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歯科における再生医療‐第二の永久歯‐

2004年10月17日(日)


講師:上田 実 氏 (名古屋大学大学院医学系研究科教授)
開催日時:2004年10月17日(日) 午前9時~午前11時半
開催場所:ホテル日航金沢 鶴の間(JR金沢駅東口正面)
参加対象:歯科医師、医師、歯科スタッフ
参加費:1000円(非会員医療機関6,000円)
主催:石川県保険医協会歯科部

参考として
iPS細胞ができた!
kojima-dental-office.net/blog/20080817-1153

 上田実先生と聞けば、未来の医療界を切り開く人物としてイメージされるでしょう。日本の、いや世界の再生医療の最前線でご活躍され、その経歴からも推察されるように数多くの著書、講演もこなされる。まさに、スーパーマン以上の存在。すなわちウルトラマンのような方なのです。
 Tissue Engineering(組織工学) という耳慣れなかった分野も上田先生のおかげで、広く知られるようになりました。・・・・氏の功績を述べるには紙面がいくらあっても足らないほどですが、有名な話のうち一つを挙げるとすれば、アフリカで行われた培養皮膚の移植でしょう。2001年に日本人の口腔粘膜(頬粘膜)から採取した細胞を人工培養した皮膚をブルーリー潰瘍の患者に移植し多大な成果を上げられました。この頬粘膜からつくった培養皮膚はランゲルハンス細胞がないため、他人に移植しても拒絶反応が起こりにくいそうです。また、現地のWHOの治療効果の判定でも“きわめて効果的”と判定されたそうです。
 何回も氏の講演を聴講された先生方はもうご存知のこととおもいますが、氏の講演のすばらしいところは、毎回何か新しいものを提供してくださることです。リピーターの皆さんは今回どんなお話が聞けるのか今から楽しみにされていることでしょう。また、今回初めて上田先生の話を聞かれる先生方にとっても、驚きと関心の連続の講演になることは間違いありません。TDLやUSJなどに行くよりサプライズいっぱいの話がうかがえることでしょう。
 歯科のみならず医科の先生方にも、再生医療の未来をこの機会に聞いてくだされば幸いです。必ずや、その話の先に明るい未来を見ることが出来るはずです。多くの皆さまのご参加をお待ちしています。なお、会場の都合もありますので、できるだけ早めに申込ください。(申込者多数の場合は、先着順とさせていただきます。)

-講演抄録-
歯科における再生医療―第二の永久歯
上田実
名古屋大学大学院医学研究科・頭頚部感覚器外科学講座・顎顔面外科学
東京大学医科学研究所・幹細胞組織医工学・歯胚再生学
 マスコミで再生医療の話題が取り上げられない日はないほど、この領域に対する社会の関心は高い。アンケートによれば現在再生医療を行っているか、近い将来行おうと考えている医療機関は100機関をこえ、また治療の対象は全身の組織・臓器におよんでいる。われわれの想像以上に再生医療が普及していることをうかがわせる。歯科はこうした広範な再生医療分野のなかでもっとも実用化に近いフロントランナーといってよい。
 われわれはすでに培養皮膚、骨の実用化を果たし、数年以内に市場販売される予定である。さらに近未来の治療として歯胚の再生研究を進めている。本講演では皮膚、粘膜、骨の再生医療の実際を中心に、現実に治療をスタートするための方法、条件などを紹介したい。さらに夢の再生医療ともいうべき歯の再生研究の最新情報を供覧する。

     上田実先生講演会 
 去る10月17日(日) ホテル日航金沢にて上田実先生のご講演が“歯科医療における再生医療‐第二の永久歯”と題され行われました。現在様々なメディアで取り上げられる注目の演題のため、当日は歯科医師をはじめ医師、歯科衛生士等、総勢82名の参加をいただきました。
 近年アンチエイジング医療として、医科系の各科にて治療法あるいは予防法が確立しつつある中で、歯科に限っては補綴中心の医療に終始し“いかに巧く修復するか”に重きがおかれ、病因論からみた治療、予防がおざなりになっていました。そこで上田先生はアンチエイジングとしての予防、さらにすでに欠損してしまっている歯および歯周組織に対する再生医療へと研究を発展されました。
 組織の再生でもっとも万能な細胞としてES細胞があります。ただ、この細胞は未分化の受精卵から抽出されるため、倫理的、宗教的な理由からキリスト教圏である欧米では研究が困難であるそうです。それに対して日本は、仏教あるいは無宗教圏であるために、研究に対する抵抗感が比較的少ないとお話しされました。
 今回の講演の主題である歯の再生に関しては現在研究中で、現段階では臨床応用可能な状態にはなっていないということです。しかし、骨の再生に関しては現在名古屋大学で臨床試験を行っており、自家骨移植、人工骨移植、エムドゲイン、GTR膜を用いた方法、それらのコンビネーション等によるGBRに比較して同等あるいはそれ以上の骨の再生を認めていること、自分の骨髄の細胞を人工培養するために、当然拒絶反応等は全くなく、他の方法と比べ培養骨のほうが総合的に勝っているということを披露されました。
 この方法は今後他の医療機関と提携して診療所でも再生骨の治療が出来るようなシステムを構想しており、骨髄採取法から移植といった一連の再生療法のコースを検討中とのことで、我々一臨床家にとっても将来再生医療を行う礎をつくろうと奮闘する先生のひたむきさが伝わる内容でした。
 また、アメリカではベンチャー企業と連携した形で再生医療が発展しており、実用化を目的とした研究がすすんでいることを挙げられ、日本での産、官、学の連携を今以上に密にし研究を阻害するのではなく推し進める方向で協力していかなければならないことをおっしゃっていました。日本の構造改革は最先端の分野でも急務の問題となっているようでした。
 アメリカのベンチャー企業と提携して日本で唯一名古屋大学で行っているしわを目立たなくするための再生医療を紹介されました。これは耳の後ろから組織を採取し、これを培養したものを生食に溶かしてしわに注入するという方法で、今まで日本にある、ボツリヌス菌注射やコラーゲン注射等の方法より長持ちし、副作用が無い、という利点があるそうで、当日出席された女性にとっては朗報だったようです。
 またこの治療法は現在、法律的に問題ないため歯科口腔外科で行われているそうですが、それに関して聴講者はどう思うか?という質問を投げかけられ、最先端医療ゆえの各科の領分を気にされていたのも印象的でした。
 今回金沢では初めての講演でしたが、いつもの大きな学会での講演とちがい、聴講者の意見を聞くなど、ざっくばらんな感じの講演会でした。また、それが上田先生本来のスタイルなのだと感じ、日本の再生医療の将来を切り開く人物に頼もしさを感じました。
 また、講演を終わられ帰られる間際に“歯の再生は私が退官するまでには(10年後)出来るでしょう。”と語られたその目は自信に満ちあふれていました。

略  歴
上田 実(うえだ みのる)
昭和24年(1949年)5月30日生
本 籍 地   大阪府

学   歴   1972年 3月31日   京都大学工学部航空工学科卒
        1978年 3月31日   東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
        1982年 3月25日   名古屋大学大学院医学研究科修了
学   位   1982年 3月25日   医学博士(名古屋大学 第490号)
職   歴   1982年 8月 1日   名古屋大学医学部助手(口腔外科学講座)
        1989年 4月 1日   名古屋大学医学部附属病院講師(歯科口腔外科)
        1990年 4月 1日   外国留学(スウェーデン・イエテボリ大学・スイス・チューリッヒ大学)
        1994年 6月16日   名古屋大学医学部教授(口腔外科学講座)
        1999年 4月 1日   名古屋大学大学院医学系研究科
                      頭頸部・感覚器外科学講座教授
        2003年 7月 1日   東京大学医科学研究所教授(併任)
                      幹細胞組織医工学

(非常勤)  ワシントン大学口腔外科客員教授
       ハーバード大学ティッシュエンジニアリング センター客員教授
       九州歯科大学非常勤講師
       金沢医科大学非常勤講師
       大阪大学歯学部非常勤講師
       愛媛大学医学部非常勤講師
       大分医科大学非常勤講師
       福岡歯科大学非常勤講師
主な著書   
   「再生医療とはなにか」改訂版(上田 実、メディア出版、2004)
   Maxillofacial Bone Regeneration Using Tissue Engineering Concept
          (Ueda,M.: Dentistry In Japan,39:199-207, 2003)
    A Clinical Report of Injectable Tissue-Engineered Bone Applied For Alveolar Augumentation with Simultanious Implant Placement.  (Ueda,M. et al.: Int J.P.R.D, 2004(in press)
   「再生医学と生命科学」(上田 実、編著、共立出版、東京、2000)
  「咬むことと脳の働き」(上田 実、デンタルフォーラム、2000)
  「人体再生」(上田 実、中央公論新社、2000)     
    「ティッシュエンジニアリング」 (上田 実、編著、名古屋大学出版会、1999) 
   「咀嚼健康法」(上田 実、編著、中公新書、1998)      
         ほか著書15編、原著275編

免許・認定医
1978・ 5・29 歯科医師免許 (歯科医籍登録 第73177号)
1986・ 9・ 7 日本口腔外科学会 認定医 (第153号)
1991・ 9・ 8 日本口腔外科学会 指導認定医 (第291号)
1995・ 2・15 臨床修練 指導歯科医認定 (第212号)
1998・ 9・25 日本口腔インプラント学会 指導医認定(第116号)
1999・12・17 日本顎関節学会 指導医認定 (第0026号)

賞 罰
 1987・4・1  日本歯科医学会学術奨励賞「培養粘膜の作製と移植に関する研究」
 1995・3・4  Academy of Osseointegration 10th Annual Meeting
      最優秀賞「Mandibular Lengthening by Intraoral Distraction Using Osseointegrated Implant」
 2004・6・20 日本学術会議会長賞(ヒト細胞・組織による培養表皮・培養軟骨の開発)

学会委員
     Tissue Engineering Society International ( Vice-president)
       Asian Society of Tissue Engineering  ( President )
       Academy of Osseointegration  ( International Committee)
     日本組織工学会 (理事)
     日本顎顔面インプラント学会 (理事)
     国際口腔インプラント会議日本部会 (理事)
     日本再生医療学会 (理事)
     日本炎症・再生医学会 (理事)
          拡加齢医学会(評議員)
     日本口腔外科学会 (評議員)(学術委員)
     日本口腔科学会  (評議員)(査読委員)
     日本顎関節学会  (評議員)
     日本頭頸部腫瘍学会(評議員)
     日本バイオマテリアル学会 (評議員)
他16学会
政府委員
     文部科学省科学技術・学術審議会・ライフサイエンス委員会 (委員)
     日本学術振興会 未来開拓学術研究推進事業研究推進委員会 (委員)
     文部科学省技術推進室 地域科学技術施策専門委員 (委員)
     文部科学省 長寿医療研究委託費運営委員会(委員)
     内閣府 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会(委員)
日本医療機器関係団体協議会 医療技術産業戦略コンソーシアム(METIS)
                   戦略企画委員会 (委員)
産業界(民間企業)
     ㈱日立メディコ 研究顧問
     ㈱J-TEC(ジャパン ティッシュ エンジニアリング)研究顧問
     ㈱ニプロ株式会社 研究顧問
     ㈱オステオジェネシス 最高技術顧問
     ㈱TEI(ティッシュ エンジニアリング イニシアティブ) 研究顧問、技術評価委員長
     ㈱メディア 研究顧問
     ㈱リゾートトラスト(ハイメディック)研究顧問

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