「貴方はどうする?」 歯周病の原因菌はカンジダ菌
1999年07月15日(木)
緊急サタデイナイト
歯科の奇論 『歯周病の原因はカンジダ菌! ファンギゾンシロップで治癒?』
は 『 西田先生の指導で決着』
講師 西田小児科医院 院長 西田 直巳 先生
日時 1999年7月15日(木) 夜8時
会場 石川県保険医協会会議室
参加費 会員 無料 非会員 3000円
資料代 1000円
平田米里 記 石川保険医新聞 9月15日
1998.3月・デンタルダイヤモンド誌の読者サロンにて、神奈川県開業の河北 正先生が「歯周病の原因菌の一考察」なる文章を発表しました。すべての歯周病はカンジダ菌の単独感染ではないとしながらも、ハッキリと歯周病はカンジダ菌の口腔カンジダ症と診断できると断定しています。また、虫歯と歯周病はカンジダ菌が関係して発生する疾患と思われます とまで述べています。この影響からでしょうか、熊本県歯科医師会 生田図南先生が新歯周病論をインターネットや講習会で広め始めました。それが、1999.6.9朝日新聞に掲載され、現在200人の歯科医が抗カビ剤治療に取り組んでいる。日米共同研究の運びになっているとまで書かれたから、その影響は少なくありませんでした。翌日から、全国の薬問屋にアムホテリシンBの注文が殺到するという事態になった訳であります。正しい情報を迅速に伝える事をモットーにしている協会としては、石川県においても、歯科会員の中では、混乱、疑心暗鬼の状態の方が多いのではないかと推察し、今回の企画をしました。
当日は、平日の夜にもかかわらず、協会会議室一杯の歯科医であふれました。関心の高さが窺い知れます。無理も有りません。もしも本当なら、歯科版地動説とも言える程の内容なのです。
このセミナーの目的はカンジダ菌そのものを知る事 とファンギゾンシロップを正しく理解する事でした。しかし、さらに、口腔内の 唾液中、歯肉縁下・縁上における形態を知るために顕微鏡で見てもらおうと考えました。 位相差顕微鏡も用意し生きた状態のプラークもみていただいて、本当にカンジダ菌がいるのか確認する事でも有りました。ところが、ほとんどの歯科医は、実際に顕微鏡でカンジダ菌をみた事がない、知らないのです。そこで、この方面にも詳しい保険医協会の至宝である西田直巳先生に講師をお願いし、我々歯科医の疑問に解決の糸口を与えて下さるように指導していただきました。
結論を申し上げると、生田図南先生は『400倍の位相差顕微鏡で観察するとプラーク全体がカンジダアルビカンスである事に驚かされます。紐のように見える細菌は全て、糸状菌と言う事になっていて、ここにすべての過ちが有ったのではないか。』と述べています。 逆に、まさにここが生田図南先生の過ちであった事が分かりました。カンジダ菌はあまりにも大きい!その直径は赤血球ほどもあり、長さも、充分成長した状態では画面からはみ出すくらい長い。100ミクロンをこえる。
多分、生田図南先生は、Corynebacterium matruchotii , Rothia dentocariosa 、 Propionibacterium acnes 、Fusobacterium nucleatum等の線状、棒状菌とカンジダ菌を間違えたのだと思います。ちなみにこれらの菌は、幅0.5~1.0ミクロ・、長さ数ミクロンから30ミクロンほど。 顕微鏡視野ではあまりにも違いすぎます。
私も位相差顕微鏡を購入し、毎日毎日、歯周ポッケットからプラークを取り出し見続けています。 無歯顎者の汚れた総義歯の内面からカンジダ菌を見つける事は有っても、歯周プラークからは希です。少なくともプラーク全体がカンジダ菌と言う状態に遭遇した事は有りません。歯周病を本格的に始めて、やっと1年の先生に振り回されてしまったようです。歯周病そのものに対する理解が浅いのです。 反省!反省!
その後、歯科医ならご存知のザ.クインテッセン・の8月号に詳しく報告されました。勿論、否定しています。しかし、それでも興味をお持ちの方の参考テキストとしては、医試薬出版のデンタルプラーク 細菌 第2版 奥田克爾著をお勧めします。いろいろ当りましたが、邦文のものはほとんど医科向けで歯科向けのものは探せませんでした。ご存知の方はお教え下さい。また、私の意見に異論のある方もご意見下さい。
保険医協会歯科部は、要求団体から少しばかり学術する団体へシフト中です。今回は、西田先生のお陰で、その真似事が少しは、出来たのではないかと思っています。いつもいつも、歯科部の無理難題に答えていただき有り難うございます。今後とも、会員の学術的要求に答えるつもりです。いつでも、どんな事でも協会に申し出て下さい。 検討します。
6月9日 朝日新聞社会面 抜粋
歯周病に抗かび剤を使う新しい治療法が登場した。歯周病の主役はこれまで細菌と考えられ、時間をかけた歯磨きで治療するのがふつうだ。
抗かび剤治療を始めたのは、神奈川県茅ヶ崎市の歯科医、河北正さん。
きっかけは3年前、かびのカンジダ菌による口内炎の患者に、抗かび剤「アムホテリシンB」 のシロッブによるうがいを指示したことだ。1週間後、口内炎だけでなく、歯茎からの出血や歯のぐらつきという歯周症状もほとんど消えていた。これまで「9割に効果ががあった」という。
専門機関に病理検査を依頼した結果、歯周病患者の歯茎や歯の表面組織にカンジダ菌やその胞子が侵入しており、プラ-クの大部分もカンジダ菌であることが分かった。一方、歯がそろっている老人の口内にはカンジダ菌がほとんどみつからなかった。
この治療法を歯科専門誌で知った熊本県歯科医師会広報委員長の生田図南さんは自らも実践し、歯科医師対象の講習会やインタ-ネットを通じて普及に努めている。
現在、約200人の歯科医が抗かび剤治療に取り組んでいるという。米ロマリンダ大学の歯周病研究グル-プからの共同研究の申し入れがあり、生田さんは今月下旬、打ち合わせのため渡米する予定だ。
- カテゴリー: 歯周治療