小島歯科医院 名誉院長ブログ

キシロカインのアレルギーではありませんか?

2003年07月30日(水)


 昭和28年生まれの女性患者です。平成5年に胃カメラの検査を受けたときに、耳の後ろがかゆくなり、その直後から全身に蕁麻疹がでて、お腹が痛くなり、吐き気が3回ほどあり、悪寒戦慄があり、胃腸科でいろいろ処置後、中央病院で様子を見て軽快しました。原因は分かりませんでした。次の朝には蕁麻疹は治っていました。

 そのことをすっかり忘れていて、また平成13年に、キシロカインの局所麻酔をして1時間半後に腕の手術が終わり、その直後に同じ事が起きました。4時間ほどで自宅に帰りました。
本人はその時以前にそんなことが有ったこと、そういえば平成10年に当院で抜歯していたが異常は無かったことを思い出しました。整形外科の開業医の先生は「胃腸科でもキシロカインスプレーを使うでしょうし、キシロカインのアレルギーではありませんか、しかし抜歯時に異常がなかったのは不思議です」と言われました。後日聞きに来られましたので、キシレステシンを使いましたと患者に伝えました。以前から通院していていろいろな処置がしてありました。抜歯する前に聞いていたらどうしていたでしょうか。

 その患者が昨日歯が少ししみると来院しました。ブラシング時の力のいれ過ぎが原因でしたので、指導して1週間様子を見ることにしました。「これからもあるかも知れないから良く調べたいです。どこへ行けばいいですか」と言われました。当院で抜歯していなかったら、抜髄しなければならなくなったとき浸潤麻酔を躊躇します。どう対処すれば良いでしょうか。

内科医 1
 経過を読ませていただいた限りではやはりキシロカインアレルギーのように思います。抜歯の時に反応が起きなかったのは
①投与量が少なかった (反応の閾値以下でした)
②もしエピネフリンとの合剤ならこれがアレルギー反応に対して抑制的に働きました
③運がよかったです
等の原因が考えられると思います。

 キシロカインアレルギーかどうかの確定診断には
①チャレンジテスト
②リンパ球刺激テスト(D-LST)
が有効ですが、①はリスクが高く救急救命の準備が不可欠です。
②はVitroの検査なので安全ですが陽性率が低く偽陰性がとても多いです。

 原則としては「疑わしきは罰しなさい」ということなので、もう使用しないのが無難という事になります。

内科医 2
 キシロカインのアレルギーは、キシロカインそのものにアレルギー反応があるのではなく、溶剤に対するアレルギーであると聞き及んでいます。したがって、すべてのキシロカインがダメというわけではないと思います。先生の使用したキシレステシンは、大丈夫なのではないでしょうか。

外科医 1
 両先生がおっしゃるとおりだと思います。
 激しい反応の場合、スプレーだけで呼吸停止に至りますから、それほど激しい反応ではないことははっきりしていますよね。
 こういう場合、大学や県中で精密検査あるいは、対処方法など診察の上教示していただけるものでしょうか。よろしくお願いします。明日は我が身ですし・・・

内科医 2
 金沢大学麻酔科に紹介しますと、キシレステシンが本当に大丈夫かどうか調べてくれると思います。チャレンジテストのほうは前もってインフォームドコンセントをある程度得てからでないと紹介しても難しいと思います。(大学で対応してくれるかどうかわかりませんおそらく二の足を踏むと思いますが・・・)一度きいてみます。
 リンパ球刺激試験は民間の検査センターでも対応可能と思いますが今のところ(将来も?)保険適応外です。しかも休日の前日・前々日は検査できなかったはずです。容器も特殊なので普通は要予約です。料金も含めて患者さん・検査センターとよく相談する必要がありますが、どこの医療機関でも検査そのものは不可能ではありません。
 

大学病院内科医
 今までにキシロカインアレルギーの精査といった具体的な依頼を受けたことはありません。検査方法としてはパッチテスト、ブリックテスト、皮内テストの順に安全な方から行って皮膚局所の発赤、眼瞼の浮腫等を観察します。キシロカインアレルギーがはっきりすれば歯科の治療も全身麻酔になるでしょう。
 私は以前キシロカインでショックを起こした既往のある患者さんに胸腔ドレーンを入れたことがあります。その時はラボナールを用いました。医者2人がかりで1人は術者・もう1人はラボナールを静脈注射しながら呼吸停止の事態に備えて気管内挿管の準備一式を傍らに置いての作業でした。幸いトラブルはなかったのですがとても気持ち悪かったです。

当院
こんなに早く適切なアドバイスありがとうございます。浸潤麻酔をしない方法で対処したいと思います。必要なときは口腔外科に紹介したいと思います。精密検査は患者と相談の上考えます。

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