臨床家のための口臭治療ガイドライン
2002年11月10日(日)
ー口臭症の診断・治療と生体ガスによる歯科臨床検査-
開催日時:11月10日(日)午前9時~午後1時
講 師 :宮崎秀夫氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科教授)
開催場所:都ホテル5階兼六の間(JR金沢駅正面、076-261-2111)
参加対象:歯科医師、スタッフ
講演抄録
基本的な健康被害や重篤な健康問題が少なくなってきた現代先進諸国では,対人サービスが主体となる社会構造変化とも相まって,口臭の関心は一層高まってきました。日本では国民の10%が口臭問題を抱え,実際に,社会的許容範囲を超える口臭を持つ人が23%認められます。この結果は,いろいろな他の疾患と比較しても,口臭症は高い治療デイマンドと治療ニーズの存在を示唆しています。そして,口臭発生原因の大部分が口腔内に限局することから,その治療は歯科医師の役割以外考えられません。
口臭に関して,1)口臭を気にしたことがないし,実際の口臭はない人,2)口臭がないのにあると信じ込んでいる人,3)社会的容認限度を超える口臭があり,本人もそれを認識している人,4)確かな口臭を持っているがその認識がない人,の4タイプに,人は分類されます。このうち,口臭を主訴として来院されるのは2)と3)のグループです。心因性の口臭患者のケアは単純ではありませんが,診断手順を誤らなければ決して怖くはありません。また,実際に匂いがある真性口臭症患者は,通常行う歯科治療と口腔清掃でほとんど100%治癒します。
口臭がある真性口臭症の原因で最も多いのは歯周病であります。一方で,歯周病原細菌を含む嫌気性菌が産生する口臭ガスは,歯周組織破壊を促進させることが明らかになりました。このことは,口臭治療は単に,社会性の中で患者の要求に応えるに留まらず,歯周病予防に欠かすことができないものと捉えざるを得ません。また,歯周病性の口臭成分は,舌苔由来の生理的口臭成分と配合が異なり,メチルメルカブタン濃度が高いことがわかっています。そうであれば,口腔からの生体ガス(口臭)をバイオマーカーとして,歯周病の診断,治療予後の判定,あるいは,定期検診(メインテナンス)での歯周病スクリーニングのための臨床検査に有用であるかもしれません。
新潟大学歯学部附属病院では1998年4月1日の口臭専門外来オープン以来,患者数は500名を超えました。今回は,大学病院に来院した患者の診断・治療を通して,これからの歯科医療における口臭治療の意義について考えてみたいと思います。
当日の講演は,1)口臭総論(口臭治療のニーズとデイマンド,嗅覚の仕組みと嗅覚疲労,口臭の日内変動,口臭の原因,口臭による障害,介護と口臭),2)口臭の検査・診断(診断の国際分類,官能検査,半導体センサーによる検査,ガスクロ検査,簡易型ガスクロの開発,その他の口腔診査),3)口臭の予防・治療(診断・治療のフローチャート,物理的舌苔清掃,含嚇剤,亜鉛製剤の口臭除去効果,全身疾患由来の真性口臭の症例,心因性口臭の症例)を含み,どのような口臭主訴患者さんにも対応できる内容を網羅していると思います。
(宮崎秀夫)
一宮崎秀夫氏フロフィールー
氏名:宮崎秀夫(みやざきひでお)
略歴:
1982.3.31 九州歯科大学大学院歯学研究科修了
1982.4.1 九州歯科大学口腔衛生学講座助手
1984.12.1 九州歯科大学口腔衛生学講座講師
1986.10.1 九州歯科大学口腔衛生学講座助教授
1995.12.1 新潟大学歯学部予防歯科学講座教授
2001.4.1 新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻
口腔健康科学講座口腔保健推進学分野教授(~現在)
加入学会:
IADR,
American Association of Public Health Dentistry(AAPⅡD),
International Society for Breath Odor Researth(会長),
日本口腔衛生学会(理事),
老年歯科医学会(評議員),
日本歯周病学会(評議員)ほか
案内文
我々が口臭に関心を持つようになったのは、the Quintessennce 1999年4月号からの9回に及ぶ『歯科のための 口臭臨床の指針』と題した連載があった頃であろうか。その頃は全国的に、訪問歯科診療やそれに付随した訪問口腔ケアに注目が集まっていた頃でもあり、石川県保険医協会歯科部もそれに沿った講演会をシリーズ企画、開催していた頃でもあった。
開業医の多くは訪問歯科診療には必要と認めつつも、それにはやや及び腰であったが、日常診療における歯周疾患との密接な関係や時代的なトレンドから、口臭そのものにはこれからのニーズが高まるとの予想があり、少なからず期待を持ち、注視していた頃でもあった。9回シリーズの著者達の中で、ブリティッシュコロンビア大学の八重垣 健先生や東京医科歯科大学の川口陽子先生は存じ上げなかったが、新潟大学の宮崎秀夫先生の名前は良く存じ上げていた。当方は、シリーズ連載が始まった頃は、口臭の測定法や口臭における臨床的意義などにおいては、臨床的活用には否定的な考えをもっていた。当方自身の勉強不足のためもあるが、測定法や原因論において、今ひとつピンと来るものがなかった。ただ、口臭原因物質のVSC産生機序や産生部位などについての記述には関心を持って読んでいたことを覚えています。そのうち、宮崎先生の統計学的手法を用いた論文が出るにおよび、これはエビデンス的にも確かな根拠があると言えそうだとの予感を持つにいたったことを記憶しています。
そして、しばしの時を経て、クインテッセンス社から『臨床家のための口臭治療のガイドライン』が出版されるにおよび興味が、歯科医にとっての必須治療項目になるとの確信に変わっていったのです。
全国的には、今年の春、某歯科医療機器メーカーから口臭測定器が比較的安価に発売されると、現在まで、注文に製造が追いつかない状況にあるという。やはり、トレンドは来たようです。
この機に、宮崎先生の『口臭』に関する講演会を石川県で開催できることは、実に、タイムリーであり、口臭治療を始めたいという先生ばかりでなく、口臭そのものに対する理解を深めためたいという先生方のためにも、絶好の機会を提供できる講演会になると思っています。
おおくの先生方の参加をお待ちしています。
参加費会員:500円、会員スタッフ500円
非会員5,000円、非会員スタッフ1,000円
※非会員の方は、当日受付にて入会申し込みいただければ会員会費で受講できます。申込み:次のいずれかの方法でお申込み<ださい。
①裏面の申込書に必要事項を記入の上、Fax送信
②必要事項を明記した電子メールを下のアドレス宛てに送信
③電話による申込み
石川県保険医協会
〒920-0902
石川県金沢市尾張町1-9-11 尾張町レジデンス2階
電話:076(222)5373
Fax:076(231)5156
Email:iskw_kudo@doc-net.or.jp
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