小島歯科医院 名誉院長ブログ

口から食べる支援と口腔リハビリ

2024年09月20日(金)


 20日(金)特別養護老人ホーム夕陽ヶ丘苑にて、学習会「「口腔ケアを考える」を開催。レジュメ 第1回口腔ケアの学習会とパワーポイントデータを使用して30分ほど解説。その後約30分、現場での疑問や困りごとなどに対して活発な質疑応答。来春、第2回 口腔状態の観察と本人・家族・介助者の口腔清掃を予定。
 学習会「「口腔ケアを考える」
第1回 口から食べる支援と口腔リハビリ
 講 師   小島歯科医院 名誉医院長 小島登
 日 時   2024年9月20日(金)16:30~17:30 
 会 場   特別養護老人ホーム夕陽ヶ丘苑
 参加者   看護師2名、介護士17名

質問
A.舌苔の清掃について

   舌苔とは、上皮組織や白血球および大量の細菌が苔状に堆積したもの。
   雪が積もったような状態ではなく、体調が悪くなると舌乳頭が伸びて、
    そこに白色ブドウ球菌が付着すると白くなり、
    黄色ブドウ球菌が増えると黄色くなる
   口臭の原因となる
 【舌苔ケア】
  ・舌粘膜を傷つけないよう留意する
    1回ですべてを除去しようとはせずに、日数をかけて少しずつ行う
  ・堆積した舌苔を軟化させ除去を容易にする
    10 ~ 20 倍に希釈したオキシドール溶液、白ゴマ油や保湿剤などを使用する
 【カピカピの舌苔の対応】 コツは「ふやかしてから取る」
    《有機物溶解作用のある薬剤で溶解する》
   1)オキシドール
     刺激のない濃度に希釈して使用(2 ~ 10 倍希釈)。
     2~3分の浸漬で痂皮は除去しやすくなる  
   2)重曹水
     2 ~ 3% の重曹水で舌苔を浸漬、融解
     含嗽薬のハチアズレにも重曹が含まれている
     分厚い舌苔は1回では除去せず、数日に分けて除去する
 B.片麻痺の方の流涎(よだれ)の対処について
   できるだけ早く、医師に相談する
 後日診察
  ①脳血管障害の患者さん
   とろみ付き麦茶で食べる様子を確認→左口角からの流涎はわずか、許容範囲内
   食べる意欲あり、発話なし、むせなし
   嚥下機能に著しい問題なし、食べる意欲あり、発話なし、むせなし
   リクライニング車椅子の背もたれの角度を調整する
   肺炎の既往あり、胃ろうを造設したが、現在は外している
   口腔ケアをすると、笑みを浮かべる
  ②脳血管障害の患者さん
   流涎あり、発話なし、舌の送り込みが困難
   意思の疎通ができず、舌の訓練困難
   食事、口腔ケア時の姿勢を確認
   スプーン介助のやりかたを工夫

 参考に
流涎(よだれ)が多い人の場合
 流涎は、唾液分泌過多によるものではく、原因は飲み込みの悪さ。
 上手に飲み込むことができず、口腔にたまった唾液がもれ出ていることが多い。
 口腔ケアを行うときも唾液の誤嚥に配慮した姿勢や工夫が必要。
 【高齢者への介護のポイント】
www.tsukui-staff.net/kaigo-garden/howto/drooling-worries/
  ①口のまわりの筋力トレーニング
   ・「パタカラ体操」や「あいうべ体操」を日々の介護に取り入れる
     「パ」「タ」「カ」「ラ」の4文字を発声するだけの「パタカラ体操」
     「あ」「い」「う」「べ」を発声する「あいうべ体操」
   ・頬や舌、唇をやさしく刺激するマッサージ
  ②「誤嚥性肺炎」に注意
   ・誤嚥しないような食事メニューに工夫
   ・食べるときの姿勢は、上向きではなく前かがみになるように気をつける
  ③明るく声かけを
   ・気持ちが晴れるように、声のトーンや表情もできるだけ明るく
 参考に
 経口摂取実現のための実践的スキル
kojima-dental-office.net/20110925-7768#more-7768
  C.その他
   ・イソジンガーグルによる歯の着色について
   ・無歯顎の方の口腔内清掃について

アンケート
 【内容について】
    参考になった     14
    普通 0
    理解できなかった 0
 【感想、意見、質問等をご記入ください】
・改めて口腔ケアの重要性に気付けました。
 少しでも長くご自身で美味しく食事を摂ることができるようにケアしていきたいです。
・高齢者(特に入所されている方)の一番の楽しみは、なんと言っても食べることであり、
  そのための口腔ケア・リハビリは、施設職員としてすごく大切なことである
  と改めて考えさせられる講義でした。
 また、講義の中で普段すぐにできる口腔リハビリ“ベロをまるめる”“ベロを出す”、
  風船、ストローなど実践していけば、入所者さんの食べる機能を
  少しでも維持できることを学習しました。
・良い話ばかりだったので、時間短縮ではなくしっかりと聞きたかった。
  できればもう一度詳しく通常の時間で学習会を行って欲しいです。
・今回の研修に参加、先生の話を伺い、とても勉強になりました。
 ケアをしている方の中には、常に口を開けていて口の中が乾燥する方もいます。
  保湿剤を塗るなどの対応方法を聞き、なるほどと思いました。
 普段の仕事は忙しいですが、口腔体操ができる方もいるので、
  時間のあるときに取り入れたいと思います。
・PCトラブルでスタートが遅れ、夜勤のため途中退室になってしまい、
  最後まで聞くことができず残念でした。
 口腔内の環境の大切さを再認識することができ、日々のケアに役立てたいと思う。
・清潔だけではなく、食欲アップにも非常に効果があると分かりました。
 全部を通してとても興味深く聞けました。
・口腔内の状況で食べる能力が左右してくるので、総合的なケアが必要。
 利用者さんの状態に合わせた支援をすることで、
  少しでも長く食べることを維持していけたらいいなと思いました。
  そのためには、先ず利用者さん各々の特性を理解することが大切だし、
  その特性を介助者全員で共有し、
  支援を続けていくことができる流れを作ることができればいいなと思いました。
・口腔ケアで咀嚼力を上げて、より良く口から食事を摂れるようにしてあげたいです。
 嚥下時の姿勢と口唇の刺激が大事
 スキンシップと話しかけを意識する
 口腔ケアで口から食べることや嚥下を向上させる
 色々試してみる。口腔機能回復を目指す。
・プラークと食物残渣の違いが分かった
 入れ歯の必要性を改めて実感しました。
  上の入れ歯を入れるだけでも唾を吞み込みやすくすること
 嚥下体操やマッサージなどを積極的に取り入れていきたいと思いました
 食事の際もしっかり声かけして姿勢を整えてから摂取することを心がける。
 これからも1人と1人に応じて
  的確な摂取方法、口腔方法を考えていけたらいいなと思いました。 
・普段なにげにやっていたことが、「こうゆう理由だ」と知らずに行っていた。
  それを知ることができて良かった。
 すぐに改善できることも多く、取り入れていきたいと思った。
・舌を口唇より前に出せない人は、下の総義歯を使えない。
  舌が上下、左右に動くようになってから
 舌の大切さが分かった。舌の体操をもっと聞いてみたいです。
・明日から実行できることが多く、有益でした。
 座席の配置を考える
・利用者様の様子を思い浮かべながら、具体的に実施していこうと思いました。
 今まで気にしていなかったことも気付ける機会になりました。
・奥歯をしっかり噛めなかったら、横からしか起きられないのは勉強になった。
 食べていなくても口腔ケアをする
 入れ歯や姿勢などが勉強になりました
・プラークと食物残渣の違いにリハビリが関わっていると
  思っていなかったので知れて良かったです

施設側からの要望
〈目的〉
 ・基礎的な知識の再確認、新たな知識、技術を習得し適切な口腔ケアを行えるようになりたい。
 ・職員が口腔状態について関心を持ち、知識と意識の向上を図りたい。

〈課題〉
 ・誤嚥性肺炎の予防における「口腔ケア」の役割について
 ・誤嚥性肺炎のリスクを減らす口腔ケアのポイント
 ・嚥下機能を鍛えるトレーニング方法、唾液分泌を促す方法について

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