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糖尿病と歯肉を考える

2012年06月15日(金)


%e7%9f%b3%e6%ad%af%e5%ad%a6%e5%a0%b1%e4%ba%8c%e5%8f%b7石歯学報二号に執筆する。
はじめに
 開業して30数年を迎える。開業当初、患者に追われる日々が続いた。そんな中でも、カルテはナンバ-リングし、ファイリングして、口腔内写真、模型、レントゲンフィルムなどの記録を残し、整理保存し、いつでも取り出せるようにしていた。そして、それらの資料を基に、毎日自分なりに反省し、よりよい処置を目指していた。この基本的姿勢は故玉井先生の許で学んだ一年間で身に付いたように思う。
 歯周病のアプロ-チには記録作りが大切である。多くの患者さんを観察する中で、糖尿病患者さんに特徴的な歯肉が多く見られることに気づいたので、健康な人や腎疾患の患者さんと比較して報告する。

健康な人
症例1
患者  54才女性
初診  1987年2月12日
主訴  上顎前歯部の歯肉から出血する
現病歴 3ヶ月前より出血があり、触らないようにしていたら、発赤・腫脹を伴ってきた
現症  上顎2から2の歯肉が赤く腫れている
経過
 初診日に口腔内の状態と歯周病の原因、治療方針を説明する。翌日には一生懸命ブラッシングしたために歯肉からの出血が見られる。赤染めによるブラッシング指導を開始する。担当歯科衛生士のアドバイスを受け、ブラッシング技術を工夫し、よく噛む食事を心がけたので、1週間・2週間・3週間・1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月と次第に歯肉の状態は良くなっていく。この時点で補綴物のマ-ジンを修正する。そして、4ヶ月・5ヶ月とさらに健康な歯肉へと変化していく。8ヶ月・9ヶ月・1年・1年3ヶ月・1年6ヶ月・2年・3年・4年と定期検診を続けていくことにより、健康な歯肉を維持していくことが出来る。

症例写真は
kojima-dental-office.net/20080728-1041

症例2
患者  43才女性
初診  1992年1月6日
主訴  右上1番口蓋側の発赤・腫脹
 来院当初見られた歯肉の赤い腫れは本人の努力によりかなり改善された。しかし、3ヶ月経過しても健康な歯肉の状態ではなかったので、局所麻酔を施して歯根面をきれいにした。術後20日で健康な歯肉が回復し、その後定期検診を続けられ20年後においても健康な歯肉の状態が続いている。

症例写真は
kojima-dental-office.net/20100128-1065

腎疾患患者さんの歯肉
症例3
患者  41才男性
初診  1993年9月27日
主訴  左上6番の咬合痛
全身状態  慢性糸球体腎炎
 腎臓疾患の歯肉では『もこもことした』繊維性腫脹は著しいが、発赤はあまり見られない。この症例では、歯肉はどちらかと言えば蒼白である。初診時と2年半後を比較すると、腫脹は改善したが、炎症の変化が現れにくく、変化も遅い。

症例写真は
kojima-dental-office.net/19970927-3074

症例4
患者 39才男性        
初診 1989年11月14日
主訴 左下5番冷水痛
全身状態  腎不全にて腹膜透析、1995年8月に腎移植
 初診時、歯肉腫脹は見られるが、発赤は見られない。綺麗に磨けるようになったが、歯肉の状態はほとんど変わらなかった。腎移植後歯肉の表情が変わり、発赤、腫脹が強くなっていった。レントゲン写真でも著しい骨吸収が認められた。免疫抑制剤の影響と思われる。周術期からセルフケアを包み込む短い間隔のプロフェショナルケアで見守っていきたかった。 

症例写真は
kojima-dental-office.net/19970927-3074

糖尿病患者さんの歯肉
症例5
患者 53才男性       
初診 1987年5月8日
主訴 歯肉出血と右下1番の動揺
全身状態 糖尿病
 糖尿病患者の歯肉は『ぶよぶよした』発赤・腫脹が強くあらわれるが、歯肉の改善もわかりやすい。この症例の場合、来院当初見られた『ぶよぶよした』赤く腫れた歯肉は本人の努力によってだんだんきれいになっていった。しかし、プラ-クコントロ-ルを続けることは大変なことであり、4年すぎる頃から崩れ始め、何とかしてあげたいが徐々に歯が喪失していく。プロフェッショナルケアで多いに補っていきたい。

症例写真は
kojima-dental-office.net/20040726-3084

症例6
症例患者  49才男性
初診  1994年7月26日
主訴  右上1番の自然脱落
全身状態 糖尿病、高血圧
 この症例の場合も出血しやすい赤く腫れた歯肉が特徴的である。来院当初から本人の努力と当院でのクリーニングを続けて、体の調子が悪い時は腫れることもあったが、何とか歯を維持することが出来ていた。それでも、長い間ただれた弱々しい赤く腫れた歯肉が続いていた。しかし、10年後、春から1時間畑仕事をするようになってから、みるみる歯肉の状態も良くなり、体の調子も良くなり薬の量も減ってきた。

症例写真は
kojima-dental-office.net/20040726-3084

考察
 歯周病と糖尿病は生活習慣病に分類でき、お互いにリスクファクタ-を共有している。たとえば、加齢、喫煙、ストレス、生活環境は、共通したリスクファクタ-である。また、糖尿病は歯周病のリスクファクタ-であり、歯周病は糖尿病のリスクファクタ-である。歯周病があるから糖尿病になるといった因果関係を意味しているわけではない。歯周病を単に口腔内の局所の感染症というよりも、全身に影響を与えうる感染症ととらえる必要がある。歯肉の状態は糖尿病や歯周病のコントロール評価の指標になりえる。これからも医科との連携を進め、患者さんの健康に寄与していきたいと思う。

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