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糖尿病あるいは腎疾患を有する患者の歯周治療

1999年11月20日(土)


講師 小島登
日時 1999年11月20日(土)午後5時から
場所 金沢都ホテル
主催 金沢大学医学部歯科口腔外科学講座同窓会

講演会記録
 今日の予定は基本的な歯周病治療の考え方、腎疾患や糖尿病患者の歯肉について約1時間である。
 開業して20年を迎える。開業当初患者に追われる日々が続いた。そんな中でも、カルテはナンバ-リングし、ファイリングして、口腔内写真、模型、レントゲンフィルムなどの記録を残し、整理保存し、いつでも取り出せるようにしていた。そして、それらの資料を基に、毎日自分なりに反省し、よりよい処置を目指していた。この基本的姿勢は故玉井先生の許で学んだ一年間で身に付いたように思う。
 歯周病のアプロ-チには記録作りが大切である。 おなじみの症例である。ブラッシングだけで歯肉が良くなっていく。
症例1  54才女性
kojima-dental-office.net/20080728-1041
初診は1987年2月12日 主訴は上顎2から2の歯肉出血
現病歴 3ヶ月前より出血があり、触らないようにしていたら、発赤・腫脹を伴ってきた。
初診日・翌日 @1週間・2週間 @3週間・1ヶ月 @2ヶ月・3ヶ月マ-ジンの修正
@4ヶ月・5ヶ月 @8ヶ月・9ヶ月 @1年・1年3ヶ月  @1年6ヶ月・2年
@3年・4年
患者さんには全く染まらないプラ-クフリ-を求めるのではなく、少しぐらいの細菌がいても負けないバランスの取れたプラ-クコントロ-ルを目指している。歯間ブラシが入るから通すのではなく、健康な歯肉を求めて使う。窓ができるだけ開かないようにする。
@スタッフの研修会風景である。
kojima-dental-office.net/20121012-1197
 歯周治療の患者さんが増えるに伴い、スタッフ教育の必要性を感じ、勉強会を不定期に行うようになった。7年前からは、他院のスタッフも受け入れ、月に1回休診にして定期的に研修会を行うようになった。それがスタディグル-プ健口家族である。スタディグループ健口家族は常に「未完成」をモットーに、未来に希望をもって、人のやさしさを求めてこれからも研修を続けていきたいと思う。

@症例2  43才女性の症例
kojima-dental-office.net/20100128-1065
初診は1992年1月6日
主訴は右上1番口蓋側の発赤・腫脹
@適応検査、染め出し、パノラマ
@1週間・1ヶ月
@精密検査、と診断(評価)
@3ヶ月FOp当日・術後3週間
@1年・@2年・@3年・@4年と5年・@6年と7年
@歯周炎の原因は一定量以上の細菌繁殖(バイオフィルム)である。しかし現時点で、歯周疾患の鑑別診断や進行の予見に耐えうる細菌検査は確立されていない。また、たとえ原因菌がわかったとしてもそれに対する適切な治療法も確立されていない。それゆえ細菌と宿主の免疫応答のバランスの崩れを原因と考え、診断を歯肉炎として、出血しなくなった時を治癒とする。プラ-クコントロ-ルするかどうかは患者自身の選択であり、当院ではハブラシを持ってくるかどうかで判断している。
 歯周病原因菌増殖の影響が歯肉にとどまらず、コラ-ゲンバンドルを越えて歯槽骨にまで及び、歯周炎の結果として骨吸収が見られる。患者自身が行う原因に対する治療(プラ-クコントロ-ル)に少し遅れて、後遺症を評価し、それに対して処置(後始末)を行い、機能回復を目指す。歯肉の発赤、腫脹の改善が見られてから、処置が治療環境を整えて治癒の手助けになる。治療と処置を区別して考える。
原因-診断-治療-治癒  -患者
結果-評価-処置-機能回復-医療機関
 
@いよいよ今日の本題である
まず腎疾患を有する患者の歯肉である
kojima-dental-office.net/19970927-3074
 症例3  46才男性         
 平成2年当時 特記事項なし パノラマ 一般検査 染め出しをしている
@初診 平成6年5月27日  透析週3回  パノラマ
@       5月30日  スライド 染め出し
@       8月9日  2ヶ月後 暑い日が続いて体の調子は悪いが、                       口の中の調子はいい。
@     8年6月8日       2年後
@       12月9日     2年半後
@     9年6月12日  3年後 
 歯肉に発赤・腫脹が見られない。歯肉退縮・毛細血管の著しい造成が見られる。治ろうとしている。
 透析患者には前向きな人とあきらめている人がいる。前向きな人たちは健康に非常に敏感でハブラシ圧が強くなりがちである。

@症例4   41才男性         
  慢性糸球体腎炎
  初診 平成5年9月27日
@  初診時と2年半後の比較  スライド5枚ずつ
 歯肉の繊維性腫脹は著しいが発赤はあまり見られない。どちらかと言えば蒼白である。歯肉の改善は見られる。

@症例5   39才男性        
  腎不全にて腹膜透析
  初診 平成元年11月14日
  主訴 左下5番冷水痛
@    11/17  スライド5枚 歯肉腫脹は見られるが発赤は見られない
          適応検査と染め出し
@      12/5     2週間後 ほとんど変わらない
@    H2.4/17    5ヶ月後 綺麗には磨けるようになったが、ほとんど変わらない
@     6/8     金冠除去
   H4.12/1    少し歯肉の感じが変わった
@      H7年8月 腎移植、高血圧
@   H8.2.8(移植後6ヶ月)とH8.11.19.(1年3ヶ月後)の比較
            パノラマ 骨吸収が著しい
@     突如歯肉が発赤、腫脹
      免疫抑制剤の影響
      セルフケアを包み込むプロフェショナルケアで見守っていきたかった  
@定期検診を受けると抜歯は少なくなる
   リスクに応じて期間を選択している。ほとんどすべての患者にPMTCをしている。 

糖尿病患者の歯周病治療
kojima-dental-office.net/20040726-3084
症例6   53才男性       
  糖尿病も歯周病も生活習慣病
  初診 S.62.5.8.
  主訴 歯肉出血と右下1番の動揺

@  S.62.5.12.とS62.9.16との4ヶ月後の比較  スライド5枚
   先ほどの腎疾患と違い発赤腫脹が著しいが、4ヶ月の改善もわかりやすい
@    S.63.2.1.  9ヶ月後   歯肉は良くなっている。
@    H.2.5.11.   3年後
@    H.3.9.2.    4年後 プラ-クコントロ-ルを続けることは大変なことである
       プロフェッショナルケアで多いに補っていきたい

@  H.8.1.10.とH.8.12.10.との比較 8年と9年後
       何とかしてあげたいが徐々に歯が喪失していく

@症例7  41才男性    
     糖尿病
  初診  H5.4.15
  主訴  左下7番動揺・腫脹

@H.5.4.15.  適応検査 パノラマ 染め出し2回
         中止
@H.7.11.30.   左下7番自然脱落  左上臼歯部動揺
          パノラマ  染め出し3回
        左上456抜歯 → 同部位に治療用義歯
     右上67抜髄 →   中止
@H.9.12.20.  上顎2から2の動揺  左下6番の腫脹
     パノラマ 基本検査  意識が変わる
     右上12と左上2番の抜歯 → 2~2の増歯
     右上6番の抜歯
     右上7番の感染根管処置 → コア-セット
@H.10.2.3.    左下6番の腫脹
     左下6番 遠心根ヘミセクション → FCK
          右下72左下1番抜歯  
@  4.10.    →下顎3~3のブリッジ
                  右上765ブリッジ
         上顎2~2と左上4~6の義歯
@    7.2.       補綴後3ヶ月
@H.11.1.27.            1年後
@    8.26.  スライド5枚
        糖尿病最近落ち着いている。血糖値130前後、以前は300あった
        美味しく食べられるようになった。
        身体がカロリ-を計算できるようになった

@1匹の羊がたまたま山を登り始めた。何となくついて山に登る羊たち
北極が北だと思って構築された説は崩れていく  
リンデの考えを自分の臨床に取り入れたように常に柔軟性は用意する。しかし、一つの意見に凝り固まることなく自分で地道に確かめながら、中庸を心がけて少しずつ前に進みたい。

@症例8  37才男性       
  糖尿病
初診  H.1.11.11.
主訴  右上2番の動揺

     11.11.  パノラマ  歯周病についての説明
@          11.17.    適応検査 写真5枚
          染め出し開始
            12.1.      本人 口臭が気にならなくなる。出血も少なくなる。
          糖尿 学習入院
@     12.28.    写真5枚  精密検査とH23.10写真5枚の比較1ヶ月と4ヶ月
        H2.1.13   下顎前歯の暫間固定の除去
          全顎SRP
                    右上7番  抜歯
                    右上6番  抜髄
          
@      6.9.と9.8との比較  写真5枚  7ヶ月と10ヶ月後
              4から6月  左上7番と右上2番 抜歯
            下顎臼歯を除いてFOp
            左上6番 近心根のみ残す
            右上6番 遠心頬側根のみ抜根 
                  6月から9月
               右上123のブリッジ
           上顎左右6番のクラウン

@     11.16. 1年後   
@     パノラマの比較 1年と2年
     
@    H3.11.9.  2年後
@    H4.11.28.    3年後
       右上123のブリッジ再製
       右下7番と6番の遠心根の抜歯
       右下6番近心根にクラウン

@    H5. 11.13.   4年後
              右上6番と左上5,6番抜歯
       右上67と左上5から7のパ-シャルデンチャ-
@    H6.11.26.     5年後
              左下6番 抜髄
@    H7.11.4.   6年後
       右下6番と左上4番の抜歯
       右上67と左上4から7のパ-シャルデンチャ-
       右下67と左下7のパ-シャルデンチャ-
@    H8.12.7.   7年後
       右上5番の抜歯
@    H9.11.27.   8年後
@    H10.12.5.     9年後
@      H11.9.25.  10年後
       左下123FOp  
@経過表

年度  尿糖  血糖(mg/dl)   処置  
S57      +        164
S58      +         117
S59      -         165
S60      +     126
S61      +     139
S62                 173
S63      +     205
H1       +         200         初診
H2       -     133          右上7番と 左上7番と右上2番 抜歯
                                  左上6番 近心根のみ残す
                 右上6番 遠心頬側根のみ抜根 
                       下顎臼歯を除いてFOp
                 右上6番  抜髄   
H3       +     185
H4       +     153          右下7番と6番の遠心根の抜歯
H5       +     183          右上6番と左上5,6番抜歯
H6     3+     205            左下6番 抜髄
H7       +     204            右下6番と左上4番の抜歯
H8       -     104            右上5番の抜歯
H9     2+     143
H10    3+     199
H11      +     194           左下6番の抜歯
                 左下123FOp

血糖値の高い年の翌年に抜歯が多く、低い年の翌年に処置が少ない。

Periodontal Medicine
歯周病と糖尿病は生活習慣病に分類でき、お互いにリスクファクタ-を共有している。
たとえば、加齢、喫煙、ストレス、生活環境は、共通したリスクファクタ-である。また、糖尿病は歯周病のリスクファクタ-であり、歯周病は糖尿病のリスクファクタ-である。歯周病があるから糖尿病になるといった因果関係を意味しているのではないことに注意しなければならない。歯周病を単に口腔内の局所の感染症というよりも、全身に影響を与えうる感染症ととらえる必要がある。
歯周病感染のコントロ-ルが糖尿病コントロ-ルの必要手段になるかも知れない。
来年度から医師と歯科医師の共同研究を進めていきたいと思っている。

最後に仕事は毎日楽しく、新しい出会いがおもしろい。
ご静聴ありがとう。

 

@最近興味を持っているものをもう少しお話ししたい。
カリエスを見つけて削って詰めるだけでよいのだろうか。ブラシング指導と砂糖の禁止で良いのだろうか。下顎の6番のクラウンをはずすとプラ-クがびっしり付着している舌側ではなく比較的綺麗な頬側に二次カリエスがある。一生懸命ブラシングしているのにカリエスになる。
3年前よりサリバテストを導入した。
@@@大人の症例
@@子どもの症例
「唾液がたくさん出ると虫歯になりにくいよ」と声を掛けると一生懸命ワックスを咬んだり、「5分間で青に変わらなかったら、食べたり、飲んだりしてから2時間起きててね」といって唾液を落とすと真剣にバフを観察している。5分後に口腔内とバフと一緒に写真を撮っている。現像後もう一度見比べて判定している。同じ青と判定しても少しずつ違いがある。みどりのバフも時間が経てば青に変わることも子供に見せて、時間はかかるが君の唾液も頑張っているよと励ましてあげることも大事だと思う。
@対策
唾液に問題があれば食べたら起きていることが大事である。フッ素は大唾液腺の守備範囲以外の上顎前歯の頬側および最後臼歯の頬則から遠心と下顎全顎の頬側に効果がある。
ミュ-タンス菌が多ければ母子感染に注意しよう

@統計  EBM(Evidence Based Medicine)と思いやり
カリエスになんとなくなりそうだなと思う子にはほとんど何か原因がある。個々のデ-タから患者さんや保護者と口腔の健康について話し合うことに大きな意義がある。それぞれの子供にあわせてバラエティにとんだ指導が可能になった。カリエスになって歯を削られに通ってくる子供よりハブラシを持って喜んでチェア-に座る子供が増えてきた。大人でもカリエスの多い人、歯根露出の人、口腔乾燥症の人に唾液の働きをお話しできるようになった。科学的裏付けの理解と思いやりが必要である。
やがて診療室に意欲あふれる健康な人が増え、スタッフも自信を持って楽しく仕事ができるようになる。それぞれにやりがいができて診療室の雰囲気が明るくなった。
来年1月10日にモリムラから出ている季刊誌クリニカル・M・リポ-ト20号に掲載されますので興味のある方は読んでください。
サリバテスト100人の集計
 1997.5.16~1998.8.1の間に来院した患者100人のサリバテストの結果をまとめてみました。ミュータンス菌、ラクトバチラス菌が多いほうがカリエスが多いように思える。
特に4~10才では顕著にである。唾液量も少ないほうがカリエスが多く、また大唾液腺の唾液が行き届かないところに目立つようである。唾液緩衝能との関連はあまり数字には出てこないが、歯頸部の脱灰層や前歯部レジン充填の二次カリエスが多いようである。またミュータンス菌、ラクトバチラス菌、唾液量は努力により改善が見られるが、唾液緩衝能はあまり変わらないようである。

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