どうして歯周病になるのか
2009年02月11日(水)
歯肉表層には、角化層があり、どんなに細菌が繁殖しても傷がない限り絶対に侵入することはない。だから歯ブラシなどで傷を付けないように注意する必要がある。 これに対して歯に接している歯肉(上皮付着)部には、角化層がなく、生きた細胞が並んでいる。一般的には、細胞と細胞は、お互いのデスモゾームと言われる吸盤のようなもので接着している。しかし、この部位では、エナメル質は死んだ細胞だからデスモゾームはなく、この生きた細胞のデスモゾームで吸着した状態になっている。つまり、ガラス板に吸盤を半接着した状態であり、ここに出入り口があるため、傷を付けなくても血が出たり、細菌の出すアミノ酸も歯肉内に入ってくる。 歯周病は細菌の出すアミノ酸の歯肉内への侵入から始まる。
まず、このアミノ酸に対してやってくるのが白血球である。 細菌が多ければ対応する白血球も多くなり、定員オーバーになり容積を広げる。これが歯肉が腫れる原因である。 白血球を送り込むのも、栄養、酸素を送り込むのも血液である。どんどん血流が多くなり充血する。これが歯肉が赤くなる原因である。検査時の出血はこれを観ている。 白血球は細菌の出すアミノ酸(毒素)を取り込み、酵素で分解する。自然界にあるものはだいたい分解できる。しかし、白血球の欠点は、識別能力がなく、多くの酵素(1つだけ効果があるけれども、他は無効である)を出し、分解が終わると白血球の外に残りの酵素を放出することである。そのために、歯肉を構成しているコラーゲンというタンパク質も、白血球の出すコラゲナーゼという酵素によって分解される。これが歯肉がブヨブヨになる原因である。 歯根膜も歯槽骨の有機成分もコラーゲンでできている。スティッブリング(歯肉表面に観られる無数のへこみ)が消失するのもこれが原因である。 このようにして、歯周病が始まり、次の段階へと進んでいく。
細菌(プラーク)から2mmの範囲に炎症防御反応が起きる。つまり歯肉が赤く腫れ、組織崩壊が起きる。歯周組織検査のプロービング値5mmであれば、2mm引いた3mmまで細菌の侵入がある。歯根膜の線維も、歯槽骨も炎症から逃げていく。このようにしてどんどん進行していく。 最終的に身体が目指す形はどんな形か。 一つは、骨をすべて角化層で被い、出入り口をなくすことである。こうなれば細菌がどんなに増殖しても侵入することはできない。歯が脱落するが、歯周病の1つの治癒形態である。もう1つは細菌の増殖を一定量以下に抑制し、健康な歯肉にすることである。
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