小島歯科医院 名誉院長ブログ

介護保険と口腔ケア

2013年07月20日(土)


 これまで歯科医療は無歯顎の模型から若い人でも、左側麻痺の人でも同じ総義歯を作ってきた。義歯を作るだけで、食べるところまで診て帰える生活支援の歯科医療をしてこなかった。目に見える範囲の対応だけで、もっと深い人間性に触れてこなかった。
 口腔の状態や問題からダメ-ジを理解し、軽減する関わりを「口腔ケア」と言う。歯が痛いから食べられない。そうすると食べる意欲も減退し、ADLも低下する。そして、起きる意欲もなくなり、さらに痴呆がひどくなる。要するに全身のダメ-ジの原因が口であれば、それはすべて「口腔ケア」として対応しなければならない。口腔の対応のみではない。心理的な対応も含まれてくる。「何も食べたくない。」という場合も「口腔ケア」の関わりが出てくる。介護の現場では「口から食べたい、食べさせたい」と言う患者さんとその家族の強いニ-ズに直面している。口から食べることにより、目を見張るほど元気になっていく。人間の感覚のすばらしさに感動する。
 食事のあとに食べかすが残る。若い人の汚れとは違う。食べ物そのものが残っている。綺麗にしてあげることだけが「口腔ケア」ではない。何処に問題があるのか。ニ-ス゛を発見し、綺麗にする能力を身につけることが目的となる。
 口腔ケアがもたらす全身の回復力と食の回復が導く人間性の回復を伝えていきたい。

 

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