のぼるくんの世界

のぼる君の歯科知識

歯科診療所もプラズマ滅菌へ

2024年07月16日(火)


 医療器材の滅菌は大きく高温滅菌と低温滅菌に分類される。医療器材を滅菌するのにも最も安全かつ一般的な方法は高圧蒸気滅菌である。高温に耐えられない器材は低温滅菌(ガス滅菌)となる。
 これまでプラスチック製品やゴム製品など熱に弱いものは、エチレンオキサイドガス滅菌、ホルマリンガス殺菌(滅菌では無い)を行っていたが、共に毒性が強く歯科医院での使用に際し不安があった。
 低温過酸化水素ガスプラズマ滅菌は、将来のスタンダードになる。滅菌後に排出されるものが水と酸素であり、患者さんや働くスタッフにも優しい安全性の高い滅菌システムである。そして、滅菌が非常にスピーディー、滅菌終了後すぐに器材を取り出し、使用できる。治療器具の劣化問題も解決。歯を削る機械(エアタービンやマイクロエンジンのハンドピース)が高温にならないため劣化を防ぎ長持ちする。また、歯の根の治療で使用する「リーマー」や「ファイル」といった細い金属の器具も金属疲労を起こしにくく、折れなくなる。根の治療中に折れた場合、抜歯になる危険性がある。欠点は機器や維持費が高額であること。通常の滅菌器に比べて6倍以上の金額。
 参考に
 歯科診療における消毒・滅菌の考え方
kojima-dental-office.net/20090728-117

低温プラズマ滅菌
 (RENO低温プラズマ滅菌システム | メディア株式会社)
www.media-inc.co.jp/icbu/product/reno/
 ・安全で環境にも安心な過酸化水素ガス低温プラズマ滅菌。
 ・高温に耐えられない器材も滅菌でき、内腔器材にも優れた滅菌力を発揮。
 ・過酸化水素ガス低温プラズマ滅菌のしくみ
   高真空状態のチャンバー内に、気化した過酸化水素ガスを注入し、
    高周波を与えることで、過酸化水素ガスをプラズマ化。
   フリーラジカルにより微生物をDNAレベルで不活化する滅菌法。
 ・人にも環境にもやさしい
   過酸化水素は残留性がなく、水と酸素に分解されるので、
   環境にも、作業を行う人にもやさしく安全性が高い滅菌法。
 ・低温滅菌
    55℃未満の低温で滅菌ができるので、熱に弱い器材も滅菌可能。
     (ゴムやプラスチック、剪刀類など)
    低温滅菌のため、滅菌終了後すぐに器材を取り出し、使用できる。

過酸化水素ガスプラズマ滅菌とEOG滅菌
(株式会社 名優 2024年6月26日)
meilleur.co.jp/salway/journal/what-is-gas-sterilization/
 医療機関で実施されているガス滅菌には、4種類
  ①EOG滅菌
    ・40~55℃の酸化エチレンガスで菌を死滅させる
    ・湿気が存在することにより菌体を膨潤させ、
      水と親和性がよいEOが菌体内に浸透
    ・医療施設内で用いられなくなっており、専門業者が行うことが一般的に
    ・毒性が極めて強く作業者保護が必要である
    ・長時間のエアレーションが必要である
  ②過酸化水素ガスプラズマ滅菌
    ・真空中で過酸化水素低温ガスを発生させて、
      約400Wの高周波エネルギーによりガスをプラズマ化
    ・プラズマ状態で発生する自由電子や自由イオンは、微生物の細胞壁を破壊
    ・その後ガスは水と酸素に分解。滅菌温度は50℃前後。
    ・残留毒性がなく、エアレーションが不要
      滅菌工程終了後は滅菌物をただちに使用可能
    ・紙、綿布、ガーゼなどセルロース系の材質を含むものには使えない
      滅菌包装材においても、紙や綿布、ガーゼなどの素材の物は使用できない
  ③過酸化水素ガス滅菌
    ・減圧沸騰によりガス化させた過酸化水素で菌を死滅
  ④LTSF滅菌
    ・ホルムアルデヒド蒸気で菌を死滅
    ・滅菌適応範囲は、EOG滅菌とほぼ同じ
    ・効果は、国ごと、または専門家ごとに見解が分かれている
    ・米国では実施されていない
    ・55~75℃とガス滅菌の中では比較的高い温度
    ・認証を取得したのは2011年であり、第3番目の低温滅菌として位置付け

 

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