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引きこもり患者訪問診療の実際

2009年10月08日(木)


 津幡保健所保健師より引きこもりの方を訪問診療して欲しいとの依頼がある。対人恐怖症のため約10年引きこもりが続いている。時々歯肉が腫れ抗生剤を内服している。数人の歯科医にお願いしたが、誰一人家の中に入れてもらえなかった。ただ心療内科の先生が一人訪問したことがあり、投薬を受けていることが分かった。早速その先生と連絡を取り、電話にて声を覚えてもらうことと仰向けの姿勢にさせないことや後ろに立たないこと、目を合わさないことが大切とのアドバイスを受ける。まず、電話をかけて患者本人から口の中の様子などを数回に分けて聞く。声だけでは恐怖心は起きないようである。

患者  46才女性
初診  2003年2月20日
主訴  右上が痛い

経過
2/20 初診当日、出かける時に再度今から訪問する旨を電話で伝え、歯科衛生士を2人連れて訪問した。すんなり家に上がることができた。患者さんは居間でテーブルを前にして大きなクッションを抱え、2人の娘さんが両隣に座りしっかり手を握っていた。口の中を少しだけ見せてくれた。コンクールFによる1日2回のうがいと抗生剤の内服を指示し帰る。
2/24 2度目の訪問時も前回と同じ体勢であったが、患者さんから話を聞くことができた。口の中がすっきりし、歯肉がしまった感じがする。左下3番が少ししみる。プラークコントロールの定着に時間をかけて取り組むことと食事の取り方の注意を当面の目標とした。直接歯ブラシを口の中に入れて指導できないので、毛先磨き、かかと磨き、力を抜いてみがくことなどを歯科衛生士が説明した。
2/27 3度目の訪問時に口腔内の歯式を取ること左上1,2番の継続歯の再装着ができた。まだまだ身体に力が入り、両サイドから娘さん達がガードしていた。チェックアップフォームの使用を促す。乱切りなど食材を大きくしてよく噛む工夫といろいろな食材を食べることを指導した。
3/3、3/10、3/17 右上1,2番、左上1,2番を再装着
3/19 歯科衛生士が歯肉の観察をして、直接口の中に歯ブラシを入れて指導する。そして、充電式のハンドピースにラバーチップを付けてクリーニングする。身体が震えていたが、口腔内全体にできた。娘さんが一人そばにいれば診療が可能になった。
3/20 ハンドピースにラバーチップを付けてもう一度練習する。その器具にだいぶん慣れてきたが、椅子に座ることに対する恐怖心からか畳の上に座った状態なので、術者の体勢が悪く、同じ姿勢を続けることは数分が限度である。
3/24 タービンの音や機械器具などに慣れてもらうために練習する。
3/25 椅子に座ることができないので、低い態勢をとりながら左上3番をタービンにダイヤモンドバーを付けて形成しコンポジットレジンを充填する。
3/27 訪問診療にて左下3番も同じように充填する。
その後、月1回訪問し、口腔内状態のチェックと、歯科衛生士によるクリーニングを行っている。10回目の訪問当たりから、娘さんが横にいなくても同室内にいて、大きなクッションを抱えていれば診察が可能になった。また、マウスピースや残根上の局部義歯も作れるようになった。

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