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Plaque freeよりPlaque controlを。その実際と結果。

2000年01月10日(月)


Plaque freeよりPlaque controlを。掲載:クリニカル・エム・リポ-トVol.20   
                 (2000年1月10日発行)           
テ-マ   :「予防歯科がデンタルマネ-ジメントを変える」 シリ-ズ8

 当院は開業して20年を迎える。開業当初患者に追われる日々が続いた。そんな中でも、カルテはナンバ-リングして、口腔内写真、模型、レントゲンフィルムなどの記録を残し、整理保存し、いつでも取り出せるようにしていた。そして、それらの資料を基に、毎日自分なりに反省し、よりよい処置を目指していました。この基本的姿勢は金沢大学故玉井健三先生の許で学んだ一年間で身に付いたように思う。

  13年前に現在地に診療所を移転したのを機に、歯周治療に取り組もうと思った。初めて来日したDr.リンデの講習会を聴き、目の前が明るくなったのもちょうどそのころだ。自分でプロ-ビング、ブラッシング指導を行い、コツコツと患者さん一人一人に真剣に取り組んでいった。歯周治療の患者さんが増えるに伴い、スタッフ教育の必要性を感じ、勉強会を不定期に行うようになった。7年前からは、他院のスタッフも受け入れ、月に1回休診にして定期的に研修会を行うようになった。それがスタディグル-プ健口家族である。
 受講者にはレポ-トを書いてもらい、健口家族NEWSを発行している。スタディグループ健口家族は常に「未完成」をモットーに、未来に希望をもって、人のやさしさを求めて研修を続けていきたいと思う。 リンデの考えを自分の臨床に取り入れたように常に柔軟性は用意する。一つの意見に凝り固まることなく自分で地道に確かめながら、中庸を心がけて少しずつ前に進みたい。日々の記録を残し、経過を観察する。どう処置するかより、患者さんに健康観をどう持ち続けてもらうかを考える。症例を振り返り、反省と次への意欲で診療を続けていきたい。
 そのためには、まず患者さんにどんなリスクがあるのか理解してもらうことである。たとえば白髪になる人なのか、髪の毛が寂しくなる人なのか、教えてあげることではないだろうか。次にそうなってから染めたり、カツラを作るのがいいのか、またはそうならないために頭の洗い方や食べ物に注意するのがいいのかを選択させることではないだろうか。それは人とのふれあいを大事にしていくということではないだろうか。歯周病の患者さんにはまったく染まらないPlaque freeを求めるのでなく、少しぐらいのばい菌がいても健康な歯肉で過ごせるPlaque controlを目指していきたい。あなたは虫歯になりやすいよ。歯周病になりやすいよ。あなたはこのままで大丈夫だよ。
 プラ-クコントロ-ルするかどうかは患者自身の選択である。当院ではハブラシを持って来た患者さんに指導している。大人では口腔内の健康に関心を持ち向上する意欲を持つ人のお手伝いをして、歯周病治療を主に考え、歯を残しながら一生お付き合いしようと考えている。治ろうとする歯肉や治そうとする意欲をじゃましないように、歯科衛生士にはよく歯肉を診てほしい。どのくらいの期間で、どんなふうに変化するのか。良くなる経験の後に聞かれれば磨き方を教えてあげるようにする。
 患者さんと医療サイドのニ-ズのずれに早く気づき、自己満足的な、医療者側から見た最高の善意の押しつけから患者自身が動機づく環境整備へのシフトが必要であろう。 これからの歯科医療は、患者さんが主体となり、本人の気持ちや感情を理解し、正しいニ-ズを適切に受け止める必要がある。ニ-ズを確認したうえで、治療や予防法をお話ししていこうと思うようになった。患者や住民のニーズに応えてゆく努力を惜しまない限り歯科医業には無限の可能性がある。
 診療室にもカリエスもなく、歯周疾患もない健康な人が多くなった。これから予防の時代に入り、健康志向が強くなりそうだ。子供には虫歯を削って詰める修理より、原因を見つけて生活改善を目指す予防を優先したいと考えている。

データ分析 子供たちにはブラシング指導だけでは何かが違うような気がしていた。3年前よりサリバテストを導入した。カリエスになんとなくなりそうだなと思う子にはほとんど何か原因がある。個々のデ-タから患者さんや保護者と口腔の健康について話し合うことに大きな意義がある。それぞれの子供にあわせてバラエティにとんだ指導が可能になった。カリエスになって歯を削られに通ってくる子供よりハブラシを持って喜んでチェア-に座る子供が増えてきた。大人でもカリエスの多い人、歯根露出の人、口腔乾燥症の人に唾液の働きをお話しできるようになった。
 現在当院では主訴に対する処置の後に口腔に対する考えを聞き、今回は結果に対する処置だけでいいのか、原因に対する治療も含めて希望するかカウンセリングする。唾液の話、再石灰化の話など情報を提供し、次回までによく考えてもらい、選択してもらう。
 食後1時間経過していることと、その後のブラシング中止が守られ、現在使用中のハブラシを持参した患者さんのみに担当の歯科衛生士が決まり、サリバテストやブラシング指導が行われる。「唾液がたくさん出ると虫歯になりにくいよ」と声を掛けると一生懸命ワックスを咬んだり、「5分間で青に変わらなかったら、食べたり、飲んだりしてから2時間起きててね」といって唾液を落とすと真剣にバフを観察している。5分後に口腔内とバフと一緒に写真を撮っている。現像後もう一度見比べて判定している。同じ青と判定しても少しずつ違いがある。みどりのバフも時間が経てば青に変わることも子供に見せて、時間はかかるが君の唾液も頑張っているよと励ましてあげることも大事だと思う。また患者さんとのコミュニケーションが必要となる。たとえば抜歯のための浸潤麻酔が、翌日頬部に内出血による紫斑を起こしたとしてもある程度許されるかもしれないが、もし、むし歯予防の検査で薬疹を起こせば問題となる。症状がない健康な人を対象とする予防では、リスクはほとんど許されない。良い点、悪い点をわかりやすく事前に説明しなければならない。スタッフには科学的裏付けの理解と思いやりが必要である。
 総合的な結果が出ると、これからの対策の相談をする。ここで大事なのが予防の効能と効果だろう。フッ素は効果あるよ。キシリトールには効能があるよ。1日5粒130円、月4000円。実際に摂り続けて効果が出てくる。止めてしばらくすると効果が無くなる。流行に流されず正確な情報を伝え、どんな優先順位をつけるのかカウンセリングが必要になる。フッ素でうがいする。飴は止められる。ジュ-スは減らせる。半分はお茶にできる。甘いものの後にキシリトールガムは咬める。寝る前には食べない。ブラッシングはがんばる。朝自分で起られるようになる。人それぞれである。同じ目線でよく話を聞こう。

 カリエスチェックカ-ド

 処置も済み、プラ-クコントロ-ルも定着するとカリエスチェックのカ-ドを渡し、もう一度検査結果の説明と今注意している対策を再確認してメインテナンスに入る。後は担当の歯科衛生士に任せる。やがて診療室に意欲あふれる健康な人が増え、スタッフも自信を持って楽しく仕事ができるようになる。それぞれにやりがいができて診療室の雰囲気が明るくなった。

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