ヘミセクション(歯根切除)
2010年09月22日(水)
根分岐部病変は予後への不安もあり、あまり手をつけたくないところである。また、根分岐部病変を観察していると、ほとんど変化のないものも多い。根尖方向への波及がなければ、長期間機能的に歯は使用できる。一般的な根分岐部病変分類の観点である水平的ではなく、垂直的な歯周ポケットの進行が病変の増悪を決定していると思う。 基本的な処置は、プラークコントロール等の初期治療の徹底に始まり、できるだけ侵襲の少ない処置から経過を見ながら進めていく。ほとんどの歯周炎は、ルートプレーニングがきちんとできれば治ると思う。しかし、急性発作を繰り返す場合や局在した垂直的プロービング値の著しい場合は、ヘミセクションを含めた外科処置が必要である。 今回の症例は、原因がわからない上顎6番に限局した歯周炎があり、ヘミセクション後にインレーとフルクラウンを装着し、23年間定期検診を続け、良好な経過をたどっている。咬合が一因ではないかと考え、現在も就寝時にマウスピースを装着している。
症例
患者 50歳女性
初診 昭和61年11月4日
主訴 上顎左6番頬側歯肉の腫脹
現症 上顎左右6番頬側歯肉の腫脹
上顎左右6番ノンカリエス
経過
11/4
パノラマレントゲン写真にて上顎左右6番部近心側歯槽骨に透過像が認められる
プロービングデプスは両歯とも頬側分岐部のみに10mm
ブラッシング指導開始する
抗生剤の内服
12/16
腫脹が消失しないので、ヘミセクションを予定して両歯の抜髄をする
昭和62年
1/7 上顎右6番にフラップを開けてヘミセクションを行う
1/22 上顎左6番にフラップを開けてヘミセクションを行う
1/24 上顎右6番にインレー装着、上顎左6番にメタルコアを装着
2/24 上顎左6番にプロビジョナルを装着
3/5 上顎左6番にFCK装着
6/10 上顎左右6番の状態
平成元年
4/24 2年後の上顎左右6番の状態
平成7年
10/25 8年後の上顎左右6番の状態
平成11年
3/18 マウスピースを装着し始める
平成12年
4/24 13年後の上顎左右6番の状態
平成18年
9/27 上顎左7番が破折のため、フラップを開けてヘミセクションを行う
平成22年
1/14 下顎左6番抜歯
9/9 23年後上顎左右6番は予後良好
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