小島歯科医院 名誉院長ブログ

乳幼児期に必要な口腔機能の発達と食との関連(1)

2015年05月10日(日)


講演Ⅰ  10:05~11:45
 演題  歯科医師からみた口腔機能の獲得について
 講師  金沢市 ながと歯科小児歯科医院  長門佐先生 
講演Ⅱ  11:55~12:45
 演題  口腔機能および消化機能の発達と離乳食     
  講師  野々市市健康福祉部健康推進課 管理栄養士 井沢恵先生

石川県歯科医師会・石川県栄養士会連携事業 第五回研修会
日時   平成27年5月10日(日)10時~13時
場所   石川県歯科医師会館 2階大ホール
対象者  歯科医師・歯科衛生士・管理栄養士・栄養士
     母子保健に関わるすべての職種の皆様
主催   石川県歯科医師会・石川県栄養士会

講演会メモ
講演Ⅰ
1.習慣性口呼吸と口唇閉鎖の獲得について
 ①富士山型のルーズな上唇 『ポカン口』
   永久歯になると出っ歯になっている
   習慣性口呼吸をしている
参考として
富士山型でしまりのないルーズな上口唇
kojima-dental-office.net/20081120-232
 ②習慣性口呼吸
  ・診断基準(確立されていない)
    就寝時に口が開いている
    リラックス時に口が開いて白い歯が見える
  ・問題点 西原克成先生著書より
    顔と身体の歪みの原因(背骨が曲がる・猫背)
        歯と口元の変形の原因(出っ歯・たらこ唇)
    運動能力・学力低下の原因(疲労感・頭がボーっとする)
    アトピー性皮膚炎や喘息
    慢性風邪症状
    無呼吸症候群
  ・原因
    離乳食の与え方  口唇閉鎖の獲得が大切 上唇が降りてからスプーンを引く
             家庭単位の傾向あり
    うつぶせ寝・横寝  頭の重さは新生児では体重の30%
             歯列幅が狭い→舌が沈下→舌圧が弱い
                          下側の鼻孔が塞がり口呼吸→習慣性口呼吸
                          添い寝も同じなので昼は乳児を起こして飲ませる
    鼻閉       口呼吸は鼻腔も冷やす→線毛上皮の働きが悪くなる
                              →自浄作用の低下→鼻炎
参考として
添い乳の弊害について
kojima-dental-office.net/20131009-208
  ・対策
    症例 T4Kやi-2による口唇閉鎖の獲得と歯列のスペース拡大
    あいうべ体操
    風船あそび 膨らます→5秒維持を繰り返す
 ③口呼吸≠習慣性口呼吸
  ・授乳している乳児は鼻呼吸だが、言葉を話すようになると口呼吸を覚える
     口呼吸するのは人間だけ
     口呼吸になると誤嚥の問題が生じる
  ・激しい運動をすれば補助的に口呼吸が始まる
    ・安静時でも口で呼吸している場合は習慣性口呼吸

2.むし歯予防
 ①ミュータンス菌の感染の窓
  生後19ヶ月~31ヶ月(約1歳半~3歳)
  母親からの「子育て感染」・・・約70%の確率
  2歳児の感染有無がむし歯保有率を左右する
 ②唾液中のミュータンス菌が10万個/ml以上の母親を持つ子供は、
   千個/ml以下の母親に比較して9倍以上の感染の可能性がある
 ③対策
  育児者の口腔内環境を整える
  箸・スプーンの共用を避ける

次回講演   第6回研修会  平成27年7月26日(日)
        横浜市青葉区開業 保育歯科医 元開 富士雄先生

講演Ⅱ
1.なぜ離乳食が必要か
  ①発育段階で必要とする栄養素が変化する
   ・生後6ヶ月頃までは脂質が、脳特に神経細胞を作るために必要
      母乳は非常に脂質が多い
      母乳成分 糖質45% タンパク質7% 脂質48%
   ・生後5ヶ月以降はタンパク質が、筋肉・臓器の発達のために必要
      母乳だけではタンパク質不足に
            1歳児のエネルギー配分 糖質57% タンパク質13% 脂質30%
            3歳児のエネルギー配分 糖質60% タンパク質15% 脂質25%
              (成人も3歳児と同じ)
      *小さな身体の3歳児でも発達のために多くのエネルギーが必要
        総エネルギーは、6ヶ月で680kcal、1歳児で950kcal,
              3歳児で1250kcal、30歳代で1500kcal

  ②消化吸収能力は自然に備わるものではない
    ・生後4ヶ月頃は乳糖分解酵素以外の消化酵素を持っていない
            糖質は吸収できる(乳糖分解酵素)
      母乳のタンパク質や脂質は母親の消化酵素で吸収できる形
         (血液中をめぐっていたもの)
                  (アレルギーを起こさない)
    ・発達段階に合わせて練習し、消化吸収能力を獲得していく
            5~6ヶ月 唾液アミラーゼの分泌が活発
        お粥(米は37%が糖質)→ジャガイモなどの糖質の多い食品
            6~7ヶ月 タンパク質分解酵素「ペプシン」、脂肪分解酵素「膵リパーゼ」
                卵黄、豆腐、白身魚など、タンパク質や脂肪を含む食品

2.消化機能
    ①胃
   ・胃の入口の括約筋が弱いので吐きやすい
   ・胃の容量
     新生児30~50cc → 4ヶ月200cc → 成人1000~1200cc
                 授乳回数が減る
    ②消化酵素
   ・膵臓は離乳食を食べることで訓練されて消化酵素が出るようになる
      (生まれてから1年で、膵臓は7倍、肝臓と腎臓は3倍の重さになる) 
      ・唾液アミラーゼ(5ヶ月頃)  消化できる力は弱い
   ・タンパク質分解酵素(6ヶ月)
      ・脂肪分解酵素(7ヶ月) 膵リパーゼ
      ・胆汁酸(10ヶ月) 脂質を乳化し消化酵素の働きをよくする
      ・膵アミラーゼ(1歳)消化できる力が強い

3.膵臓は消化酵素を作る要
    ・2歳 糖質の消化酵素を大人の70%
    ・3歳 脂肪とタンパク質の消化酵素が大人並みに
    ・4歳 糖質の消化酵素が大人並みに
  *膵臓は4歳頃完成し、インスリンを作れるようになる
    幼児期からの砂糖、ジュース、甘いものは膵臓に負担をかける

4.アレルギー
  *6ヶ月ではタンパク質の消化が悪いので、体質によってはアレルギー反応を起こす
          (卵・牛乳・大豆など)
  *消化酵素の出る時期に合わせて、少しずつ食品の数を増やしていくと
     アレルギーの心配もなくなります
  *3歳になると、食物アレルギーが改善する

抄録
講演Ⅰ 歯科医師からみた口腔機能の獲得について
 近年、食育の大切さが認識されるようになり、食行動そのものが子供達の成長に大きく関わることから食育に対する活動が広まってきました。しかし、歯科領域での食育とはどのようなことを言うのか、何をしなければ行けないのか、口や食に関わっている歯科医師でありながら明言することができません。
 すべての動物は食べることによりエネルギーを作り出し、命を支え、そして次の世代へとその命を継承していきます。その食べるという食行動は、まずお母さんのオッパイを吸うことから始まり、離乳へと続き食べる力を育んでいきます。「生涯にわたってヒトの命を支え続けるのが食であり、生涯にわたって命を育み続ける機能は、乳幼児期にその基礎が育つ」ことになります。歯科領域における食育とは、授乳・離乳期の食の在り方そのものにあるのではないかと考えられます。
 では、乳幼児期に育てなければならない基礎とはどのようなものなのでしょうか?
歯科からみたその基礎とは、ひとつは咬む道具としての「歯牙組織・歯周組織の育成」であり、もうひとつは摂食・嚥下そして消化・吸収へと続く「正常な口腔機能の獲得」と言えます。
 これまで日本の歯科は、むし歯の早期発見・早期治療に重点が置かれ、削る治療が主体でしたか予防が進み乳幼児のむし歯はかなり減少しました。まだまだ十分とは言えないまでも「歯牙組織・歯周組織の育成」においてはずいぶん前から行われてきました。
 しかし、「正常な口腔機能の獲得」については十分に考えられてきたとは言えないように思います。そして正常な口腔機能とはどのような状態であるべきなのかもはっきりしませんが、離乳期に獲得されなければならない口腔機能として『口唇閉鎖の獲得』が重要であると分かってきました。
 何も食べていないリラックスした状態にある安静時は、口腔機能が働いていないように見えますが様々な筋が連携を保ちながら緊張して口腔周囲を支えています。このリラックスした状態では①上下の口唇が閉鎖され②舌は口蓋にくっついて高位置にあり③鼻で呼吸しています。この状態が安静時における正常な口腔機能です。
 しかし、近年、世間では「ポカン口」と言われるような富士山型でしまりのないルーズな上口唇を持ち、リラックス時でも上顎前歯が見えていて習慣的に口呼吸している子供が増えているように感じます。鼻呼吸ではなく絶えず口呼吸している場合を「習慣性口呼吸」と言いますが、日本人の子どもに多くみられ、外国人の子どもには少ないと言われています。日本で起きているこの問題が、現在の日本の育児過程のどこにあるかとすれば授乳期における「添い乳」などのオッパイのあげ方や、離乳時期の『口唇閉鎖の獲得』が関係していると考えられるのです。
 今回は乳幼児期の機能の発達に関わる、授乳の在り方や『口唇閉鎖の獲得』について考えてみたいと思います。
 乳幼児期に口腔機能が正常に獲得できたかそうではなかったかの差が、将来高齢者になった時どのような差になるかは分かりません。しかし、介護される時のスプーンを用いた舌の使い方は、離乳期の口唇と舌の前後的な使い方と似ています。
 口腔機能の発達の理解が深まれば、高齢者や要介護者の口腔機能の低下が、実は乳幼児期に関連していることが明らかになってくるのではないでしょうか。しかし、まだまだ分かっていない点が多くあります。今後は口腔領域だけではなく、扁桃などの耳鼻咽喉科の領域も含めて様々な角度から研究される必要があるのではないでしょうか。

【講師略歴】
長門佐
 1983年 愛知学院大学歯学部卒業
 1983年 名鉄病院勤務
 1989年 金沢市開業
【所属学会等】
 2005年 Oral Physician認定医
 国際外傷歯学会(LADT)
 自家歯牙移植外傷歯学研究会
 日本歯内療法学会
 日本小児歯科学会

講演Ⅱ 口腔機能および消化機能の発達と離乳食
 わたしたち行政栄養士の母子保健分野においては、離乳食の進行を支援するのが、主な仕事です。今回は歯科医師会の先生方との共同事業ということで、月齢を追った口腔機能の発達とそれに合わせた離乳食の形状についてお話しさせて頂こうと考えています。また、離乳食における食材の増やし方、順序においても消化機能、消化酵素の分泌に密接な関わりがあり、人間が雑食の動物として自立できるための過程についても触れていきます。
 近年は情報が氾濫し、離乳食の開始は遅い方がいい、1歳までは母乳だけで十分などという説が保護者を混乱させています。そのような風潮の中でも揺るがないのは、科学的な根拠です。これを元に、乳幼児の発育発達を『見える化』して乳幼児健診を実施している場面をご紹介できればと思います。

【講師略歴】
井沢恵
 平成11年3月  金沢学院短期大学食物栄養学科卒業
 平成11年4月  野々市町役場(現野々市市役所)入庁
                    健康福祉部健康推進課 勤務
 平成16年    管理栄養士取得

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