小島歯科医院 名誉院長ブログ

ケアハウス白帆台

2016年08月02日(火)


ケアハウス白帆台2 8月2日(火)1時半から3時半までケアハウス白帆台にて「基礎講習会 口腔ケアを考える」を開催し、ケアマネージャー、看護師、栄養士、相談員、介護職員11名が参加しました。レジュメに添ってパワーポイントデータを見ながら解説しました。途中の相互実習も和気あいあいと楽しく行いました。質問も多く、充実した会となり、共通理解が深まりました。今後さらに利用者さんのために協力していきたいと思います。

 

基礎講習会 口腔ケアを考える
講師  小島歯科医院 院長 小島登
日時   平成28年8月2日(火)13:30~15:30 
会場   ケアハウス白帆台
siraho.com/siraho/

参加職種
ケアマネージャー   1名
看護師        1名
栄養士        1名
相談員        1名
介護職員       7名
計         11名

レジュメ
 はじめに 口腔ケアとは
  1.本人・家族・介助者の口腔清掃
      うがい、歯磨き、義歯の清掃、粘膜・舌の清掃
  2.歯科衛生士による専門的な口腔ケア
   ①治療的なクリーニング(器質的な口腔ケア)
   ②口腔機能回復(機能的口腔ケア)
      リラクゼーション(脱感作)、口腔周囲筋の運動訓練、
      咳嗽(せき払い)訓練、嚥下促進訓練、発音・構音訓練 
 【口腔ケアの効果】
  1.誤嚥性肺炎のリスク回避
  2.風邪・インフルエンザのリスク回避
  3.食べる意欲の改善
  4.栄養状態の改善(MNAスコア)
  5.認知症予防
A.口腔内状態と口腔機能
 【ポイント】
   ・プラークと食物残渣は違う。
      前者は清掃の問題、後者はリハビリ。
   ・麻痺側、使わない方が汚れる
      口から食べていない経管栄養の方が汚れる
      食べなくても清掃する
   ・うがいができるかどうかは口腔ケアの難易度の大きな目安
   ・下唇がスイッチ、上唇が1回量
   ・胃ろうでも誤嚥性肺炎は起きる
      唾液は呑みこんでいる
   ・舌を口唇より前に出せない人は、下の総義歯を使えない
   ・入れ歯の効果
     上の入れ歯入れるだけ唾を呑み込みやすくなる
     入れ歯を上下入れて奥歯がしっかり咬めると、
      お腹に力が入り上体を起こしやすい
  a.歯肉
   1.歯肉炎
   2.歯周炎
     ①腎疾患
     ②糖尿病
  b.舌
   ・舌苔は積もった状態ではなく、舌乳頭が伸びてブドウ球菌が付着したもの
   ・地図状舌 ストレス
   ・舌静脈  
  c.口臭
   ・朝起きた時は誰でも口臭があるが、食事をすれば消える。唾液で洗い流される。
  d.口腔乾燥
   ・安静時唾液分泌は低下するが、刺激時唾液は変わらない
   ・しっかり咬めれば唾液は減らない
   ・加齢によって味細胞は減らない
   ・唾液分泌によって味刺激を可能とし、味覚により唾液分泌を促す
  e.口腔機能
    ・舌打ち、舌による口蓋の海苔剥がしなど
    ・ぶくぶく、ごろごろのうがい
    ・パタカの発声やアウベ体操
    ・食事時の姿勢
B.相互実習  2人一組
C.日頃の口腔ケアを適切に行うポイント
 a.本人(介護者)が行うセルフケア
   ・誤嚥させない
   ・口腔ケアはできるだけ痛くないように気持ちよく
   ・保湿が大切(特に口唇)オーラルバランス等を利用する
   ・前歯部は鋭敏なので奧から歯ブラシを当てる
 b.ケアしやすい姿勢と高さ
   ・座位が取れる方はその姿勢で
   ・ベットの方は背中を30~60度ぐらい少しずつ上げ、
     膝を軽く曲げ、身体が足元へずれていかないように工夫する
   ・全くの寝たきりの方で、ヘッドアップに危険性があり水平位で
     行う場合は誤嚥に特に注意し、健側を下にする
   ・術者の腰に負担のかからないように高さを調整する
 c.歯科医師、歯科衛生士が行う専門的口腔ケア
 d.口腔ケアグッズ
   口角鈎
 e.口腔ケアに伴うリスクの管理
    奧から手前への清掃が基本
    誤嚥を防ぐために姿勢が大切。口の健常側を下にする
    舌の観察 舌苔、地図状舌、舌下部静脈
    誤嚥は始めに起こりやすいので、10分以上前から口腔ケアの体勢を整えておく
    食後30分ほど座位を保つ 直ぐに寝かせない

 D.口から食べる支援と口腔リハビリ
  a.誤嚥性肺炎
   1.原因が食品なのか唾液なのかを区別する
   2.唾液誤嚥
     ・嚥下運動はほぼ咽頭粘膜の反射
     ・   口腔ケアにより衛生状態を改善(対症療法)
         末梢刺激による機能回復への期待      冷水刺激
   3.食物誤嚥
     ・嚥下筋の筋力・緊張低下
     ・咀嚼力の回復は嚥下力の回復ももたらす
   4.嚥下と呼吸の協調性低下
    ①口呼吸になると誤嚥の問題が生じる
    ②呼吸が速く、嚥下に時間がかかるので、
  b.口の働きの発達
   アイコンタクト(スキンシップと話しかけ)が必要
    ・口腔の過敏さを除去しないと、
      スムーズな感覚入力と緊張のない筋肉運動ができない
    ・優しく全身を触ることで、情報が入りやすい体と心が形成される
   1.原始感覚系 → 識別感覚系
   2.反射的な運動 → 随意運動
   3.固有感覚
  c.口から食べるために
   1.要介護者の食生活
    ・むせや誤嚥がないかチェックする
    ・食べていた頃のように介助・工夫する
    ・下唇がスイッチ、上唇が1回量、口を閉じて嚥下する
    ・目を閉じて食べさせてもらうと、介助の仕方がよく分かる
    ・みじん切りはばらけて食べにくい
    ・唾液が少ないとまとまらない
    ・ほんの少し痛くても食べなくなる
      義歯の調整や修理
    ・上の前歯があるだけで食べやすくなる
   2.姿勢を整える
    ①上肢を使用できる安定した座位姿勢
    ②頭頸部が軽度に前屈
   3.口を閉じて嚥下する
    ・上唇を育てる ストロー→ コップ飲み、風船の膨らまし
    ・上顎前歯があれば上唇の筋は鍛えられる
      上顎だけでも義歯を入れる。
      舌が上下、左右に動くようになってから下顎の義歯を作る

最後に 重点対象者の診察と個々の歯科治療や口腔ケア計画の立案
     ①お口のトラブルがある(歯が痛い、入れ歯が合わない)
    ②口臭や舌苔、歯肉からの出血がひどくなってきた
    ③食物残渣が増えてきた、口腔内に麻痺がある
    ④うがいができない、経管栄養の方
    ⑤微熱を繰り返す、むせがひどい、呑みこみづらくなる
    ⑥食欲がない、体重が減少してきた
    ⑦入所間もない方

 

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