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指導をめぐる法体系の基礎知識

2011年07月30日(土)


メモ
 1.医療保障制度の概要
  ①憲法25条の健康権保障により、国民は国に対して「誰もが、経済的な心配することなく、必要な医療を必要なだけ提供される」ことを求める権利がある。
  ②国際人権規約第12条批准により、「すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有すること」が認められている。
  ③医療提供体制の整備(1階部分)と医療サービスの保障(2階部分)で国民の健康に寄与している。
    医療体制では、歯科医師法などにより歯科医師、医療従事者と
                 医療法による医療機関の質を確保している。
    医療サービスを健康保険法などにより保障している。

2.医療保険制度と保険医・保険医療機関との関係
    患者、医療機関、保険者、支払基金
  ①保険医療機関の指定と保険医の登録
   保険者が義務を負っている医療サービスの現物給付を医療機関に委託している。
   療養の給付を行うことができる医療機関は、厚労大臣の指定する医療機関である。
   二重指定制度(保険医療機関、保険医)
  ②委託契約内容
   双務契約(保険医療機関には療養担当規則に従った診療の実施が、保険者には診療報酬点数表に従った報酬支払いが発生する)
   付従契約(あらかじめ定められた約款内容を選択する自由がない契約)
   契約内容の周知徹底のため、保険医療機関は指導を受けなければならない
   契約内容に月不正または不当が疑われる場合には、監査を受けなければならない

3.療養担当規則
   保険者は療養担当規則に照らして審査の上、支払う。また、療養担当規則に違反した時、保険医療機関の指定取り消しと保険医の登録取り消しができる。

第1条  療養の給付の担当の範囲
  (保険給付にならないもの)
   業務上の疾病(労災)、健康診断、予防医療、美容医療、、出張医療
      交通事故、けんかなど
第2条  療養の給付の担当方針
   懇切丁寧に療養の給付を担当しなければならない。また療養上妥当適切なものでなければならない。
   特定の薬局への誘導禁止
   療養担当規則に定められたものや地方厚生局への届出事項を掲示義務
第3条  受給資格の確認
第5条  一部負担金などの受領
   一部負担金を減額、免除することは認められない
   領収証の交付(窓口負担が無料の場合は発行しなくてもよい)
第8条  診療録の記載及び整備
   カルテは、保険診療と自費診療を別々に作成する必要がある。
第9条  帳簿等の保存
   帳簿及び書類その他の記録を療養の完結の日から3年間保存しなければならない
      ただし、診療録は5年間とする
第11条  報告
   施設基準についての届出
   保険医などの異動

第12条  診療の一般的方針
   診療の必要があると認められる疾病又は負傷に対して、的確な診断の元に適切に行わなければならない。
第20条  診療の具体的方針
   診療上必要があると認められる場合に行う。

4.保険医療機関等に対する指導・監査
  ①指導  第73条
    保険医療期間の療養の給付に関し、保険医は指導を受けなければならない。
    保険診療の取扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う。
  ②監査  第78条
        不正又は著しい不当が疑われる場合等において、的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を採ることを主眼として行う。
  ③指導と監査の違い
    法律上、指導は保険医療機関の任意の協力により行われる行政指導(行政手続法に基づいた適正な実施)であり、それに携わる者はそれに従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはならない。監査は不正又は不当が強く疑われる保険医療機関に対して行政が強制的に行う質問・検査である。

5.現物給付・患者の療養を受ける権利
 患者さんのニーズに沿った療養を代わりに医療機関が請求しているので、査定などを受け制約されると患者さんの権利を侵害することになる。

<歯科>審査、指導に関する会員懇談会
日時 2011年7月30日(土)午後6時から9時
場所  ホテル金沢         チラシ審査、指導会員懇談会
参加対象:会員医療機関の歯科医師(定員50人)   
石川県保険医協会主催
第1部 午後6時~8時 4階・風月の間
 ◆ 指導制度の概要について
  講師:工藤浩司 石川県保険医協会事務局長
 ◆ 個別指導の指摘事項について
  講師:山本司 石川県保険医協会理事
  (参加費:無料)
第2部 午後8時~9時 1階・堀川
 ◆ 懇親会
  (参加費:2,000円)
※第1部、第2部のみの参加も可能です
申込みは7月22日(金)までに保険協会事務局まで
 電話 076-222-5373
 懇親会参加希望の方は、その旨もお知らせください。
案内文
 保険医協会では、審査、指導、監査の改善を活動の重要な柱に位置付けて取り組んでいるところですが、昨今、個別指導を受けた会員から、「曖昧な基準のまま自主返還を要請された」「従来は経過観察だったが再指導が増えている」等の声が保険医協会に寄せられるようになりました。また、歯科の個別指導結果を見ても、「再指導」が昨年2件から今年13件と大幅に増えており、厳しい個別指導の実態が伺えます。
 患者に対して適切な医療を提供するため、必要以上に個別指導をおそれて萎縮診療にならないようにするためには、審査、指導、監査の仕組みを理解することが重要と考えています。そこで今回は、下記の通り会員懇談会を企画しました。
 第1部では、審査、指導制度の概要を学び、個別指導の具体的な指摘事項について検討していく予定です。そして、第2部では食事をしながら、参加者がざっくばらんに意見交換する場を設けたいと思っています。皆さんのご参加をお待ちしております。

行政手続法を遵守した個別指導を求める                2011.7.15.
 指導は、保険診療の質的向上と適正化を図ることを目的とし、保険診療の取り扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行うと指導大綱にうたわれている。この「懇切丁寧」という文言は、保険医が遵守すべき療養担当規則にもあり、その第十三条に保険医は診療に当たっては懇切丁寧を旨とするよう規定されている。つまり社保指導は、本来われわれが患者さんに接するように行われるべきということである。また、行政手続法には、指導はそれを受ける側の任意の協力によってのみ実現され、その行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取り扱いをしてはならないと明記されている。
 しかるに、個別指導の現状はどうであろうか。現に高点数を理由とした選定が行われ、カルテ記載の不備であっても、それを理由に最初から「自主返還」という名の経済的不利益を求められる。これでは医療費の抑制が目的であるとされても、やむを得ないのではなかろうか。
 もちろん架空請求などは論外であり、それは糾弾されて当然であるが、診療の実態があったにもかかわらず、事務上の過誤、診療報酬に対する認識の相違などをもって、いきなり経済的不利益を求めることは、“苛斂誅求”といっても過言ではない。指摘すべき事項を指摘し、改善を求め、まずはそれが履行されているかを検証することが、本来の個別指導であろう。
 さらには、直近の個別指導では「概ね妥当」は激減し、「経過観察」および「再指導」が増えている。その上、新規の医療機関に対する個別指導ですら、持参カルテの分だけとはいえ、自主返還を求められている。
 従来は、指導の内容には地域差もあったが、これからは「公平性」の名のもとに、ますます厳しいものになっていく危惧もある。
 保険医を委縮させることは、国民が適正な医療を受けることの妨げになるものであることを、いま一度強調しておきたい。

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