小島歯科医院 名誉院長ブログ

経口摂取実現のための実践的スキル

2011年09月25日(日)


講師 東名厚木病院看護師 小山珠美氏 こやまたまみ
 メモ
 入院したその日から摂食嚥下療法部が介入する。担当ナースの手を借り、様々な管をかいくぐりながらも口腔ケアを行い、翌日には評価後頸部聴診しながらゼリーを食べさせていたことが衝撃だった。倒れる前までは口から食べていたのだから、摂食嚥下に問題なければ食べさせる。病気が落ち着くまで待っていたら、食べる機能は衰えてしまう。思いやりの心と食べてもらいたいという情熱に感銘を受ける。口から食べられる可能性のある人が、ひとりでも多く絶食から離脱できるように協力していきたいと思う。
 参考に
 第15回金沢・在宅NST研究会 2011年12月22日(木)
kojima-dental-office.net/20111222-1228#more-1228
1.食べていない患者さんが溢れている
  胃瘻栄養の進歩に伴い、口から食べてもらう努力をしなくなっている医療従事者が増えてきているように思う。食べる機能は毎日使わなければ衰え、1週間使わないと20%も低下する。
 口から食べられる可能性ある生活者に、2回目の肺炎で、誤嚥性肺炎のリスクが高い、食べさせるマンパワーが足りない、評価や訓練せずに肺炎を起こしたというだけで、食べさせる努力をせずに、絶食が本当に必要なのか。
 ナイチンゲール看護覚え書には、「『食べものを食べる』という営みは、呼吸の営みと並んで、生命活動維持の根幹である」と書かれている。

2.急性期に「口から食べるリハビリ」を挑む
 何とかしたいと思っている医師や看護師、栄養士、リハスタッフが大勢いる。その多職種が集まり、協働型の摂食・嚥下チームを結成した。可能性を見出すプロの目を持ち、リスクを承知で前に向かって進む。院長はじめ周囲の理解を得て、摂食嚥下療法部へ格上げになる。
 球麻痺タイプの重度嚥下障害でも、時間はかかるが経口摂取に移行できると臨床経験上確信していた。
 【摂食嚥下療法部の主な取り組み】
www.tomei.or.jp/hospital/seshokuenge/
 ①入院患者
  ・入院時、翌日より摂食機能療法開始
  ・365日モニタリング
 ②外来・往診
  ・外来(水曜日午後)
  ・往診医と連携で同行
 ③地域連携
  ・退院時連携調整
  ・地域参加型勉強会
  ・病院、施設での勉強会
 ④教育評価
  ・摂食・嚥下評価教育
  ・入院クリニカルパス

3.急性期病院での摂食・嚥下リハビリテーションの進め方
 入院日より直ちに、適切な診断と治療を開始し、摂食嚥下療法部が介入する。治療、ケア、リハビリを同時進行させることが大切。可能な限り早期に、入院前の日常生活に近づける努力をする。

4.誤嚥性肺炎の予防と対処
 ①加齢とともに誤嚥は起こる
   高齢者が誤嚥性肺炎になるのは、耳が遠くなる、足腰が弱くなると同じ
 ②予防しても避けられない誤嚥
   肺炎は食べて治す
   予防に留意しながら、肺炎になったら早く治療し、食べるリハビリをする

5.ベッドサイド評価と段階的摂食・嚥下リハビリテーション
 ①評価前に整えておくべきこと
   口腔ケアの徹底と気道のクリアランス
 ②評価方法
  ・反復唾液嚥下テスト、改定水飲みテスト、フードテスト、染色水テスト
  ・頸部聴診法
  ・ゼリーでの評価方法  スプーンに山盛りにせず、擦り切りいっぱいの1回量で
    見せる→舌上に接地→口唇閉鎖→スプーンをひく
  ・嚥下造影検査
    どうしたらできるかを手助けする
  ・頭部CT画像
    ダメージを受けていない部位から可能性を探る

 ③摂食訓練のポイント
  単一の職種だけではなく、多職種を連携することで、早期に経口摂取を獲得することができる。基礎訓練と摂食訓練を組み合わせてセルフケア拡大による自力摂取へ。
 【摂食訓練を開始できる状態にする】
    ・病状の進行がなく、意識レベルⅡ-10以上
    ・口腔内の環境を整える(口腔ケア、基礎訓練)
    ・覚醒を促す
    ・離床の準備をする
 【留意点】
   ・安全な環境、安定した姿勢、食形態の選択、摂食用具の選定、認知機能の向上、
    段階的摂食機能の向上、QOL向上への援助
 【基礎訓練】
  ・先行期に対する訓練  認知機能や動作性を高める
    離床訓練、ベッド状でのポジショニングの調整、手に食べものを持って・見る
  ・準備期・口腔期に対する訓練
    他動的に行い、徐々に随意的な自動運動へ移行させる
    口輪筋のストレッチ、巻き笛を用いたブローイング
  ・咽頭期に対する訓練 簡易性に留意する
    冷圧刺激、バルン訓練
6.食事介助は高度な看護技術
 看護の技術によって経口摂取が可能に
【摂食・嚥下リハビリテーションの知識とスキル】
  ①全身の医療的な管理とケア
  ②総合した身体ケアの知識と技術
  ③チームアプローチによる多職種との協議・連携
     食事開始時間をずらして食事介助
 【食事介助の基本】
 食べものや介助を可視化する
 スプーンを舌のどこに置き、口唇閉鎖をどのようにさせるか
 ①枕やバスタオルを使用し、頸部前屈と頭頸部の安定を図る
 ②両上肢を安定させるために、テーブルを設置
 ③足底を床につける
 ④正面から捕食できるように介助者は左手で(横からスプーンが来ないように)
  (患者の左側で介助する場合は左手、右側の時は右手で)
 *寝た姿勢での「吸い飲み」使用は禁忌
   一口量が分からない
   勢いよく入りすぎる

参考図書
  実践版   カラー写真で良く分かる
「早期経口摂取実現とQOLのための摂食・嚥下リハビリテーッション」
     =急性期から「食べたい」を支援するために=
執筆 東名厚木病院 摂食・嚥下チーム
監修 小山珠美 (同病院 摂食・嚥下療法部課長)
メディカルレビュー社 税込3000円 2010年8月発行

医師とコ・メディカルのための講演会2 0 1 1
経口摂取実現のための実践的スキル
●講師 東名厚木病院看護師 小山珠美氏 こやまたまみ
●とき 2011年9月25日(日)午後1時~3時
●ところ 金沢都ホテル5階「加賀の間」
  ※金沢駅東口正面( 076-261-2111 )
●定員 100人(定員に達し次第、締め切らせていただきます)
●参加費 500円(会場受付にて徴収させていただきます)
●主催 石川県保険医協会/学術・保険部
 たくさんの参加をお待ちします
 石川県保険医協会の人気シリーズ「医師とコ・メディカルのための講演会」、今年は東名厚木病院(神奈川県厚木市)摂食嚥下療法部課長の小山珠美氏をお招きします。
 昨今、口から食べられるように支援する「摂食・嚥下リハビリテーション」は、その重要性から関心が高まっています。小山珠美氏は、急性期医療の現場で摂食・嚥下リハの専任看護師として実践・教育活動にあたっておられ、口から安全においしく食べ続けられる患者さんが増えることを願って、一人でも多くの関係者に技術を伝え、「人として食べる」ことを全国的に支援されています。
 摂食・嚥下リハの実施にはチーム医療が不可欠で、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士など、患者さんにかかわるすべてのスタッフが常に情報を共有する必要があります。外来・在宅・施設の現場で、医師とコ・メディカルが共有できる貴重な勉強の場になることを確信して、皆さまのご参加をお待ちしております。
 すべての医療職・介護職の皆さまに、参加をおすすめします。
(石川県保険医協会/学術・保険部)
●申し込み;下記を明記して保険医協会までFAXまたはE-mailで
(医療機関・施設・勤務先名、申し込み代表者氏名、参加人数、電話番号、職種を記載してください)
裏面にFAX用参加申込用紙があります
主催/ 石川県保険医協会
電話;076(222)5373 ◇FAX;076(231)5156
◇E-mail;iskw_sugino@doc-net.or.jp

報告記事
医師とコ・メディカルのための講演会2011「経口摂取実現のための実践的スキル」
 理事 小川 滋彦(金沢市・内科)
 九月二十五日金沢都ホテルにおいて、小山珠美氏(東名厚木病院看護師)による「経口摂取実現のための実践的スキル」と題する医師とコ・メディカルのための講演会が開催され、百名近くの参加者があった。小山氏は、急性期病院において摂食嚥下療法部を立ち上げ、超急性期から患者の「食べる」可能性を追求し、気管切開や人工呼吸器をしていても、一見無謀とも思われる「食べる」ための挑戦を実践し、結果を出している。つまり、絶食期間を最大限短くすることによって、患者のADLを落とさないまま、もとの生活者として後方施設や在宅に送り出している。その結果、在院日数は減り、廃用は減り、胃瘻は減り、何よりも患者から感謝されている。もし、急性期病院で無意味な絶食による廃用や寝かせきりを作ってしまったら、その状態でバトンタッチされた後方施設や在宅で立ち直らせることは至難のわざである。「食べること」がADL向上のための最高の取り組みである。地域において、この共通の理念を持つことは、地域医療の大きな底上げにつながるであろう。
 今回は、二○○五年のシンポジウム「食を考える」以来、六年ぶりに摂食・嚥下リハビリテーションを取り上げたが、急性期病院から在宅・施設までの「多施設」、医師・歯科医師、歯科衛生士、看護師、OT・PT・ST、栄養士から介護職までの「多職種」、能登から加賀までの「多地域」から、各分野の熱心な方々が重層的に集う結果となった。このことは、「食べる」ということがいかに地域連携・多職種連携の起爆剤になるかを示しており、協会は今後もこのテーマを広げて深める企画を続けていきたい。

 

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