小島歯科医院 名誉院長ブログ

5歳児の反対咬合

2023年02月25日(土)


5歳児の反対咬合②1 当院では幼児から小学生の食べる機能を支援している。食事の姿勢や食べ方、食形態、口唇閉鎖等々である。その中で、反対咬合ではムーシールド、歯の萌出スペース不足ではT4Kも一つの選択肢として考えている。一番の変化は舌の可動範囲増ではないかと思う。舌が口腔底によどんでいるような反対咬合の幼児に、ムーシールドを2,3ヶ月夜間に装着していると、舌尖が口蓋乳頭部にしっかり当てることができるようになり、舌打ちがうまくできるようになり、前歯部の被蓋が改善してくるようである。飲み物がなくても奥歯でしっかり噛んで食事ができるようになり、唾液の分泌量も増えていく。食事時間も短くなり、発音が明瞭になったり、口呼吸から鼻呼吸の変化もある。
 4前歯が生えそろう、8歳前後からムーシールドからプレオルソタイプⅢに変更し、16歳頃まで日中1時間のかみ合わせる練習により咬合を安定化させる。

参考として
 ムーシールド講演会 1
kojima-dental-office.net/20090215-2556
 ムーシールド症例
 6歳児の反対咬合
kojima-dental-office.net/20120820-2579
 口の健全な育成について
kojima-dental-office.net/category/ikusei

症例 1
患者  5才女児
初診  平成22年11月15日
主訴  歯並びを治したい
現症  乳歯列の反対咬合
    咬み合わせると下顎前歯によって上顎前歯覆い隠される 
    鼻づまり
経過
11/15  口腔周囲の肉眼的所見や機能状態とムーシールドやその他の治療法を説明
11/24  模型作製、セファロX線撮影

5歳児の反対咬合②212/9   口腔内写真
       唾液量 0.5ml/5分
       舌打ち音がクリアではない、タ・ラの発音が弱い
       診査、検査の結果と治療方針の説明
       ムーシールド開始
       トレーニングの解説
        踵を床にしっかりつけて姿勢正しく、よく噛んで食べる
        舌打ちと上顎前歯で下唇を噛む練習
        ムーシールドを入れて唇を閉じて鼻呼吸の練習

5歳児の反対咬合②3平成23年
2/21   唾液量 4.5ml/5分
       舌打ち音がクリアになる
       ムーシールド朝まで外れなくなる 
12/1   両側A脱落
       両側下顎DEにCRを添加して咬合挙上する
平成24年
1/31   左上顎1番が口蓋側に萌出
3/15   リンガルアーチ装着

5歳児の反対咬合②4 5歳児の反対咬合②5

4/26   左上顎1番が正常になる
9/13   両側1番が唇側、右上2番が口蓋側、臼歯部が咬合しない
       リンガルアーチを除去し、よく咬んで食べるように指示
       夜間にムーシールド装着

5歳児の反対咬合②6 5歳児の反対咬合②7

平成25年
2/28   リンガルアーチ再び装着
5/18   両側2番を唇側へ

25.5.18.A 25.5.18.B

6/29   リンガルアーチ除去、夜間にムーシールド装着

平成26年
2/8    カムゾウくんを利用した咀嚼能率訓練

26.2.8.A 26.2.8.B 26.2.8.カムゾウ

5/24   臼歯部が空いてきた

26.5.24.A 26.5.24.B 26.5.24.C 26.5.24.D 26.5.24.E 26.5.24.カムゾウ

6/14   夜間、チンキャップ装着開始
8/2    臼歯部が噛んでくる

26.8.2.A 26.8.2.B 26.8.2.C 26.8.2.D 26.8.2.E

平成27年
1/31   臼歯部がしっかり咬合する

27.1.31.A 27.1.31.B 27.1.31.C 27.1.31.D 27.1.31.E

平成28年
1/9    咬合が安定する

28.1.9.A 28.1.9.B 28.1.9.C 28.1.9.D 28.1.9.E

症例 2
患者  5才女児
初診  2017年6月26日
主訴  歯並びが気になる
現症  乳歯列の反対咬合
    咬み合わせると下顎前歯によって上顎前歯が覆い隠される
    食べるときにクチャクチャ音がする 
    口呼吸、以前に爪噛みの癖、中耳炎で耳鼻科に通う
経過
6/26  相談、ムーシールドの話
12/28 歯並びを治したい
    口腔周囲の肉眼的所見や機能状態と治療法を再度説明
2018年
2/19  右下Bがぐらぐらする
    診査、検査の結果と治療方針の説明
    検査
      舌打ち音がクリアではない、タ・ラの発音が弱い
      口腔内写真、模型作製
      カムソウ君による咀嚼機能検査判定 ① ほとんど噛めていない
      唾液量が少ない 1.5ml/5分
    舌の持ち上がりが悪い 
        舌先による口蓋に付けた海苔の剥がし時間 15~20秒 
    口腔機能改善に向けた指導
      踵を床にしっかりつけて姿勢正しく、よく噛んで食べる
      食事時に飲み物を置かない
    治療開始
      ムーシールドの夜間装着
      日中10分間、ムーシールドを入れて唇を閉じて鼻呼吸の練習

3/19 6歳
   舌打ちなど舌のトレーニングの指導
5/14
   下の両側の2が萌出
   上のB~Bが見えるようになる
     上顎歯列弓が拡大し、咬合高径が高くなる
   右上6番も萌出し、上下6番4本が咬合する
   治療
     ムーシールドを継続、朝まで外れない

6/18
   上顎歯列弓の拡大傾向が続き、オーバーバイトがかなり浅くなる
   下顎歯列弓の狭窄が気になる
    下顎2番の舌側萌出による叢生とC~Eの舌側傾斜
   舌打ちなど舌のトレーニングの強化
9/10
   左のAとB間のスペース拡大
   上の1番萌出待ち
   検査
     カムソウ君による咀嚼機能検査判定③ しっかり噛めるようになる

10/15
   上の両側1番が口蓋側に萌出
   リンガルアーチの話をする
2019年
1/21
   リンガルアーチを装着、両側1番に補助断線

7/29 7歳
   リンガルアーチの補助断線変更、両側1、2番に補助断線

10/7
   左の2番は切端咬合だが、残りの3前歯は正常咬合となる
   リンガルアーチを除去し、ムーシールドへ戻す
   食姿勢と食べ方を再確認し、舌打ちなど舌運動の猛特訓

2021年
1/28 8歳
   上顎両側4番と下顎両側3番が生え替わる
   下顎前歯の叢生改善せず スペース不足による下顎2番の舌側萌出
   舌打ちの音がクリアになる
   舌先による口蓋に付けた海苔の剥がし時間4秒となり、舌の持ち上がりが良くなる

11/1 9歳
   上顎5番を残して全て永久歯に生え替わる
   下顎歯列アーチが綺麗なU字形となる
   下顎正中が左へ2mmずれている
   検査 唾液量4.0ml/5分に増えるなど、ほとんどの口腔機能が改善
   治療
     ムーシールドからプレオルソタイプⅢに変更
     日中1時間装着して、パフパフ咬合練習

2022年
8/1  10歳
  正常咬合 下顎正中の左2mmへのズレは変わらない

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