第2回食育講演会
2007年05月20日(日)
国民的運動「食育」をどう捉え、展開するか
-子どものこころとからだの健康づくりの視点より-
講師 赤坂 守人 氏(日本大学歯学部研究所教授)
日時 2007年5月20日(日) 午前9時30分~12時30分
場所 石川県地場産業振興センター
歯科医師は、もっと地域支援を
「子育て支援」の観点からも
報告者 金沢市木越町
近藤クリニック
近藤政子
五月二十一日、石川県地場産業振興センターで、日本大学歯学部研究所教授、赤坂守人先生を講師に迎え、第二回食育講演会を開催した。
参加者は歯科医師十七名、医師一名、歯科衛生士など医療従事者二十六名、医療技術専門学校の学生七十名など、総勢一二〇名だった。
赤坂先生は、現代社会の子供を取り巻く食生活の変化・問題点を取り上げ、それに対し我々医療従事者が地域で食教育を行うための調査・支援・指導内容などを中心にご講演された。
現代社会は親が共働きであることや、子どもは部活や塾で忙しいことなどから、家族と共に食事をとることが少なくなっている。又、食の知識や技術の不足、食内容・食習慣の変化など、食を取り巻く環境は実に多くの問題を抱えている。それによる子供達の健康課題が大きな問題であることなどを指摘された。
また、歯科関係者は「歯と口の健康つくり」として、何を食教育し、どのように支援すればよいのか。次の三点を主に教育・支援していく必要を述べられた。
1、う蝕・歯周病等の疾患予防を目的とした間食(シュガーコントロール)の食教育・指導。
2、食べる機能(特に咀嚼)の発達支援の食教育・指導。
3、味覚(五感)の発達支援の食教育・指導。
これらの食教育指導を我々医療従事者が地域において行う際は、常に「子育て支援」の観点から健康相談・健康教育を行うことを心がけること。そのためには「支援する」ことの知識と態度の教育を受ける必要があること。さらに、母親などを個人的に責めたり、罪意識をもたせたり、孤立化させない支援を心がけることなどもご指摘いただいた。
今回の講演では、赤坂先生の子ども達を健康に導くことへの情熱を強く感じると共に、我々歯科医師が、いつまでも地域支援の行動に出ない事に対し、どうにかして地域の母親や子どもたちを救うために支援を始めて欲しいという熱い思いを感じた。
保険医協会歯科部会食育プロジェクトも、皆様が地域支援・指導をするために、今回の講演が手助けになることを願っている。
第2回食育講演会
国民的運動「食育」をどう捉え、展開するか
-子どものこころとからだの健康づくりの視点より-
講師 赤坂 守人 氏(日本大学歯学部研究所教授)
日時 2007年5月20日(日) 午前9時30分~12時30分
場所 石川県地場産業振興センター 本館第5研修室
参加対象 歯科医師、医師、医療関係者、介護関係者、教育関係者、
保育関係者、行政関係者 など
参加費 無料
講演抄録 日本大学歯学部研究所教授 赤坂 守人
政府は「食育」を国民運動と位置づけ、現在、「基本法」をもとにして都道府県地方公共団体での具体的な施策が進んでいる。「食」は幅広い分野と関連するため「食育」が目指す方向は、行政・諸団体によってその思惑は様々である。こどもは、「次世代を担い継承する」、「社会の変化によるひずみを最も受け易い」、「生活習慣確立のスタートにある」などという側面を考えると、子どもたちへの支援・指導を重視し、家庭、保育所、学校、地域などへの働きかけが重要である。今日のわが国の物質的豊かさと急速な変化は、子どもたちの生活習慣、とくに食生活・食習慣に影響を及ぼし、こころとからだの健康が深刻な状況にある。
私たちはこの視点を重視し、「食育」を発信していくことが大切である。人間にとっての「食」の原点を振り返り、“よく噛んでおいしく味わい”人とのふれあいを重視する「食」を見直し伝承する。この面で口腔の健康および咀嚼など機能の発達支援が求められている。
<アンケート結果>
参加者:113人
アンケート回収:76人分、回収率:67.3%
(1)あなたの職種について
職種 |
人数 |
% |
歯科医師 |
8人 |
10.6% |
歯科衛生士 |
12人 |
15.8% |
歯科助手 |
3人 |
3.9% |
医師 |
0人 |
0% |
上記以外の医療関係者 (看護師、管理栄養士) |
4人 |
5.3% |
介護関係者 |
0人 |
0% |
教育関係者 |
3人 |
3.9% |
保育関係者 |
2人 |
2.6% |
行政関係者 |
1人 |
1.3% |
学生 (石川医療技術専門学校) |
42人 |
55.3% |
その他 (飲食業・製造販売) |
1人 |
1.3% |
(2)今回の講演で面白かった点は、どんなところですか?
○「食」と生活習慣・食習慣の重要性について
- 「食」というものが、こんなにも生活や健康に関わっているのかと感心しました。(歯科衛生士)
- 「食事は大切だ」とテレビで言われているが、どんなふうに大切なのかということが今日の講演を聞いて分かりました。食と口腔内の関係も深いことを改めて知りました。(歯科衛生士)
- 栄養的なものだけでなく、食べること(咀嚼など)自体も大切なことが分かり、面白かった。(看護師)
- 今まで、食生活のことはあまり考えたことがありませんでしたが、日本が豊かになって私達女性も仕事を当たり前にするようになり、その結果、子ども達に影響が出ている・・・ということについて考えさせられました。普段なにげなく食べている食事についても、こんなに重要な意味があるのだと思いました。(歯科衛生士)
- 共働きが多い現代、多食による個食、ファーストフードによる子どもの生活習慣病が増えているが、食事を少し工夫するだけで違ってくる。少しでも子どもの健康が良くなるなら、患者さんにそれを伝えたいと思った。(歯科衛生士)
- 「食育」は心身ともにとても大事であることを改めて学ぶことができました。子育てにとても良い勉強になるので、参考にしていきたいと思います。最近、家族そろって食事をすることも確かに少なくなっている点も納得で、子どものことを第一に考えて、食事をみんなでとるようにし、楽しい時間であるようにしていけたらと思いました。(歯科衛生士)
- 食にはたくさんの意味があるところが面白いと思った。(学生)
- 食べることの大事さなどが知れて良かった。(学生)
- 朝食と咀嚼の重要性について理解できた。(学生)
- 子どもの生活習慣、生活環境による食生活の課題が分かった。(飲食・製造販売)
- う蝕・歯周疾患は生活習慣と生活履歴に関係するということ。(歯科助手)
- 歯の生え方は乳児の生活が影響することなどを知ることができました。噛む能力の測定についても面白かった。(学生)
- 子どもの頃からの食生活などが非常に重要で、歯や感性の薄さなどに影響していくものだということが分かったこと。昼寝は15~20分が良いというのも、経験上とても理解できた。(学生)
- イオン・スポーツ飲料など各種飲料類は、う蝕を誘発するということを知った。(学生)
- 子どもの夜更かしと「食育」関連について面白く聞いた。(学生)
- 現代の食習慣が全身の健康に影響するということについて、興味をもちました。(学生)
- 食べる機能の発達についての話が面白かったです。(学生)
- おやつの話が面白かった。(学生)
- ○食育の実践、口腔機能の発達支援・指導について
- 今後の食育に対する取組みをいかに展開していくか、歯科医師として何ができるか、どうするかについて学べたこと。(歯科医師)
- 食べる機能の発達について。肥満や、やせの子どもについて。食生活と健康について。(歯科衛生士)
- 「親など大人と一緒に食事する機会が少なくなってきている今の時代である。両親から食事のマナーを躾として伝承すべき。」本当にそうであると思う。そのことはすべてにおいて、子どもの心、身体の発達につながると思います。(教育関係者)
- 食育のなかに味覚教育というものがあり、その内容が今まで聞いたことがなかったので面白かったです。(学生)
- セルフチェックカードなど、とても興味がわきました。(歯科助手)
- 手づかみ食べで色々な体験、経験をすることで、摂食機能が発達し、箸やスプーンなどを上手に使用できるようになるということを知り、手づかみ食べの大切さを知りました。(歯科衛生士)
- 手づかみ食べについて。食べる機能としての発達支援。(保育関係者)
- 手づかみ食べに深い意味があり、重要であること。(学生)
- 親が子どもに対して、食事の教育をしなければならないというところに興味をもちました。親が子どもの食べる姿を観察して、子どもにきちんと食事を教育することが大切だと思いました。(学生)
- 子どもの食事の問題が分かりやすく、これから先、どのように子どもの食を考えてやっていくか、考えさせられました。将来、自分がどのように食育を進めていくべきかが分かり、今日の講演で学んだことを生かしていきたいと思いました。(学生)
- 今まで知らなかった新たな知識を獲得でき、今後につながったと思う。特に「食育」における国としての行政や地方自治体の活動が勉強になった。これから先を見据えた上で、子どもの食育を考えていかなければならないことも勉強になった。(学生)
- 私は今18歳です。昔から虫歯が少ない子どもで、今も歯がきれいなのは、親から歯の磨き方やよく噛んで食べることを教わったからだと分かりました。今日から食事の際にはたくさん噛もうと思いました。(学生)
- 食教育について。(歯科助手)
- 食べる機能の発達支援について。(歯科助手)
- 萌出との関係のところ(スライド32、33)が大変勉強になりました。学校で実際に子どもに話してやれると思います。(教育関係者)
- 離乳食の時期からの味覚教育が大事だということ。(保育関係者)
- 食育と咀嚼や口腔は密接に関わっていること、学校や保育園などで積極的に支援・対策を行っていることが理解できました。大きな疾患を防ぐことにもつながると思うので、今後の学習の上で関連づけて考えていきたいと思った。(学生)
- 味覚教育の話や、朝食の給食について。(学生)
- 口腔機能と公との関わり、子どもの口腔の現状など全般的に分かり、面白かったです。(管理栄養士)
- 現代の食育事情について分かりやすく説明してください、とても勉強になりました。また、子どもの食生活に対する親の姿勢なども知ることができました。(学生)
- 子どもたちのガムの実験や、子どもたちに食事の仕方を教えるための説明が面白かった。(学生)
- ○咀嚼の重要性、咀嚼回数について
- 噛むことの重要性が理解できた。(歯科医師)
- 幅広い分野の内容について知ることができました。これからの乳幼児相談や健康教育にいかせそうです。(行政関係者)
- 食事に対する考え方を今一度、根本的に時代の流れとともに変化に合わせて考えていくことが大切であること。最近はとても多くなっている、水や牛乳やお茶で食べものを流し込む(噛まない)ことは良くない、ということも伝えていかなければならない。(歯科衛生士)
- 食べ物による咀嚼の回数。(学生)
- ものをよく噛むことの意味と大切さを知ったこと。(学生)
- カレーの具の大きさにより、噛む回数が大幅に増えるのには驚いた。(学生)
- 噛むことの重要性をはじめて知った。(学生)
- 咀嚼から全ての臓器へつながっているという話。朝、昼、夜のリズムの大切さ。(学生)
- 噛むことがこんなに大事だと思わなかったので、大切なことが聞けて良かった。(学生)
- 食によって異なる、噛む回数。(学生)
- 食品の咀嚼回数表について、どの食品がどれくらいの柔らかさ、硬さかは視覚でも判断できますが、回数となるとなかなか判断するのも大変だと思います。大体どのくらい噛むのかが一目で判断でき、とても見やすくて良いものだと思いました。(歯科助手)
- ○孤食、個食、ネグレクト等について
- 一緒に食べていても孤食となり得ること、ネグレクト等などを知識として吸収できたことは良かったと思います。(歯科医師)
- 指しゃぶりについて、最近、年齢が少し上の子どもにも見られます。原因としてお母さんが子どもの口封じに使っているということには驚きました。(歯科助手)
- 幼児の虐待と歯科の関係。(歯科衛生士)
- ネグレクトと口腔疾患との関係!!母親への支援の場と方法。(歯科医師)
- 虫歯の数や未治療の歯の数がネグレクトの判断基準となること。(学生)
- 外食・個食の弊害について、詳しく教えていただけて良かったです。(歯科衛生士)
- ○現代における食生活の乱れについて
- 現代の日本が洋食化していく一方で、アメリカ等で日本食が食育に役立っているということが分かりました。日本はどんどん食生活が崩れていっているということも分かりました。フランスで味覚教育が行われている様子などが知れて、面白かったです。(医療関係者)
- 昔と比べてメタボリックシンドロームや生活習慣病がこんなにも増えていて、日本の食の変化が激しかったこと。(学生)
- ○その他
- 乳幼児、学童期の実態をわかりやすくお話していただいたこと。また、「口腔」「食」という二つの切り口から非常に幅広く、奥の深いお話が聞けて良かったです。(教育関係者)
- 先生が、歯科医という立場から食育についてお話をされていて、とても興味深かった。(学生)
- 自分が親の立場になったとき、子どもに充分な愛情をもって接していきたい。今回の講演を聞いて、新しく教えられ、反省すべき点が多々あった。自分が母親になったとき、今日学んだことを是非参考にしたい。(歯科衛生士)
- 子どもの虫歯について。(学生)
- 途中で4コマを入れるところ。(学生)
- 先生の分かりやすい話が良かったです。(学生)
- 学生なので、難しいことや専門用語が分からない部分がたくさんあったが、その分プリントを見て新しい発見ができたのが良かった。「食」というキーワードは何事にもつながるということを知り、色々なことを発見することができた。(学生)
- 改善する点が見つかったこと。(学生)
- 今回、学生の参加をお願いした者です。学生には少し難しかったりする部分もあったかと思いますが、大変丁寧に分かりやすく、大変参考になったと思います。本当にありがとうございました。(管理栄養士)
- プロジェクタも見やすく、これに応じた資料も用意されており、今後の学習の参考にしていきたい。本当にありがとうございました。(教育関係者)
- 教科書的にだけでなく、現実にそくした内容でためになった。(歯科医師)
- (3)今後の食育講演会に期待する点は、どんなところですか?
- ○講演内容について
- 高齢者の食育について。(学生)
- 高齢者の歯や歯に関係する病気、改善すべき食生活など。(学生)
- 食べることと精神面(こころ)との相関関係を交えた講演。(学生)
- 菓子以外の食物と身体への影響について、もっと深く知りたい。(学生)
- 症例をいくつか見せてほしい。(歯科医師)
- 一診療所でどのように対応していけば地域住民に知らせることができるのか。(歯科医師)
- 歯科分野での実際の食育教育の状況。実践しておいでる先生のお話などを取り入れていただけると、より興味深いです。(行政関係者)
- チェアーサイドですぐに使えるような食育指導についての講演を行ってほしい。例えば、3歳でカリエスを主訴に来院した患児の保護者に対する指導など、具体的に。(歯科医師)
- 現在の歯、口腔の状態と、以前(昔)の状態の比較・検討した内容。(管理栄養士)
- 色々な方面でのアドバイス時の話の流れや、問題点がある場合にどのあたりで指摘するか。例えが色々知りたいです。(歯科助手)
- 必要な口腔機能を獲得しないまま学童期に至ってしまった児童とその保護者に、どんな指導・支援をしていけばよいのか、具体的に家庭でできるトレーニングなどがあったら知りたいです。(教育関係者)
- 食育の実践。(学生)
- 具体的な対策案。例えば、噛むことを習慣にするにはどのように食生活を改善すればいいのかなど。(医療関係者)
- 実際に食育を実践していく場合に、具体的な実践内容などを教えてもらえるような講演会を希望します。(歯科衛生士)
- 噛むことの大切さ、栄養面との組み合わせ、具体例や具体的なメニューなど。(歯科衛生士)
- 具体的に調理例やメニューなどを教えていただきたいです。(歯科衛生士)
- 食育を子どもたちにどのように指導するのか知りたいです。(歯科衛生士)
- 子どもだけでなく、私達の年齢の場合についても知りたい。(学生)
- ○参加対象者の拡大、食育の普及について
- 母親を対象とした講演を聞きたい。母親指導をする立場としての講演を聞きたい。(保育関係者)
- 母親学級などで講演すれば良いと思う。(看護師)
- 母親になる前、妊婦さんへの食育講演が必要だと思いました。(歯科衛生士)
- 最近の母親は、正しい食の知識がないので、是非一人でも多くの人に今回の講演内容を広めてほしいと思う。(学生)
- 色んな地域でもこの講演会を広めて、食育の大切さを多くの人に知ってもらいたいと思います。保育所、小学校にも伝わると良いと思います。(歯科衛生士)
- もっと様々なところで講演会を開いてもらい、もっと多くの人々に食育について考えてもらいたいと思います。(学生)
- 食品メーカー、食に関する企業への働きかけ(飲食業・製造販売)
- 医療関係者なども知識は必要ですが、もっと「食育」の重要性を一般の方(独身の方)にも普及していただきたいと思います。(歯科衛生士)
- ○講演会の講師について
- 「食育」を色々な専門職の方々から聞けるのはとても勉強になると思います。様々な分野の方のお話が聞けると良いです。(保育関係者)
- ○その他
- 今の自分達に何かできることがあるのかなど、時間があればもう少し聞いてみたかったです。(学生)
- すべてについて、もっと詳しく知りたい。(学生)
- 生活習慣病の改善に向けて、対策をとってほしい。(学生)
- 手づかみで食べようの感想などを聞きたいと思っています。(学生)
- もう少しゆっくり話してほしい。(学生)
- 子ども(中・高生)などが聞いても理解できるものを。(学生)
- 食育講演会に出席したのが初めてだったので、今回の講演会がどのくらいのものか分からないので期待する点は特にないです。学生という立場からみると、色々な面からみたスライド等があった方が分かりやすかった。(学生)
- (4)今後、食育に関する勉強会が開催されれば参加したいと思いますか?
- 勉強会参加申込人数:23人(30.3%)