自院でできる障がい者歯科
2011年06月18日(土)
講師 ひまわり歯科医院 院長 井東竜彦先生
とき 2011年6月18日(土)午後7時~9時
ところ 金沢都ホテル
対象 保険医協会会員医療機関の歯科医師、歯科衛生士等(定員先着50名)
参加費 無料
主催 石川県保険医協会歯科部
申込み FAX076(231)5156
参加者には「医療安全管理研修」の修了証を発行します
メモ
久しぶりに生き生きした若き歯科医の講演でした。医療現場に生き甲斐を持ち、診療に熱意があふれていました。とことん障がい者の人権を守る姿勢に心打たれました。
1.スペシャルニーズにスペシャルケアを行う
①安心できる環境
・同じ人がいる
・マスクを外す、白衣ではなくポロシャツなど
・いつもと同じ名前で呼ぶ
・家庭の中に入る(様々な出来事などをメモ書きしておく)
②コミュニケーション
・慣れるまではドクターがブラッシング
・いろいろなツールを利用する
③様々な行動の理由を分析する
・誘発する刺激を避ける
④診療手順の予告とパターン化
⑤親の気持ちを理解する
・時期による反応段階(ショック、否定、悲しみと怒り、立ち直り)
2.専門医へ紹介する
・基本的にはトレーニングする時間的猶予がない
急性症状や多数歯にわたる疾患がある
・トレーニング不可
・恐怖心を植え付ける前に
・全身麻酔下で処置するかどうかは専門医が判断する(紹介時の注意)
(全身麻酔ができないこともある、薬物による拘束は最後の手段)
・全身麻酔下でも痛みは感じているので、局麻を併用する
3.自院でできること
①歯ブラシに始まり歯ブラシに終わる
・ブラッシングしながらコミュニケーションをとり、仲良くなる
・生活の中にブラッシングを習慣化する
・パターン化(開始と最後の合図)
・口唇や舌の排除訓練とうがいの練習
②嘘をつかない
・次回の予定を共有する
・保護者の意識改革
・家庭で絵カードなどを使いトレーニング
③行動調整法
・視覚障害 自分の名を名乗り、誰が担当かを明確にする
・聴覚障害 マスクを外し唇を見せる
・知的、自閉的障害 絵カード、パターン化、スケジュール化
3歳10か月の壁(系統的脱感作)
水遊びが好きな自閉症、自傷、他傷行為
・肢体不自由者 チェアからの転落防止のための拘束(片側を長くしたタオル)
低反発マット
④事故防止
・開口器使用による気道狭窄、気道閉塞
呼吸しているかのチェック
・補綴物落下による誤嚥、誤飲
頬側にフックを付けフロスを通しておく
助手はバキュームですくい拾う訓練をする
10から20秒の間隔で交互に行っている気道確保を理解する
開口すれば気道が閉塞し水が口にたまり、口を閉じれば気道が確保される
落下したら起きあがらせず、顔を横に向ける
しゃっくりしたら気管内だから即救急車
⑤絵カード
・スケジュールを視覚的に理解でき、見通しが立ち安心する
・できましたBoxに終わった行為のカードを入れて、達成感を味わえる
・保護者にも訓練を共有できる
抄録
心身に障害のある人において、その人の口腔や歯の健康を守っていくためには、本人、その保護者や介護者、そして、当然口腔衛生指導に携わる歯科医師、歯科衛生士、スタッフまで、幅広い関係者が存在しています。いつまでも若々しい口腔内を持ち、おいしく食事ができるようにと、口腔衛生指導を行っていくということは歯科医師の本来の仕事であり、それは健常人と心身に障害のある人との間に隔たりがあってはいけません。しかし、現場では隔たりがある様に見えます。心身に障害のある人に対して、全身評価、接し方、対処の仕方などわからないことだらけで、それはむしろ当然です。ましてや医療行為なのですから、わからないことをわからないまま治療を進めていくということも問題視しなければなりません。すべての歯科医師が口腔がんの手術ができないように、すべての歯科医師が心身に障害のある人の治療はできません。
今回の講演は、障がい者歯科治療の基本と患者トリアージ、薬剤を用いた拘束治療の概要、自院でのワンポイントアドバイスといった形で行います。講演の内容上、ワンポイントアドバイスでは、写真撮影、動画撮影といった記録はお断り申し上げます。音声のみでご了承ください。
プロフィール
氏名 井東竜彦
平成4年 大阪歯科大学歯学部卒業
同年 歯科医師免許取得
平成7年 日本歯科麻酔学会認定医取得
平成15年 日本障害者歯科学会認定医取得
平成18年 ひまわり歯科医院開設
現在に至る
- カテゴリー: 歯科臨床