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老年医学的観点から見た高齢者疾病の特徴

2015年10月31日(土)


講 師:大川義弘 城北クリニック院長(内科)

メモ
1.高齢者の自立度の変化パターン
    ・男性は3パターン、女性は2パターン
    ・男性の1割は90歳になっても自立するスーパー老人がいるが、
     女性は70代半ばから緩やかに衰えていく
  ・例外もある
 参考に 高齢化する社会 3.高齢者の生活を理解 図2と図3
www.platinum-handbook.jp/contents/5

2.老年医学
    ・大学医学部80のうち老年医学の講座があるのは28校のみ(それも臓器別)
    ・東京都健康長寿医療センター
    http://www.tmghig.jp/
    総合的に診る病院と研究所を持つ
  ・老年医学の包括的評価にほとんど歯科の記載はない

3.高齢者の疾患・病態の特徴
 ①多病
    ・健康診断結果(基準値)により病気が作られている
    血圧、貧血・脂質・糖質検査(年齢に見合った数字)
  ・健診の意味
        スカンジナビア半島の大規模な疫学調査
    「管理組」の死亡率が「放置組」を上回った 
    しなければならぬという「ストレス」によるものか 
ランダムに抽出された対象者を「健康管理組」と「放置組」に分けて定期的に同じ健康診断を行い、管理組にはきちんと食事制限や運動指導などを行い、必要であれば投薬も行いました。それに対し、一方の放置組には、何があっても目をつぶり、これくらいなら大丈夫と励まし続けた結果、10年後には管理組の死亡率が放置組を上回ると言う予想外の事実が明らかになった。
 ②症状が不定型で正確な診断が困難な場合が多い
    しっかり検査しないと分からない
 ③精神・神経症状によりなおさら難しくなる
 ④薬剤に対する反応が若年者と異なる
   80歳の腎機能は20歳の半分なので、薬の量も半分に
 ⑤水・電解質などの異常を起こしやすい
   脱水と低ナトリウム血症
 ⑥疾病の予後を決定する因子がそれ以外にもある
   入院すると、認知症や歩行が悪化する
 ⑦同じ年齢でも個人差が極めて大きい
   血管年齢や肺年齢
      診た感じ

4.老年医学の最近のエピソード
 ①10年前よりも身体、知力、病気が10歳ほど若返る
 ②高齢者の薬剤を減らす
    ・症状を和らげる薬(中止しても問題が起きなければ)
    抗アレルギー剤、眠剤、整腸剤
  ・下げ過ぎに注意(コントロール基準をよく考えて)
    降圧剤、脂質異常薬、糖尿病薬
  ・目的を達すれば中止
    鉄剤
 ③慢性疾患の管理
  ・血圧は年齢と共に上がる
    80歳以上であれば降圧目標を160以下にする
     140以下にしなくても可
        90歳以上は160~170が長生き
    ・高齢者の血糖コントロール
        HbA1c 7.0~8.4%が脳卒中が少ない
        厳格に下げると有害

歯科医師のための医科講座
    ~歯科医院に増え続ける高齢者を診るために~
講 師:大川義弘 城北クリニック院長(内科)
と き:10月31日(土)午後6時30分から8時30分まで
ところ:近江町交流プラザ 研修室1(金沢市青草町88 近江町いちば館内)
対 象:歯科会員とスタッフ (定員30人)
参加費:無料 高齢者疾病の特徴_チラシ.pdf
主催:石川県保険医協会
申込み:医療機関名、電話番号、参加者氏名をご記入の上、
    10月28日(水)までにお申込みください。
    講師への質問をどしどしお送りください。
<呼びかけ文>
 場当たり的だとは思いたくはありませんが、私たちGPの歯科医にとっての医学管理は、疾患や臓器別で、統一した視点というものが欠けているのかもしれません。内科医でもないのだから仕方がないと言われればそれまでですが、日頃、その内科医に対しても、例えば電話口の向こうだったり、紹介状をとおした対診などで、論点がかみ合っていない、意図が見えない、と感じたことはないでしょうか。
 超高齢社会を迎え、ともに医療サービスの供給側にいるにもかかわらず、連携となると今一つ及び腰であるのは、遠慮や気恥ずかしさがあるのかもしれませんが、相手である内科医の視点を、そもそも聞いたことがないからかもしれません。
 ご近所の先生には聞きにくいかもしれませんが、今回は大丈夫!
 高齢者医療に造詣の深い大川義弘先生と一緒に、認知症や循環器、呼吸器や腎機能の低下が予想される高齢者の医療について学び、ともに明日からの診療モデルを作っていきましょう。

<講演抄録>
大川 義弘
 初期研修の後、自分がこれから医師として生きていく上で何をサブ・スペシャルにすべきかを考えました。臓器別の専門医はいやで、それでは横断的に患者さんを診ることができる分野は何かということで老年医学を選び、東京都老人医療センター(現:東京都健康長寿医療センター)で学ぶことにしました。
 その頃(1981年)は日本の高齢化率は何と10%以下でした。それからの日本の高齢化率はまさにうなぎ登りで2014年には26%になりました。高齢化率が高い上に、高齢者の有病率が高いことで(たとえば糖尿病は、「疑い」と「可能性が高い」を合わせると70歳以上の男性では何と約50%)医療機関を受診する患者さんの多くは高齢者になっています。
 高齢者に特有の病態を熟知した上で適切な診療が行われているかどうかは、「高齢者の定義すらはっきりしない」「暦年齢ではきまらない高齢者の大きな個人差」「高齢者を対象とした臨床試験(特に80歳以上を対象とした)の少なさ」、などがある中で一定の困難さがあります。今回はそういうことを踏まえつつ、歯科の先生の実地診療に役立つことをお話ししたいと考えています。
◇ 講師プロフィール
1978年金沢大学医学部卒業
1981年から1989年まで東京都老人医療センター
             (現:東京都健康長寿医療センター)
1989年から1997年まで城北病院
1997年から現在まで城北クリニック
日本内科学会認定内科医、日本老年医学会認定老年病専門医、日本神経学会専門医、日本在宅医学会認定専門医、北陸がんプロフェッショナルエキスパート医

<石川県保険医新聞>           濱田久 
 歯科医のための医科講座「老年医学的観点から見た高齢者疾病の特徴~歯科医院に増え続ける高齢者を診るために~」のセミナーが、10月31日(土)近江町交流プラザにて行われました。講師は当協会副会長の大川義弘先生にお願いし、15名の参加者がありました。 
 歯科医にはあまり聞きなれない「老年医学」という視点で見ると、高齢者とその医療というのは、今までとは少し異なる地平を持っていることが示されました。
 まず超高齢社会と高齢者の特徴についての説明があり、高齢者の自立度の変化パターンや、脳の模式図から穿通枝の破綻によるラクナ梗塞、加齢と認知症、言語機能と誤嚥など、グリム童話も引き合いに出して説明がありました。
 また高齢者の疾患、病態の特徴を7つあげ、薬物療法(服薬数と副作用)、老年症候群や健康診断(特に脂質異常症、高血圧、糖尿病)、終末期についての説明と問題提起がありました。最近では、若返りも著しいといわれる高齢者ですが、その高齢の患者さん一人に対し、臓器別の診療科や他の医療機関ごとに治療計画を立てている現状があり、担当医達による充分なカンファレンスをもとにした、統一された最適な医療が求められているのではと推察され、講師の言うキュアよりもケアの老年医学の重要性があらためて理解できました。 しかしまた一方で、サクセスエイジングを目指す老年医学でさえ、歯科医療への関心が低いのではと嘆いておられました。 
 最後に私達参加者(歯科医)に対し、江戸時代の寺院建築の宮大工の仕事ぶりが、それ以前の時代のものとは少々異なり、隠れたところに少し手抜きがあることを指摘し、見えないところにも気をつけましょうと締めていました。しかしながらもしかすると、本当は手を抜いたのではなく、そのレベルに達していなかったのではと、少々考えさせられました。

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