開発途上国における保健システム強化支援について
2008年10月19日(日)
―貧困層へサービスが到達するための保健システム作りとはー
講師 池田 憲昭 氏
国立国際医療センター
国際医療協力局 派遣協力課 専門官(保健システム・病院管理)
と き 2008年10月19日(日) 午前10時から12時
ところ 金沢都ホテル 5階の「兼六の間」
参加対象者 歯科医師、医師、スタッフなど
参加費 無料 チラシ池田氏講演会
主催 石川県保険医協会歯科部
10月19日(日)午前10時から歯科部が都ホテルに於いて池田氏を招いて、「開発途上国における保健システム強化支援について 貧困層へのサービスが到達するための保健システム作りとは」と題して講演会を開催した。途上国への支援に関心があり、熱意ある歯科医師、医師、保健医学院生、留学生など30名ほどの参加があった。
12年間のアフリカを中心とした開発途上国において国際協力機構(JICA)の専門家として経験した事例と感じたことについて話された。先ず、途上国の乳児死亡率、妊産婦死亡率、保健医療支出や貧困率と飢餓、識字率、インフラの整備の現状と開発の目標や目的について報告された。そして、開発の考え方としてその国全体としての経済成長を目指す欧米の垂直型と不自由な原因を取り除いていこうとするインドなどの水平型があることや、様々な文化背景があることを理解し、受け入れ側の理念やビジョンをしっかりと把握し、保健現場当事者たちの工夫、改善をうながす保健システム強化支援をどのように進めてきたかを具体的に説明された。また、援助が都市部や富裕層に集中し、格差がより助長されたり、支援する国のスタイルのために撤退すると何も残らないなどの問題点も指摘した。
支援のあり方について予定時間をオーバーして議論になり、参加者それぞれの方に参考となった。また、今回の講演会は今までないテーマであり、新たな角度から医療を見つめ直すいい機会になり、災害対策や新型インフルエンザの対応、そして、日本国のこれからの医療保険制度を考えていく上でも非常に有意義な時間であった。
メモ
1.現状
貧困率と飢餓
乳児死亡率、妊産婦死亡率、保健医療支出
医療施設の配置 一極集中 地方にほとんどない
インフラの整備
識字率
格差拡大 富裕層や都市部のみに支援して格差が広がる
阻害要因
2.開発の考え方
開発の目的 不自由の主要な原因を取り除くこと
公平性 地域差や経済格差 人種種族宗派差別
欧米型とインドなどのアジア型
支援システム
垂直型と水平型
増員と適正な配置
支援する国のスタイルで支援するために撤退すると何も残らない
3.改善の考え方
自分たちの工夫
受け入れ型の理念やビジョン
4.意識の問題
意識下にある思いやりやケアの難しさ
儒教的な考え
医療の教育を国のお金で受けてもヨーロッパに行ってしまう
マダガスカルはインドネシアからの移住
5.日本のこれからの医療保険制度を考えていく上でも非常に参考になった。
国として
案内
スポーツの秋、味覚の秋・・・たまには診療を忘れ、
いつもとひと味違った講演会に参加してみませんか?
今回講師としてお招きするのは、歯科医師でJICA(国際協力事業団)の専門家として、開発途上国の保健システム作りに力を注いでこられた池田憲昭氏です。
池田氏は、長年開発途上国の支援に力を尽くしてこられ、現在も国立国際医療センター国際協力局専門官としてご活躍されています。
今回の講演では、その貴重な経験をもとに、開発途上国の事例をご紹介いただきながら
①開発途上国の保健システムの特徴と問題点、②保健資源の乏しい開発途上国における保健システム強化支援の現状と展望についてお話しいただく予定です。
歯科医師である講師が、なぜ「国際保健」に関わるようになったのか、アフリカへと惹きつけるものは一体何なのか?!ということも、ご興味のあるところではないでしょうか?
講師のつかの間の日本端在中に、じっくりとお話を聞きたいと思っています。
抄録
今年我が国で開催された「アフリカ開発会議」の行動計画では、アフリカ諸国における「ミレニアム開発目標」達成のために、保健分野では「保健システム強化、母子保健向上、感染症対策」が国際社会とアフリカ諸国が取り組むべき課題であることを示しました。その後7月に開催された「洞爺湖サミット」では「国際保健に関する洞爺湖行動指針」において、国際社会が開発途上国における「保健システム強化」を「人材育成」を中心とした包括的なアプローチで達成すべきだと述べており、今後の我が国の開発途上国に対する保健分野支援の方向性を示したものと言えます。そこで今回は、開発途上国の保健システムの特徴と問題点を、アフリカなどで演者が経験した事例を紹介しながら皆さんに共有していただき、保健資源の乏しい開発途上国における保健システム強化支援をどのように進めるべきか、私見をお話しできればと思っております。
池田先生のご紹介
主たる専門分野:国際保健- 保健システム・病院管理、
副専門分野:口腔癌予防、疫学、口腔外科学
学位・資格・所属学会・免許・賞歴等(主歴のみ掲載)
1984年9月 歯学博士(愛知学院大学)
1986年9月 日本口腔外科学会認定医
1995年10月 日本口腔外科学会指導医
1996年11月 臨床修練指導歯科医
2004年3月 マダガスカル国家勲章
職歴(主歴のみ掲載)
1996年7月 愛知学院大学歯学部助教授(口腔外科学第二講座)
1996年8月 国立国際医療センター国際協力局派遣協力課医師
19984月~12月 東北ブラジル公衆衛生プロジェクト(JICA)長期専門家チームリーダー)
2000年10月~03年3月 マダガスカル国マジャンガ大学総合病院センター改善計画
JICA個別専門家(公衆衛生・レファラルシステム強化)
2004年4月 国立国際医療センター国際協力局派遣協力課専門官
2005年6月~07年9月 セネガル国保健予防医学省大臣官房技術顧問(長期個別専門家)
平成20年7月 保健省アドバイザー(コンゴ民主共和国)短期派遣
主 な 業 績 著書、訳書:国内外20編(分担含む)
論文:国内外66編(共著含む)
追記 1
アフリカで取り組んでいる保健施設への5Sの導入 2009.7.7.
翌年7月7日に池田氏からコンゴよりメールが届いた。遠く離れたアフリカとメールのやりとりできる時代を不思議に思う。元気に活動を続けているらしい。今の季節は、南半球だから、すごしやすいそうだ。
その時話していたアフリカで取り組んでいる保健施設への5Sの導入についてが、国際医療協力ネットワークニュースに掲載された。
国際医療協力ネットワークニュース
特 集“保健システムⅢ”・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 04
保健資源の乏しい開発途上国における保健サービスの質改善の考え方
~今ある資源を活用する全体的アプローチ~
国際医療協力局派遣協力第二課派遣協力専門官 池田憲昭
「質の低下はそれを支えるシステムの問題である」という考え方の日本型戦略的マネージメント手法をアフリカ諸国の状況に応じて改変しながら保健施設に導入して、その効果を確認している。
追記 2
隔月刊ドクターズプラザ 2018年3月号 VOL.144
インタビュー記事
海外で活躍する医師たち22/国立国際医療研究センター 池田 憲昭 氏
寄り添う支援は、自律を促し、活動を根付かせる
www.drp.ne.jp/pickup/2237/
2018年3月31日退職
- カテゴリー: 人権と福祉