咬合の安定を考える
2010年12月01日(水)
虫歯による歯の崩壊があまりにも進むと咬み合わせに変化が起こり、顎関節や全身にも影響を及ぼす。複雑に絡み合った様々な要素を解きほぐし、問題点を説明し治療計画を提案し、全体像と優先順位を相談する。間食を含めた食事の改善とプラークコントロールの定着を目指す。同時に全身状態や口腔内の反応と健康に対する意識の変化を見ながら、順序立てて治療を進めていく。
患者 24歳女性
初診 昭和62年5月12日
主訴 右上臼歯部冷水痛と上顎前歯部の補綴
現症 頭が左へ傾く
閉口時の右顎関節にクリックがある
下顎の正中は左へ偏位(下顎は3前歯)
咬合が不安定で、交叉咬合(左上2~6が反対咬合)
左下5~7が舌側傾斜
左上2番が舌側に転位している
左上1番から右上2番までが欠損していて義歯が装着されている。
臼歯部の多数歯にカリエスがある
経過
5/12 パノラマX線写真、模型
右上6番抜髄、右上5番歯髄保護処置、右上4番抜歯
(仮治療方針)
①炭酸飲料の禁止やよく噛んで食べる等の食事指導と
プラークコントロールの定着
②痛みの対応を含めた根管内処置及び抜歯
③症状が落ち着いたら咬合安定を考える
5/13
左上6番抜髄
5/15
右下7番抜髄
5/19
右下6番感染根管処置
5/20
MKG所見
閉口時1.2㎝ぐらいにクリックが認められる
安静位から咬合時に左後方へずれる
治療方針の提案(仮治療方針③の咬合について)
④右上3~5を頬側へ拡大する
⑤マウスピースによる筋肉位で咬合安定
⑥経過観察して補綴
5/21
左下6番感染根管処置
5/22
ほとんど自覚症状がなくなる
8/18
MKG所見にてクリックはなくなるが、安静位から咬合時のズレは相変わらず
リンガルアーチにて右上の側方拡大を開始する
9/22
顎関節X線写真の所見
咬合時の左右顎関節形態や位置に問題はない
10/1
下顎に筋肉位のマウスピースを装着する
左を僅かに高くし、咬合時の左後方へのズレを補正する
昭和63年
1/20
左上5番~右上4番までのブリッジを装着する
1/29
MKG所見はほぼ正常
これ以降1~3ヶ月ごとの定期検診
平成3年
7/1
妊娠6ヶ月
左上5番~右上4番部の歯肉が赤く腫れている