小島歯科医院 名誉院長ブログ

保険医療機関等に対する指導・監査

2009年10月17日(土)


 指導・監査の法的根拠に基づく違いや現状における問題点が明確になり、また、指導における行政手続法の重要性を認識した。そして、指導の種類と特徴が整理された。
(1)指導・監査の法的根拠
  ア 指導
  健康保険法
  (厚生労働大臣の指導)
第73条 保険医療機関及び保険薬局は療養の給付に関し、保険医及び保険薬剤師は健康保険の診療又は調剤に関し、厚生労働大臣の指導を受けなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の指導をする場合において、必要があると認めるときは、診療又は調剤に関する学識経験者をその関係団体の指定により指導に立ち会わせるものとする。ただし、関係団体が指定を行わない場合又は指定されたものが立ち会わない場合は、この限りではない。
  イ 監査
  (保険医療機関又は保険薬局の報告等)
第78条 厚生労働大臣は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険調剤師その他の従業員であった者(以下この項において「開設者であった者等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、保険医療機関若しくは保険薬局の開設者、保険医、保険薬剤師その他の従業者(開設者であった者等を含む)に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは保険医療機関若しくは保険薬局について設備若しくは診療録、帳簿書類その手の物件を検査させることができる。
 *法律の下位規範(症例・告示)には、指導・監査に係わる規定はない。具体的な取り扱いは通達(指導大綱、監査要綱)に委ねられている。
 【指導大綱における指導の目的】
 「保険診療の取扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う。」
 【監査要綱における監査の目的】
「不正又は著しい不当が疑われる場合等において、的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を採ることを主眼」として行う
(2)指導、監査の違い
 法律上、指導は保険医療機関の協力により行われる行政指導であり、一方、監査は不正又は不当が強く疑われる保険医療機関に対して行政が強制的に行う質問・検査である。したがって、特に指導については、あくまでも行政指導であるという理解のもと、行政手続法に基づいた適正な実施が強く求められるものである。
(3)行政手続法と指導のあり方
  行政手続法
  (行政指導の一般原則)
第32条 行政指導にあたっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
 ・「指導内容はあくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現される」という原則との関係では高点数による選定、選定理由の非開示、持参物の特定、同僚医師(歯科医師)の帯同拒否、自主返還などが問題と思われる。
 ・「相手方が行政指導に従わなかったことを理由とする不利益取扱いの禁止」との関係では集団的個別指導と個別指導の連動、指導拒否が監査につながること、などが問題と思われる。
(4)指導について整理する
 ・集団指導  新規指定、指定更新時、診療報酬改定時
 ・新規個別指導  新規指定から6ヶ月以降
 ・集団的個別指導 高点数保険医療機関等を選定*1
 ・個別指導    高点数保険医療機関等を選定*2、再指導、情報提供
  結果通知には、概ね妥当、経過観察、再指導、要監査がある
   *1 本人及び家族の入院外分1件あたりの平均点数の1.2倍を乗じた基準値を超える上位8%程度
   *2 集団的個別指導を受けた翌年度も平均点数が高い上位4%程度
2009年 新規開業医懇談会
と き:2009年10月17日(土) 午後6時~8時半
ところ:ホテル金沢 4F「風月の間」 (定員40人)
参加対象:開業5年以内の医科・歯科会員および未入会の会員
 ※未入会の方は当日までに入会手続きをお願いします。
 ※5年以上の先生も是非参加してください。
  今一度初心に返って保険診療の基礎を学んでみませんか。
参加費:無料(10月9日までに申し込みが必要)
※当日、軽食(サンドイッチ)を用意します。
申込み:保険医協会事務局
  送付先:FAX076-231-5156/Email iskw_sugino@doc-net.or.jp
  氏名(              ) ほか(     )人
  医療機関名(                    )
  電話番号(                     )
主 催:石川県保険医協会
  医科歯科合同開催ですが、終了後個別に懇談も可能です。

話題提供と報告者:
①知っておきたい保険診療の心得
 ・診療報酬関連法規の体系について(講師 工藤浩司事務局次長)
 ・集団的個別指導と個別指導について(講師 西田直巳会長)
②小規模医療機関で起きている個別医事紛争と労務管理
  (講師 さかえ社会保険労務士事務所所長 栄 重光氏)
 各40分前後の予定です。
 ~必ず役立ちます。ぜひご参加ください~
  医療費抑制政策が続く中、診療報酬改定の時期を迎えて、「開業医はもうけすぎだから診療所から病院へ診療報酬をシフトさせる」という声が聞こえる今日この頃です。こんな向かい風の中、新しく開業した会員の皆様、これから開業を目指そうとしている勤務医の方々に、心豊かに日々の診療に打ち込んでいただくことを目的に、「新規開業医懇談会」を開催することになりました。
 人口減少時代に突入し、産科、小児科のみならず、高齢者をターゲットにする診療科でも、10年、15年を経て、確実に人口減少の波が訪れます。これからの医療機関は、人口減少時代を見据えた中長期的な観点からの経営が求められます。こんな中、医療機関として、若々しく元気な時代をいかに華やかに長く続けていくかを考え、意見交換をしようと思っています。
 今回は、保険診療の実際や審査、指導などに対するノウハウのほか、医療機関における労務管理について、専門家のお話も用意しました。きっとご満足いただけると思います。 新しく開業された会員の皆さま、開業を考えている勤務医の皆様の大勢の参加をお待ちしております。

閉会の辞
 経営共済部部長の小島です。内灘町で歯科を開業しています。今日は開業初心者のみならず我々にとっても興味深いお話ありがとうございました。また、多数の参加ありがとうございました。今日のお話しにもありました保険診療のこと、スタッフのことは何年経っても頭の痛い問題です。もう一度基本的なことが聴けて良かったです。そして、いつの時代でも、仕事をしていく上で大切なことは、しっかりとした理念を持つことだと思っています。患者さんのため、地域のため、スタッフのために何をするのかというビジョンを明確にし、共に働くみんなと共有することが大切だと思っています。30年開業している一個人としての意見です。また、経営共済部長として一言、現在、保険医年金の募集月間です。皆様検討をお願いします。ご相談、ご質問は事務局または、訪問時に保険スタッフに何なりとしてください。今後も会員のための協会をモットーに努力していきたいと思っています。今日はありがとうございました。歯科会員の皆様、何か相談がありましたら、暫くいますのでお気軽にどうぞ。

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