慢性疾患としての歯周病と糖尿病に関する新知見
2013年02月17日(日)
『糖尿病と歯周病に関するセミナー』
1.医科的立場から 愛知学院大学歯学部内科学講座教授
松原 達昭 先生
2.歯科的立場から 愛知学院大学歯学部歯周病学講座教授
野口 俊英 先生
日時 平成25年2月17日(日) 午前9時30分~午後12時30分
場所 石川県歯科医師会館
参加対象 医師・歯科医師・歯科衛生士・コメディカル・コデンタル
主催 金沢市歯科医師会
参考に
糖尿病あるいは腎疾患を有する患者の歯周治療
kojima-dental-office.net/19991120-733#more-733
17日(日)午前9時30分から石川県歯科医師会館にて、金沢市医師会と金沢市歯科医師会との連携事業として『糖尿病と歯周病に関するセミナー』が開かれました。愛知学院大学歯学部内科学講座 松原達昭教授が医科的立場から、同大歯周病学講座 野口俊英教授が歯科的立場から「慢性疾患としての歯周病と糖尿病に関する新知見」についてお話しされました。会場には熱心な歯科医師・歯科衛生士が多数参加していました。
メモ
1.HbA1cが国際標準化に伴い、0.4ほど上がる
・HbA1cは赤血球寿命と関係しているので、
出血、鉄欠乏貧血の回復期、溶血性疾患や肝硬変などで低値を取る。
・血糖コントロールが「可」以下になると、網膜症が増える
②歯周病が重症であるほど血糖コントロールは不良となり、
歯周組織の慢性炎症が改善すると、インスリン抵抗性が軽減し、
血糖コントロール状態も改善する
⑥歯周病が動脈硬化の頻度を高くする
3.微小炎症と歯周炎
・歯周炎患者において血清CRP値が高い結果が得られ、
歯周治療によって改善がみられた
参考に
www.shien.co.jp/book/sample/s1/6206/index.html#page=6
抄録
慢性疾患としての歯周病と糖尿病に関する新知見
ー医科的立場からー
愛知学院大学歯学部内科学講座 松原 達昭
糖尿病とは、インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群と定義されますが、糖尿病治療の目的は、糖尿病合併症の発症予防と進展阻止にあります。長時間持続する高血糖・脂質異常症を含む代謝障害と、高血圧などの血管障害因子によって起こる全身の血管を中心とした組織の変性・機能喪失が慢性合併症の本態ですが、細小血管症に分類される網膜症、腎症、神経障害と、大血管症に分類される脳卒中、心筋梗塞・狭心症、糖尿病足病変が重視されています。これらは、患者の機能予後、生命予後の規定因子となるからです。
さらに、糖尿病慢性合併症として歯周病が問題となっています。糖尿病患者は慢性感染症に罹りやすく、その感染症が重篤化することが少なくありません。歯周病も例外ではなく、この機序として、高血糖に伴う好中球機能の低下、蛋白の糖化などが考えられています。一方では、歯周病が糖尿病の血糖コントロールを悪化させるという長期観察研究が報告されており、また、糖尿病患者に抗菌薬などを用いて歯周病治療を行うことにより血糖コントロールが改善したという研究成績も散見されます。歯周病の病巣には多くの嫌気性菌が生息しており、生体は慢性的な炎症状態に置かれていることになります。近年、動脈硬化の発症・進展には炎症反応の持続が密接に関与すると考えられ、歯周病が動脈硬化に影響を及ぼすことが報告されています。
このように、歯周病と糖尿病は双方向に関連を有することが示唆され、動脈硬化進展を助長する両疾患は、生命の質や生命予後にも大きな影響を与えることとなります。医科においてもこのような点を念頭において糖尿病の診療にあたることが重要と考えられます。
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