上顎6番が萌出してこない
2010年12月15日(水)
学校歯科検診に行くと、小学2,3年生でも上顎6番が萌出していない児童を時々見かける。歯科医院で精査すると、乳歯Eの遠心に食い込んで萌出できない時と7番歯胚形成がない場合がある。前者の場合は、歯肉弁切除と6番遠心移動の工夫をすれば萌出が促される。
しかし、後者の場合は様々な処置によってもほとんど変わらず、萌出時期がかなり遅れ、7番の萌出時期に近い可能性もある。上下大臼歯による咬合が長期間にわたり無いために、咀嚼能率や上顎歯列弓の発育が悪くなる。また、下顎6番の挺出も起きる。したがって、口の働きを整え、上顎6番の萌出に備える。特に、いろんな硬さや大きさの食材を食べて物性を感知する口蓋の前方部を育てる。6番萌出後に歯列弓を拡大する。
参考に
萌出障害の咬合誘導
kojima-dental-office.net/20111016-2447#more-2447
患者 7歳女児
初診 平成22.5.14.
主訴 左下6番に穴が開いた
現症 上顎の歯列弓が非常に小さい
上顎2番は未萌出、スペース不足
上顎左右6番が未萌出
口蓋に吸啜窩がある
舌を前に出すと、細く尖っている
給食時間(20分間)内に食べられない
いびきや歯ぎしりがある
検査所見
パノラマレントゲン写真にて
上顎6番はまだまだ高位にある
上顎7番の歯胚が確認できない
下顎7番の歯胚は歯冠の3分の2以上が石灰化している
下顎5番が先天性欠如
唾液量は5分間で3.0ml
最大開口維持時間 7秒
経過
5/14 口腔内の状態等を説明し、口腔機能の問題点を指摘し、
改善方法を提案する
左下6番にコンポジットレジン充填
5/15 T4Kを就寝時と日中1時間装着開始する
踵をしっかり床に付けてなどの食姿勢を整える
しっかり噛んで食べられるように食物の形態を工夫する
9/8 下顎2~2が前方へ移動し、切端咬合になる
最大開口維持時間 60秒
30分あれば食べられるようになる
いびきや歯ぎしりが無くなる
口笛の音が微かにするようになる
T4Kの舌側部が裂ける
10/13 唾液量は5分間で7.0ml
食事時の姿勢がよくなる
上顎6番が萌出してこない パート2
6番萌出後に歯列弓を拡大しようと、口腔機能訓練を続けてきたが、8歳になっても上顎6番は未萌出のままだった。そこで、直面する課題である上顎2番のスペース不足解消のために、床型エキスパンションによる側方拡大を提案し、本人・家族の協力を得て試みることになった。
経過
平成23年
4/13 治療法を説明し、承諾を得て印象採得。
4/25 床型エキスパンションを夜間に装着し、少しずつ拡大し始める
日中1時間はT4Kを装着し、口唇閉鎖、鼻呼吸、舌訓練をする
6/15 右上2番が萌出し始めため床が入らなくなったので、
当たるところを削合調整する。
10/5 上顎2~2までのスペースを確保し萌出。
6番は未萌出
12/27 パノラマX線写真にて上顎7番の歯胚を確認
上顎6番が萌出してこない パート3
9歳になり、右上6番はわずかに萌出し、半年ほどで萌出が完了した。しかし、左上6番はなかなか萌出せず開窓術を施行し、Eの遠心部の削合や抜歯も行い、ようやく10歳後半に萌出を完了した。6番萌出遅延による5番のスペース不足をリンガルアーチにて解消し、そして、すべての装置から解放されて中学生を迎えた。今後も引き続き経過観察を行う。
経過
平成24年
2/22 右上6番がわずかに萌出(直径1mm)、左上6番未萌出
床型エキスパンションにて上顎前方拡大
7/30 左上6番に開窓術
8/6 左上6番萌出開始、右上6番ほぼ萌出完了
左下3番唇側転位
12/3 左上6番の萌出スピードが遅い
平成25年
1/7 日中に1時間T4Kハードを使用
6番が萌出しやすいように左上Eの遠心部を削合
4/10 左上6番の萌出は不完全
8/31 左上Eを抜歯
12/5 左上6番の萌出したが、5番のスペース不足
12/18 リンガルアーチにて左上6番を遠心へ
平成26年
5/1 5番のスペースが確保できたので、リンガルアーチ除去
T4Kに戻す
11/1 切端咬合になってきたので、T4Kを中止
平成27年
7/24 左上3番低位唇側転位、右上2番口蓋側転位
左下5番先天性欠如、左右上顎7番萌出開始
- カテゴリー: 口の機能のお手伝いT4K萌出障害・過剰歯・先天性欠如