側方拡大とT4A併用による上顎前歯の前方移動
2011年12月10日(土)
矯正を内に秘めた中高年が増えているが、そのほとんどの方は、煩わしさからあきらめている。ゆっくりでもいいから、目立たなく苦痛の少ないことを望んでいる。
上顎2番の舌側転位の患者さんに対して、以前はリンガルアーチに補助断線を付けて治療していたが、食事など日常生活にかなり苦労があった。今回、床型エキスパンションを夜間に使用し、日中に1時間ほど筋機能訓練用のT4Aを入れて口唇閉鎖と鼻呼吸、舌運動の練習した。違和感なく治療を続けることができ、実施後3か月ほどでかなり改善した。側方拡大することにより口の中が広くなり、T4Aの効果も相まって前歯も前方へ拡大してきた。その後、床型エキスパンションを中止し、夜間もT4Aへ切り替えた。上下臼歯部の咬合も安定してきた。
症例
患者 63歳女性
初診 平成23年4月18日
主訴 左上7番が腫れて痛い
現症 左上7番の腫脹と左上下6、7番の咬合痛
上顎両側2番と下顎両側5番が舌側転位
経過 4/18 歯周基本検査にて歯周炎による腫脹と診断し、抗生剤を投与する
4/22 7番部の腫脹は消退し、痛みもなくなる
赤染めによるブラッシング指導とスケーリング
4/26 今後の治療計画を説明する
プラークコントロールの徹底と定期的なクリーニング及び
①T4Aによる筋機能訓練
②床型エキスパンションによる側方拡大
③リンガルアーチによる前方拡大
5/12 T4Aの夜間使用と昼間1時間訓練(口唇閉鎖と鼻呼吸)
その日から朝までT4Aは外れず、気持ちよく眠れた
5/19 エキスパンション開始
(毎日ネジを45~90度回転させ拡大する)
T4Aは昼間1時間訓練のみ
6/22 左右3~5は側方拡大
左右2番は唇側へ移動
7/28 左右2番は切端咬合
口の中が広くなり快適になった
8/18 拡大を終了し保定装置として夜間使用する
上下臼歯部の咬合が不安定になる
9/28 左2番は唇側へ移動、右2番はもう少し
床型エキスパンションの使用を中止し、夜間もT4Aを使用する
12/7 左右2番とも唇側へ移動
上下臼歯部の咬合は安定する
平成24年
1/20 下顎前歯の空隙が狭くなる
装着のコツ
床型エキスパンションは半日外していると、歯が内側に少し戻る。そのため、いきなり拡大すると入りにくくなるので、30分から1時間前日の状態のまま試着し、確実に入ることを確認してから、ネジを回し拡大したものを装着して就寝する。