小島歯科医院 名誉院長ブログ

舌診のすすめ

2010年11月14日(日)


%e8%88%8c%e8%a8%ba%e3%81%ae%e3%81%99%e3%81%99%e3%82%81%ef%bc%91 ~口から全身状態を理解する~
講師   九州歯科大学 口腔保健学科・摂食嚥下支援学講座
     柿木保明教授
とき   2010年11月14日(日)午前9時~12:30
場所   金沢都ホテル 
対象   会員医療機関の歯科医師、医師、スタッフ(定員50人)
参加費  無料
主催   石川県保険医協会歯科部


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 参考として
 舌診入門  病気でなく病人を診る医学
kojima-dental-office.net/20010909-2858#more-2858
 舌の診かたについて
kojima-dental-office.net/category/etc/tongue
 11月14日(日)午前9時から12時30分まで、都ホテルにて柿木保明先生をお迎えして「舌診のすすめ」講演会を開催した。会場には歯科医師32名、医師19名を含め59名の参加があった。前回9年前に行った「舌診入門」時の29名を大幅に上回り、関心の高まりが伺われる。
 様々な舌の状態から全身状態を理解し、配慮すべき問題点を明らかにした多くの症例を供覧していただいた。患者さんの訴えの中から隠れた真実を引き出し、難解な症状を理解し、何が起きているのかを推論し治療を進めていく姿に感服した。
 学んだ主なものを書き留めておく。普段は無症状だが、睡眠薬常用者の夕方になると、または飛行機に乗ると歯が痛いなど、今まで納得のいかなかった疼痛なども歯根膜や歯髄内の内圧亢進によるものだと理解できるようになった。最近多く見られるようになった水分の取りすぎによる胖大舌の患者さんは特に注意が必要である。そして、舌苔が厚くなるのは、舌粘膜表面にある糸状乳頭が長くなり、そこに剥離細胞や粘液、食物残渣、細菌等が積み重なるからであり、従って積極的に擦過除去するのではなく、消化器系など全身状態の改善が重要である。また、口腔乾燥症では唾液の泡が分泌低下のサインであり、舌背の湿潤度が目安となることや、逆流性胃酸による誤嚥性肺炎では、舌の動きが悪く口腔底が硬くなっていることが多いこと、溝状舌の溝は消化機能低下や栄養不足などの再生能低下を表すこと、肝機能低下や高血圧の患者さんでは舌下部静脈の拡大や蛇行が見られることも注目していきたい。そして、キャッチフレーズ「食べなくても歯を磨く」は印象に残った。
 舌痛症や身体を温める食品なども研鑽を積み、漢方薬を含めた東洋医学についても保険医協会歯科部として取り組んでいきたいと思う。

案内
 柿木先生が金沢で「舌診入門」を講演されてもう9年が経ちます。早いものです。あの時に、大切なことを教わりました。検査に頼りすぎて、患者の顔色や舌、脈を診ることが少なくなったことを、そして病気でなく病人を診ることを。
  あれ以来、舌を診ていますと、患者さんの身体の調子の善し悪しに気が付き、そこから話題が広がったりすることも多く、毎日の診療が実に楽しいです。また、自分の思いをうまく伝えられない全身疾患患者や高齢者、障害者などでは大変役立っています。
  前回講演を聴かれた人も、初めての人も新しい臨床のヒントを体験していただけると思います。バージョンアップした舌診(第二弾)を心ゆくまでお楽しみください。
 多数の参加をお待ちしています。
  講演終了後、講師を囲んで懇親会を開きます。(申込みが必要)
   参加費は1500円

抄録                     九州歯科大学教授 柿木保明
 舌診入門を刊行して9年の月日が流れ、2010年春、新たに「舌診のすすめ」を発刊させていただきました。その間に、医学教育のモデルコアカリキュラムに和漢薬が組み込まれたことで、医学部では漢方医学についても学習する環境が整えられ、歯学部においても徐々に、東洋医学的な講義が取り入れられてきています。
 古来、舌の観察は全身状態が反映されていることから、視診である望診の中でも、舌診として重視されてきました。
 舌診は、その情報から全身状態が理解できることから、医科だけではなく、歯科臨床の現場においても、配慮すべき問題点が明らかになることがあります。すなわち、知覚過敏や歯冠形成後の過敏症状がある患者では、歯髄腔の内部の圧力が亢進している状態が多いことから、利水剤である五苓散などの漢方薬が症状の解消に有効となりますし、形成後の疼痛なども同じ状態の場合が多いことから、胖大舌がある患者では注意が必要です。また、インレー脱離の多い患者では、体内に水分貯留の傾向があったり、頸部や肩の凝りや血行障害が原因になっていることもあります。さらに、舌の所見から、舌痛症や顎関節症、味覚異常、口腔乾燥症などの症状緩和や治療に、漢方薬が有効なことが多くみられます。
 このように、舌診は、近代医学においても口腔から全身を捉える手法として有用で、日常臨床に応用できる知識と技術と考えられます。

参考図書
日本歯科評論 別冊2010
歯科医師・歯科衛生士ができる舌診のすすめ!
患者さんの全身状態を知るために
柿木保明編著
5040円

柿木保明[カキノキヤスアキ]
略歴
1955年 宮崎県生まれ。
1980年 九州歯科大学卒業。
1980年 産業医科大学病院歯科口腔外科勤務。
1981年 国立療養所南福岡病院歯科勤務。
1988年 同病院歯科医長。
2005年 九州歯科大学生体機能制御学講座摂食機能リハビリテーション学教授。

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