小島歯科医院 名誉院長ブログ

ホルムアルデヒドガス消毒器を導入

2024年10月07日(月)


 2024.8.9.
 常温・常圧で器具や器材を傷めることなく、スピーディーな殺菌処理(標準モード55分、2段モード90分)を実現したホルマリンガス殺菌器。約25~30℃の常温・常圧で消毒を行うため、オートクレーブに耐えられない様々な器具・器材に使用できる。特に、熱により傷みやすいエアータービン・ハンドピース、コントラアングルにも適している。また、内部が閉鎖構造になっており、独自の中和・消臭機構で臭いが外部に漏れることがない。廃液は下水にそのまま流すことができる。
 ホルホープデンタル do.dental-plaza.com/search/item/detail/id/6600000/
 添付文書
www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/100319/100319_221AIBZX00038000_A_01_02.pdf
 医療現場における滅菌保証のガイドライン2021
13. 低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌における滅菌バリデーションと日常管理 ——- 178
www.jsmi.gr.jp/guideline/
 歯科診療所もプラズマ滅菌へ
kojima-dental-office.net/blog/20240716-19497#more-19497
「滅菌」とは、すべての微生物を対象として、それらをすべて殺滅または除去する方法である。日本薬局方の定義では「微生物の生存する確率が 100万分の1以下になること」。一方、「消毒」とは、対象物に存在している微生物をすべて殺滅・除去するものではなく、感染症を惹起しえない水準にまで病原微生物を殺滅または減少させることである。
 「殺菌」とは、対象や程度を含まない「菌を殺す」という概念。一部を殺しただけでも「殺菌した」と言えるので、有効性を保証したものではない。この「殺菌」という表現は、「医薬品」または「医薬部外品」で使うことはできるが、洗剤や漂白剤などの「雑貨品」については使用できない。
 【ホルムアルデヒド】
 化学式HCHO 中性~弱酸性
 原料:メタノールCH3OH及び空気
 ホルムアルデヒドの37%水溶液をホルマリンと呼ぶ
 【殺菌力】
 ホルムアルデヒドは、脂溶性で蛋白質を凝固させる作用があるので、強力な殺菌作用がある。生体組織に接触すれば強く刺激し硬化させるので体表面の消毒には不適で、主として器具・室内の消毒に用いられる。金属を腐食しないので、人工透析器・内視鏡光学支管器具室の消毒等にも適応する。
 【対象微生物】
 一般細菌、MRSA、緑膿菌やシュードモーナスセパシアなど(感受性菌、耐性菌)梅毒トレポネーマ、結核菌、真菌、芽胞、ウイルス(脂質を含む・中間サイズ、脂質を含まない・小型サイズ、HIV、HBV・HCV)。
 【毒性】
 内服した場合、呼吸困難、めまい、嘔吐、胃痙攣が起こる。成人の致死量は約60mlと言われている。主な急性毒性は局所刺激であり、鼻、目、気道に強い刺激を与え、くしゃみ、咳、催涙作用などを示す。
 【中和液・消臭液の排水法】
 1999年8月福岡大学薬学部に中和液(アンモニア主成分)と消臭液(リンゴ酸主成分)の排水成分の分析を治験依頼した。ホルムアルデヒドをアンモニアと反応させ、ヘキサメチレンテトラミンにし、過剰のアンモニアをリンゴ酸液とクエン酸液に混液、塩類にし消臭する本法は非常に優れたホルマリンの解毒法であるという成績を得た。

 【ホルムアルデヒドガス消毒に適した器具・機材】
・エアタービン・ハンドピース(個別に殺菌できるカプセルを使用)
・コントラアングル(個別に殺菌できるカプセルを使用)
・バキュームシリンジ
・スリーウェイシリンジ
・バー類
・リーマーファイル類
・電気メスチップ
・外科器具
・矯正用器具
・ガラス器具
・シリコン印象剤
・レジン製補綴物
など
 *布類、歯ブラシ類は適していない
  ホルマリンの匂いが残りやすいということで消毒できないと記載がされている
  使用される場合は、エアーでホルマリンの液を飛ばす等の工夫が必要になる
【特定化学物質障害予防規則】
 労働安全衛生法の関連規則で労働者の有害化学物質による健康障害を予防するための規則。2001年にEOG(エチレンオキサイドガス)が第2類物質(ガン等の慢性障害を引き起こす物質)に改正され、2008年にホルムアルデヒドも第2類物質に改正された。2008年3月26日、厚生労働省は密閉方式のホルムアルデヒドガス消毒器を一部の医療機関において適応除外とした。
  *ホルマリンの保管に関して「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者」の資格が必要
  *ホルマリンは特定化学物質であり、四アルキル鉛とは関係ないため、EOGの時の特定化学物質等作業者技能試験合格(石川県労働基準協会連合会)の作業主任者の資格があれば問題ない
 作業環境
  ・ガスが発散しない構造のため発散抑制装置は不要
  ・作業主任者は必要(但し、機器の運用・保持に関しては不要)
  ・常時作業に該当しないため、作業環境測定は不要
  ・特定化学物質健康診断は不要(通常の年1回の健康診断は必要)
特定化学物質等作業者技能試験合格(石川県労働基準協会連合会)2002年4月10日
kojima-dental-office.net/20160512-142#more-142

 密閉方式のホルムアルデヒドガス滅菌器等に関する特定化学物質障害予防規則の適用について   事 務 連 絡
www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-49/hor1-49-35-1-0.htm
                         平成20年3月26日
 都道府県労働局労働基準部
   労働衛生主務課長 殿
                       厚生労働省労働基準局安全衛生部
                        化学物質対策課化学物質評価室長
 ホルムアルデヒドをその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物については、労働安全生法施行令の一部を改正する政令(平成19年政令第375号)及び特定化学物質障害予防規則等の一部を改正する省令(平成19年厚生労働省令第155号)によりこれまで義務づけられていた特定化学物質作業主任者の選任等に加えて、作業環境測定の実施等が義務づけられている。
 一方、医療、歯科医療等の現場において、ホルムアルデヒドガス滅菌器等(以下「滅菌器等」という。)が普及しているが、これらの機器の中には、密閉方式の装置で、かつ装置内での自動中和処理により、滅菌対象器具を滅菌後に取り出す際にホルムアルデヒドが別の化学物質に変化していることから残存しない状態になっているものがある。
 このような滅菌器等を稼働させることにより行われる医療器具、歯科医療器具等の滅菌作業(滅菌対象器具の出入作業を含む。以下「滅菌等作業」という。)等を行う場合における特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)の主な措置の適用については下記のとおりであるので、了知されたい。
                         記
1  発散抑制措置について
  ホルムアルデヒド水溶液を滅菌器等に補給する作業及び滅菌器の点検作業(以下これらを「補給作業等」という。)並びに滅菌等作業について、ホルムアルデヒドのガスが発散しない場合は、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置の設置は要しないこと。
2  作業主任者について
  補給作業等及び滅菌等作業について、ホルムアルデヒドのガス等に労働者の身体がばく露されるおそれがない場合には、作業主任者の選任は要しないこと。しかしながら、例えば、補給作業等においてホルムアルデヒドが漏えいすることなどにより、労働者がホルムアルデヒドにばく露されるおそれがある場合には、作業主任者を選任の上、汚染され、吸入しないように作業の方法を決定し労働者を指揮させること等の措置を行う必要があること。
3  作業環境測定について
  補給作業等及び滅菌等作業について、例えばホルムアルデヒドが存在しないことにより労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第21条第7号の「特定化学物質を製造し、若しくは取り扱う屋内作業場」に該当しない場合には、作業環境測定の実施は要しないこと。
  また、当該作業場に該当する場合であっても、当該作業が臨時的頻度で実施されることにより昭和46年5月24日付け基発第399号の記のVIの3の(1)の「常時」に該当しない場合は、作業環境測定の実施は要しないものであること。
  ただし、法第65条第5項の規定により指示が行われた場合は、この限りでないこと。
4  健康診断について
  補給作業等及び滅菌等作業について、当該作業場所においてホルムアルデヒドのガスが発散しない場合には、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第13条第1項第2号ヲの業務に該当しないことから、安衛則第45条に基づく特定業務従事者の健康診断は要しないこと。
  また、ホルムアルデヒドのガスが発散する場合であっても、滅菌作業が臨時的頻度で実施されることにより安衛則第45条第1項の「業務に常時従事する労働者」に該当しない場合は、特定業務従事者の健康診断は必要ないこと。
  なお、ホルムアルデヒドが漏えいし、労働者がホルムアルデヒドにより汚染され、又は吸入したときは特化則第42条の緊急診断を遅滞なく実施すべきことに留意すること。
5  作業の記録について
  補給作業等及び滅菌等作業について、当該作業が臨時的頻度で実施されることにより特化則第38条の4の「常時作業に従事する労働者」に該当しない場合は、特化則第38条の4に基づく作業の記録(労働者の氏名、従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間、特別管理物質により著しく汚染される事態が生じたときはその概要及び事業者が講じた応急の措置の概要)は要しないこと。

 【ホルムアルデヒドガス消毒の効果・評価と安全性のデータを示す論文】
 アスカメディカルに確認したが、ホルムアルデヒドガス消毒の効果・評価と安全性のデータを示す一般的な論文はないとの返答(2024.10.7.)。

1.ホルムアルデヒドガスの殺菌効果ならびに残留の検討 : 器材の材質による殺菌効果ならびに残留の相違
 (医科器械学2003 年 73 巻 4 号 p. 227-)
www.jstage.jst.go.jp/article/ikakikaigaku/73/4/73_KJ00000819366/_article/-char/ja/
 加見谷 将人(岡山大医学部附属病院中央材料部)
 福島 伸明(岡山大医学部附属病院中央材料部)
 田中 清司(岡山大医学部附属病院中央材料部)
 小野 民子(岡山大医学部附属病院中央材料部)
 磯崎 博司(岡山大医学部附属病院中央材料部)
 高島 征助(岡山大地域共同実験施設)
 抄録
 われわれはこれまで,ホルムアルデヒドの殺菌効果について,その至適温度,時間,ならびにガスの透過性について検討し,本会でも報告をしてきている.今回,被殺菌器材の素材による殺菌効果および残留の相違について検討したので報告する.
 〔方法〕酸化触媒反応型循環式ホルムアルデヒドガス浄化装置を装備したホルムアルデヒドガス殺菌装置を使用した.殺菌力の指標となる生物学的インジケータとして,ステンレスプレート,各器材の素材で作成したプレートに2×10^6および2×10^4のBacillus Stearothermophilus(ATCC7953)を塗布したもの,ならびにガス用アテスト【○!R】を用いた.各器材は,滅菌バッグ(紙とプラスチックを合わせたもの)に収納した.被殺菌器材には同一の素材で内径の異なる管状のものも用いた.殺菌効果ならびに残留の判定は,器材の表面,管状のものでは内腔表面と外表面について,殺菌時間,濃度を変えて検討した.
 〔結果〕殺菌効果は,生物指標を塗布した素材によってガス濃度,殺菌時間,内腔の大きさ等の条件に差が認められた.残留は天然ゴムが最も高く,次いで,塩化ビニール,ポリウレタン,次いで明らかな差をもってポリプロピレン,ポリエチレンの順であった.塩化ビニールは可塑剤の添加量により残留量が異なることも確認された.
 〔考察〕生物学的指標を用いる場合,そのキャリアの材質,性状によって殺菌効果が異なることは,低温ガスプラズマ滅菌法等他の滅菌方法においても演者らのこれまでの研究で判明している.すべての滅菌,殺菌方法において,どのような素材,構造でも全て殺菌が可能であると考えるべきではなく,それぞれの適性を熟知して,使用することが大切である.
2.ホルマリンガス殺菌・無毒化法の残留毒性の生物学的評価
 (日本家畜臨床学会誌2004 年 27 巻 2 号 p. 51-55)
www.jstage.jst.go.jp/article/jjvc2001/27/2/27_2_51/_article/-char/ja/
 平田 統一(岩手大学農学部附属寒冷フィールドサイエンス教育研究センター御明神牧場)
 吉田 敬((株)アスカメディカル)
 安田 準(岩手大学農学部附属動物病院)
 抄録
 ホルマリンガス(FG)殺菌・無害化装置「Holl Steri」(アスカメディカル)の残留毒性を、従来法のエチレンオキサイドガス(EOG)殺菌法のそれと比較して、生物学的に評価した。0.25mlストローに6時間保存した精子生存率において、FG区は無殺菌の対照区に比べ6時間目で有意(p<0.01)に生存率が減少した。しかし、FG区はEOG区に比べて有意(2時問目:p<0.01、4時間目:p<0.05)に生存率が高かった。3日間の胚盤胞期牛胚培養において、FG区はガンマ線殺菌の対照区に比べ2日目で有意(p<0.01)に生存率が減少し、2.5日目にはすべての胚が死滅した。しかし、EOG区に対しては、培養後1、2日目に、有意(p<0.01)に生存率が高かった。10日間前後の牛卵子の体外成熟・受精・培養系において、FG区およびガンマ線殺菌の対照区の5細胞期以上への分割率と胚盤胞への発生率は、それぞれ60.0%と20.0%および65.0%と36.7%で、FG区でやや低かったものの有意差はなかった。一方、EOG区での胚発生はなかった。以上の結果から、FG殺菌・無毒化装置による殺菌では、無殺菌やガンマ線滅菌に比べ細胞毒性の残存がみられるが、従来広く用いられてきたEOG殺菌に比べ残留毒性は極めて少ないことが示された。

 参考に
ホルホープデンタル    709,500円
ラニニングコスト  1回あたり  360円
 (ホルマリン液、アンモニア液、中和消臭液、フィルターなど)

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