小島歯科医院 名誉院長ブログ

先天性欠如と乳歯残存による萌出障害

2023年06月27日(火)


 局所的な現症だけにとらわれずに、広い視野を持って診察し、しっかりと診断をする。先天性欠如や乳歯残存がもたらす影響について、患者さんに正確に事実を伝え、必要な処置を提案し、同意を得て適切な時期に実施する。併せて、食生活の改善指導と口腔機能向上の訓練も行う。
 萌出障害の咬合誘導
kojima-dental-office.net/20111016-2447#more-2447
 症例
患者 9歳男性
初診 2021年12月16日
主訴 歯並びが気になる
現症 左下4番が唇側に、左上2番口蓋側に萌出

経過
12/16 口腔内の診察とX線写真所見から現状を説明し、治療方針を提案する。
 【パノラマX線写真所見】
 ・下顎両側2番が先天性欠如
 ・左下2番が先天性欠如のため、左下3番が近心に萌出し、左下Cが歯根吸収されずに残存 
 ・左下C残存により左下4番が萌出方向の異常をきたし遠心傾斜する
 ・左下E近心根が左下4番により歯根吸収
 ・左下4番が左下Eによる萌出障害
 ・左下4番に押されて、埋伏している左下5番が萌出障害
 ・埋伏している左下5番も萌出方向の異常をきたし遠心傾斜し左下6番の近心根に近接
 【治療方針】
  1.プラークコントロールの確立
  2.食べ方の工夫とT4A装着訓練による口腔機能の改善
  3.左下CとEを抜歯
  4.左下4,5の経過観察&咬合誘導
  5.定期検診を続ける
12/21 口腔機能を評価
       唾液量2.2ml/5分、口唇閉鎖力が弱い、6.2ニュートン
       タ、ラの発音が聞き取りにくい
       舌打ちの音がクリアではなく、食べるときにクチャクチャ音がする
      しっかり噛んで食べる工夫を指導、T4A装着訓練を開始
      歯周検査+ブラッシング指導

12/25 左下CとEを抜歯
12/28 左下4番が遠心傾斜して萌出し、左下3番との間隙が1歯分

 2022年
1/25  左下4番が近心へ戻ることを期待するも、左下6番に近づいていく
      左下5番のスペースが不足
4/26  左上2番が唇側へ移動

7/26  口腔機能はよくなる
       唾液量は増加、3.0ml/5分、口唇閉鎖力も改善7.5ニュートン

8/17~9/29 左下4番と前歯と連結した3番との間をパワーチェンにて牽引

10/13 左下4番は近心移動しているが、左下4番と6番との間隔が開かない
      左下7番の萌出圧力により6番が近心移動
左下4番と6番との間にスプリングコイルを使用

11/1  間隔が順調に拡大、デンタル確認

12/30 順調
 2023年
3/14  左下5番未萌出、スペースは確保、デンタル確認

5/6   左下5番萌出、ピンホール
      デンタル確認、6番のバンドが5番の萌出を阻害しているため除去

6/27  左下5番萌出

12/11 左下5番咬合

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