オムツ内排便『ゼロ』達成報告会・記念講演会
2016年11月12日(土)
特別養護老人ホームあかしあ荘
「科学的介護への挑戦」
~介護力向上に取り組んだ3カ年の成果と課題~
日時 平成28年11月12日(土)午前9時30分から午後12時15分まで
場所 石川県西田幾多郎記念哲学館 哲学ホール 303人
www.nishidatetsugakukan.org/mainmenu2_shisetsu.html
主催 社会福祉法人 相生会
care-net.biz/17/aioikai/
12日(土)石川県西田幾多郎記念哲学館にてオムツ内排便『ゼロ』達成報告会・記念講演会開催されました。特別養護老人ホームあかしあ荘の取り組み、事例報告と国際医療福祉大学大学院教授 竹内孝仁氏の記念講演がありました。
会場内は超満員でした。市民の方々の期待感があふれていました。介護士さんの事例報告も生き生きとしていました。駐車場、会場内、受付のスタッフさんの一生懸命さが伝わり、自立支援介護へのチームとしての熱意をひしひしと感じました。しっかり噛めるようにする歯科医の責任を痛感しました。
内容
A.特別養護老人ホームあかしあ荘の取り組み
B.事例報告
事例1「人生、これからやわいね」 介護士 大澤卓也
事例2「歩いて妻のもとへ」 介護士 櫻井篤史
事例3「あんやと、あんやとね」 介護士 中 恵実
C.記念講演会「新しい老人ホームが誕生した」
講師 国際医療福祉大学大学院教授 竹内孝仁氏
www.iuhw.ac.jp/daigakuin/faculty/health_welfare/care/staff/takeuchi_takahito.html
メモ
A.特別養護老人ホームあかしあ荘の取り組み
1.科学的介護への挑戦
①基本理念
笑顔で元気にその人らしい生活をしていただく
「自立支援」を推進する
「病気になったら病院で治す、要介護になったら特養で治す」
②ビジョン
・科学的介護で4つの基本ケアに取り組み、
日常生活動作をもう1回自立できることに挑戦する
・施設を挙げて、オムツ内排便「ゼロ」に取り組む
③戦略、戦術
・老人福祉施設協議会が主催する科学的介護実践講座「介護力向上講習会」に参加
・週4回のケア会議、月1回の委員会
①水分 1日1500ml以上の水分摂取
【水分摂取による効果】
*日中の覚醒を促し生活リズムをつくる
*活動性の向上
*夜間不眠の解消
*認知症状の改善
朝の目覚めのコップ1杯の水
kojima-dental-office.net/blog/20210816-14859
・午前に1日量の半分以上摂取する
・動く前後に飲む
・水分の種類を増やす
・昔の習慣、好みを知る
*水分の出入りから飲水の量を算出
*水分不足による影響(表2)
*心疾患の方は、浮腫、体重増加を観察
②食事 1日1500kcal摂取
・安全な食事の条件
常食(食物繊維)
水分
自力摂取
姿勢(座位姿勢)
義歯
・口腔機能
食事前後に口腔ケア、口腔体操
③排便 水分摂取量と活動量の増加により、下剤に頼らずトイレでの自然排便
・起床時の冷水、冷乳が効果的
・排便間隔、時間帯をつかむ
・1日1回以上の座位排便の促し
・食物繊維の補てん(寒天ゼリー、ファイバーなど)
④運動 歩行、活動
立位訓練→つかまり立ち→目的を持った歩行
・歩行は起立性大腸反射が起こり自然排便に繋がる
・車椅子から椅子へ移行
・歩行による活動量を増加
・離床の促し
3.取り組みの結果 入居者100人
平均介護度が良くなる
トイレ排便率が向上
水分平均摂取量が増加
4.今後の課題
*水分摂取量1500ml
(水分量の増加に伴い活動量の増加)
*食事の常食化
*認知症の改善
B.事例報告
1.事例1
①アセスメント
課題 ケアプラン
・水分量の不足 ・水分摂取量の増加
・活動量の不足 ・活動量の増加
・ミキサー食の摂取 ・常菜の摂取
・定時下剤の使用 ・定時下剤の中止
②実際の取り組み
・水分摂取量が増加
400ml →1300ml
飲み物の種類を増やし、好きな飲み物を選択させる
・活動量の増加
トイレ誘導時に不安定で立位できず、本人も消極的
(職員が抱えて2人介助)
→手すりを握って健常側片足つかまり立ち
(1人介助)
移乗時に少しでも足を動かしてもらう
消極的だった→自ら足を出してくれるようになった
・ミキサー食 → 見守りながら常食
スプーン→箸
・定時下剤の中止 →トイレでの自然排便
【便秘を治す7つのケア】
水分1500ml以上
歩行(歩行練習)、体操などの運動
常菜 最も食物繊維が多い
食物繊維の補てん ファイバー、寒天ゼリー
規則的生活(睡眠覚醒リズム)
定時排便
座位排便
2.事例2
①アセスメント
課題 ケアプラン
・水分摂取量の不足 ・水分摂取量の増加
・終日オムツ使用 ・トイレで排便
・車椅子使用 ・歩行
②実際の取り組み
・水分摂取量増加
入所時850ml、 2,3口飲んですぐに拒否
毎晩晩酌していたので、徳利とお猪口で水分提供
ノンアルコールビール→お茶
酒は美味いと飲むようになり、昼はコップでお茶を飲むようになる
夜は徳利とお猪口でお茶、酒を飲んでる気分になれる
・トイレで排泄
紙オムツ→紙パンツ→布パンツ→オムツ内排便ゼロ達成
・歩行
1ヶ月歩いていない 歩くといことを忘れている
5秒のつかまり立ち
介助して5,6歩(約1m)
16週目には歩行器で180m歩行
妻の部屋まで杖をついて歩いていきハーモニカを吹いてあげた
③まとめ
・基本ケアを行うことによって意欲の回復、上昇ができた
3.事例3
①アセスメント
課題 ケアプラン
・水分摂取量不足 ・水分摂取量の増加
・食事自力摂取拒否 ・食事を自力摂取
・便失禁がみられる ・トイレで排便する
・活動量不足 ・活動量の増加
・認知力の低下 ・認知症の改善
②実際の取り組み
・水分摂取量の増加
入所時900ml トロミをつけて
↓
いろんな飲み物を用意して選んでもらう
コップなど器も多くそろえた
↓
1ヶ月後1400ml以上飲用できるようになった
トロミは必要なくなった
自力摂取できるようになる
・食事を自力摂取
他人の食べる姿勢が見える座席に変更
家族と一緒に寿し屋で食べられるようになる
・トイレで排便する
紙パンツを使用して、便失禁状態が見られていた
↓
布パンツを使用してオムツ内排便ゼロ
立ち上がる→便意の現れ
・認知症の改善
発語が少なく、行動の拒否があり、笑顔がない
↓
2ヶ月後翌しゃべり、笑顔になった
C.記念講演会「新しい老人ホームが誕生した」
講師 国際医療福祉大学大学院教授 竹内孝仁氏
講演記録 資料のp18~20の赤線部分を読んでみてください
1.水飲み運動
・水の生理学
・1日1500ml (便秘の方は2000ml、下剤は敵)
・飲水の少ない人と物忘れに相関がある
・水を飲む人はトイレのために起きるが熟睡できる
2.オムツ
・オムツをする→トイレに行かなくなる→動かなくなる→歩けなくなる
・人間性が音を立てて崩れていく
・人格を踏みにじられる
3.ハイレベルな施設
・オムツ内排便「ゼロ」に取り組む
・全国6000の特養のうち110カ所
石川県は多い
・地域自立相談室を作り地域の核となる
4.介護保険のパラダイムシフト
経済活性化会議 総理、財務、厚労省
自立支援介護に向かう
①できないことを介助する→できないことをできるようにする
②専門職がみていて介護度が重くなるのはおかしい
③良くなっていくと報酬が下がるのはおかしい
5.教育
①素人でもできると思われている間は給料は上がらない
②理論に裏打ちされた専門職になれば地位が上がる
竹内孝仁氏ご紹介
1966年 日本医科大学卒業。東京医科歯科大学医学部整形外科所属
1978年 東京医科歯科大学整形外科講師、同大学リハビリテーション部助教授
1991年 日本医科大学教授(リハビリテーション科)
2004年 国際医療福祉大学大学院教授(医療福祉研究科)
この間、特に、1973年から特別養護老人ホームにおけるケアや在宅ケアに関する研究に取り組まれ、科学的介護を通じた「おむつゼロ」などを提唱。
現在、日本ケアマネジメント学会副理事長、リハビリテーション研究会会長、日本自立支援介護学会学会長等の要職を歴任され、介護福祉の第一人者として幅広くご活躍中。
- カテゴリー: 歯科訪問診療