下顎総義歯を誤飲、自然排泄
2022年04月23日(土)
施設から義歯を飲み込んだとの報告があり、それに対する相談があった。義歯が声門を超えて気管に侵入する誤嚥の報告例はなく、総義歯の誤飲も非常に少ないことと、さらに珍しい症例を報告する傾向にあるため,自然排泄例が少なないことも伝えた。そして、体調を観察し異常があれば、高齢医学科へ受診するようにアドバイスした。
22日後に自然排泄したとの報告があり、今後の対応ついて相談があった。3日後に訪問して全身状態や口腔内を診察した。少し難聴はあるが、意思疎通は可能であった。食事もしっかりとれて元気だった。義歯が口腔内に比べて上下顎ともかなり小さかった。訴えを聞き入れて昔通っていた歯科医師がかなり削ったと思われる。再度飲み込むリスクがあるので、使用していた義歯は使わないこととした。今まで使っていた義歯よりも大きな、口腔内に適応した新しい義歯を作製するのか、このまま義歯を装着せずに過ごすのか考えてもらうことになった。また、今後、全ての入居者に定期的な歯科健診を勧めた。
一番の原因は極端に小さい義歯だったこと。しっかりと噛んでいなかったことも一因だと思う。認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲa、意思疎通の困難さも。
何かの拍子が重なっても、なかなか飲み込めないと思う。それにしても飲み込む力もあったんだろう。
これから飲み込むリスクがあるからとみんなを入れ歯なしで食事することだけはやめてほしい。しっかり定期健診をするけれども100%のリスク回避はできない。入れ歯を外すデメリットと入れて食べるメリットを十分に理解してもらう必要がある。
参考に
日常生活で起こる可撤性義歯の誤飲
www.jstage.jst.go.jp/article/jsg/27/2/27_121/_pdf
下山 和弘 東京医科歯科大学歯学部
老年歯学 第 27巻 第2号 2012
症例
95歳女性
脳血管疾患、肺血栓塞栓症後、てんかん
要介護5、日常生活自立度 Ⅲa、寝たきり度 B2
認知症高齢者の日常生活自立度
info.ninchisho.net/care/c140
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)
www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-hoken/shougai-jiritsu.html
令和4年
3/28
夕食中に胸あたりを手で押さえ急に苦しみ、「入れ歯を飲み込んだ」と訴えた。
一度嘔吐したが、その中に義歯はなかった。
食事前に上下義歯の装着を確認していた。
上顎は装着していたが、下顎総義歯は口の中にも辺りにも無かった。
しばらくすると落ち着いたが、その後食べなくなった。
3/29
X-rayにて確認したが義歯は見つからなかった。
特に変わった様子無く、下剤を内服して健康観察する。
朝食より全粥、みじん菜から全粥、ソフト菜に変更。
いつもと変わらずしっかり食べている。
当院に対応策を相談する。
4/19
便と共に義歯が排出する。出血などの異常は無かった。
全粥、ソフト菜を継続する。
当院への報告と今後の相談をする。
4/22
訪問して、本人の全身状態や口腔内を観察する。
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