九州大学歯学部附属病院第二口腔外科医員
1997 九州大学医学部病理学教室第一講座助手
1998 九州大学歯学部口腔外科学第二講座助手
2000 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座
     口腔顎顔面外科学助手・助教
2007 島根大学医学部歯科口腔外科学講座講師
2009     同 准教授
同 ドイツ・フライブルク大学口腔顎顔面外科留学(客員教授)
2014 金沢医科大学顎口腔外科学講座准教授 現在に至る

専門医等
日本口腔外科学会 専門医・指導医
日本病理学会 口腔病理専門医・研修指導医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医(歯科口腔外科)
                          暫定教育医(歯科口腔外科)
日本口腔腫瘍学会 口腔がん専門医・指導医
日本臨床細胞学会 細胞診専門歯科医・研修指導医
日本顎顔面インプラント学会 指導医
日本小児口腔外科学会 指導医

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