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自分の頭で考える日本の論点 2

2021年02月03日(水)


自分の頭で考える日本の論点出口治明著
 立命館アジア太平洋大学学長、ライフネット生命創業者
幻冬舎新書
2020年11月25日発行
1100円
 自分の頭で考える日本の論点 1
kojima-dental-office.net/blog/20210126-14561#more-14561
論点8  ネット言論は規制すべきか
 権力に対する「適切な批判」が、社会をよりよくしていくから、言論の自由が基本的人権の中でも特に重要だと考えられている。適切な批判とは、互いに検証可能なデータ(数字・ファクト)をもちいて、ロジックを積んで行うもの。健全性を保つためには、批判にも一定の質が求められる。
 外国人が驚くのは、日本の政治家が平気で発言を取り消すこと。少なくとも先進国では、撤回しなければならないような発言をした政治家は、即、政治生命を失う。
 言論の自由は広く認めなければならない。ただし、公務員は、政治的行為を行うことが法律で制限されている。憲法99条は、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員の憲法尊重擁護義務を定めているので、これらの公職にある人が憲法に反する発言をすることも制限されている。この憲法99条の認識が政治家にもメディアにも乏しいのが、この社会の大問題の一つ。
 憲法21条は、公権力は個人の表現の自由・通信の秘密を侵害してはならないと定めている。
 a.表現の自由か規制か
 私企業が、運営するSNS上での投稿やアカウントを利用者が契約時に同意した規約に反するという理由で制限したり削除したりすることは、憲法で保障された「表現の自由」の侵害にはあたらない。だとしても、ネット上での言論空間は、いまや公共的な言論のプラットフォームとなっているので、「表現の自由」を損なわない運営が求められる。
 さらには、利用者の「表現の自由」も無制限に認められるものではない。SNS上での発言に際しては、「公の場」で発していいものかどうかを、常に慎重に自己チェックすることが求められる。言論の自由は、憲法はその限度について「公共の福祉」という概念で歯止めをかけている。
 b.人権侵害か価値観の相違か
 2019年8月、愛知県で3年に1回開催される「あいちトリエンナーレ2019」の企画展の一つ、「表現の不自由点・その後」の展示が、慰安婦を象徴する少女像や昭和天皇の写真が燃える映像作品について抗議が殺到したため、開催3日後に中止された。その後、抗議を受け付けるコールセンターの設置、展示方法を改めるなどの対策が取られ、会期終了1週間前に展示が再開された。
 他人の基本的人権を侵害すれば許されないが、価値観の相違による賛否両論の衝突なので、表現の自由が尊重されることは当然。自分と異なる意見を認めず徹底的にバッシングするという、日本の不寛容社会化の表れともいえる。
 文化庁から補助金が交付される予定だったが、中止後の9月26日、補助金の全額不交付が決定。いったん採択された補助金が後に不交付とされたのは、異例のこと。また、不交付が決定された補助金は、2020年3月に減額した上での交付が決定。いったん不交付とされた決定が覆るのも異例中の異例。
 c.メディアの役割
 「言論の自由か規制か」という議論の前に、「発言の内容が事実か嘘か」をチェックしなければならない時代になったのは、世界のメディアが直面する課題。
 毎日新聞などは記者の名前を明記した署名記事を原則にしているが、大半の新聞記事は無署名。新聞が書き手の名前を出し、責任を伴った情報発信を行うべき。メディアが率先することで、情報発信は名前を出して行うのが当たり前だという環境が醸成されていく。
 それに加えて、メディアは徹底してファクトチェックを行うべき影響力のあるリーダーの発言はそのまま報道するのではなく、その内容に間違いがないかを厳密にチェックし、もし間違っていたならそのことをきちんと報じるべき。
 出版社などメディアも、売らんかなの方針でフェイクニュースを垂れ流すのではなく、日本の言論環境のクオリティを向上させることに、もっと責任を持って取り組んで欲しい。
論点9  少子化は問題か
 わが国の少子化は人災、すなわち政治の無策によるもの。少子化に一番効くのは、急がば回れで、男女差別を本気でなくすこと。政府は、フランスがやっていることをすべて真似すればいい。
 2008年に1億2808万4000人で人口のピークを迎えて以降、日本は確実に人口減少を続けている。日本の出生率は第1次ベビーブーム期には4を超えていたが、現在は1.36(2019年)。人口維持に必要とされる出生率は2.07。
 a.少子化の根本原因は男女差別
 日本の出生率低下の最大の原因は晩婚と非婚の増加だが、これに加えて婚外子率の低さ。ヨーロッパの多くの国で生まれる子供の半数以上が婚外子。これに対して日本は2.3%程度と、韓国の1.9%に続いて、OECD加盟国の中では2番目に低い(2016年)。
 2019年の日本の年間出生数は86万4000人、一方人工中絶は約16万件。出生数の約2割ほどの中絶が行われている。
 人々の移動が自由であれば少子化はなかなか起こらない。近代社会の少子化現象は、国境管理を厳格に行うようになったことが主因。
 世界の先進国では、子育ては社会が支える、男女等しく子育てをシェアするという考え方が常識。子どもと仕事は「or」ではなく、「and」の問題。日本は未だに、子育て(それに加えて、家事、介護も)は女性の仕事で、男性はそれを手伝えばいいという歪んだ考え方をもつ人が少なくない。子どもが3才になるまでは母親が子育てに専念しないと子どもに悪影響が出るという「3歳児神話」を未だに盲信している化石のような人もいる。
 b.シラク3原則
 フランスはシラク3原則という抜本的な子育て支援策を採ってきた。
 第1原則は、女性が産みたいと思った時に産むという考え方。女性が産みたい時と育てられるだけの経済力がある時とは必ずしも一致しないので、出産や子育て費用の足りない分は自治体が給付する。いつ子供を産んでもそのことで貧しくなることはない。だから学生でも安心して子供が産める。
 第2原則は保育園は無料で待機児童ゼロ、希望者は全員、無償で面倒を見る。
 第3原則は育児休業を理由とした降格や移動を法律で厳禁した。
 さらに1999年にPACS(民事連帯契約)という仕組みができ、事実婚であっても法律婚とほぼ同様の保護が与えられるようになった。その結果、およそ10年で出生率が1.6台から2.0前後まで回復した。
 フランスでは働いている女性のほうが専業主婦より生涯にたくさん子供を産む。その理由をフランスの友人に聞くと、働いている女性は人生に貪欲なのだから、子どもをたくさん欲しいと思うに決まっていると答えた。
論点10  日本は移民・難民をもっと受け入れるべきか
 人は、基本的には生まれ育ったところでくらしたい動物。それでも進んでいきたいと思う移民や難民は、心身共に頑健で強い意志を持つ人が多い。
 移民や難民に対してもっと門戸を広げることは、日本が先進国として国際社会で果たすべき責務。と同時に、日本が経済の閉塞状態を打破し、社会が成長していくためには、移民や難民のダイバーシティにあふれた優れた能力を借りることが不可欠。
 ユニコーンが生まれるキーワードは「女性」「ダイバーシティ」「高学歴」。大学の国際化は大きく寄与する。アメリカでは、110万人の留学生が学んでいる。アメリカの大学は授業料が高く、一流校だと7万ドルをくだらない。生活費を含めれば1年で1000万円ぐらいかかる。もちろん奨学金制度なども充実しているので、すべてを持ち込むわけではないが留学生が持ち込むお金は約5兆円。日本で5兆円以上稼いでいる輸出産業は自動車産業ただ1つ。
 a.日本は生物学上は明らかに多民族国家、移民国家
 日本人の遺伝子を分析すると、きれいに3つのタイプの混血だと分かる。南方系の人々が主流を占めている。3万8000年前ぐらいに対馬経由で朝鮮半島から人が入ってきて、それから1000年後に琉球から入ってきて、さらに1万2000年後にシベリア経由で北海道から入ってきた。この3グループの移民が混ざり合って作った国が日本。
 中国や韓国は特定の遺伝子をもつグループが5割以上を占めているので、単一民族国家。
 b.日本は事実上、世界第4位の「移民大国」
 国連は、「1年以上外国に居住する人」を「移民」としている。しかし、日本は、移民とは、「入国の時点でいわゆる永住権を有する者」なので、就労目的の在留資格による受け入れは「移民」には当たらないとして、日本には移民はいないというスタンス。
 2019年12月末の在留外国人数は約293万人と過去最高。日本中の至る所で、たくさんの外国人が働いている。ここには観光客など、3ヶ月未満の短期滞在者は含まれない。また、日本の年間の外国人受入数はドイツ、アメリカ、イギリスに次ぐ4位で、移民が多いと言われるカナダやオーストラリアなどを上回る(2016年)。
 『医療』の在留資格に歯科技工士は含まれていない
kojima-dental-office.net/blog/20190121-12851#more-12851
 c.日本の難民認定率は、他の先進国に比べて極端に少ない
 2018年に日本政府に対し難民認定を申請した外国人は1万493人。そのうち難民認定を受けたのは42人、帰国させるには人道的な問題があるとして「特別在留許可」が認められたものも40人にとどまった(難民と認定されなければ日本語学習や職業訓練などの支援が受けられない)。
 d.外国人に日本の社会にソフトランディングしてもらうため
 日本社会を年齢、性別フリーで女性や高齢者も働きやすい社会に改革した上で、優秀な移民や難民を受け入れるべき。男女差別の厳しい現実を据え置いたまま外国人を受け入れたら、男性、女性、外国人という階級が生まれるのは目に見えている。その結果、格差が広がり、社会が不安定化に向かう。
 言葉は文化。立命館アジア太平洋大学は、新入生にみっちり日本語教育を行っている。加えて1回生は原則として全員が国際教育寮に入寮する。シェアタイプの部屋では、国内学生と留学生が同室に入り生活を共にする。そこでさらに日本語を身につけ、日本の生活に慣れると、2回生以降、留学生が別府の町で下宿しても地元住民との間でほとんどトラブルは生じない。
論点11  日本はこのままアメリカの「核の傘」の下にいていいのか
 a.日本にとって安全保障上の問題はアメリカとの関係
 アメリカがロシアや中国と対立している時には日本列島に大きな戦略的価値があった。ところが、冷戦が終結してしまえばアメリカにとって日本はかつてほどの価値はない。日本の危機は冷戦崩壊から始まっている。日米同盟が堅持されている限り、日本への脅威は事実上存在しない。
 ところが日本は思考停止に陥ったまま。今でも旧ソ連(ロシア)をにらんで北海道に、無用の長物と化した自衛隊最強の機甲師団を配置している。合理的な判断ができない日本をアメリカが「同盟相手として信頼できない」と思えば危機的な状況になる。
 アメリカは、「尖閣諸島が安保条約第5条の対象になる」と表明しているが、中国に対しては、「尖閣諸島の所有権について日中どちらの主張にも与しない」とダブルスタンダード。尖閣諸島をめぐっては、日本は中国と対立しているだけではなく、領有権を主張する台湾との間でも同じ問題を抱えている。緊急時に大統領が部隊派遣を決定しても、最終的には議会の承認がなければ軍は動けない。
 b.核の傘
 1975年8月の日米首脳会談後の共同新聞発表文書では、日本に武力攻撃があった場合、核による報復攻撃も辞さない旨の文言が明記された。
 1970年に核拡散防止条約(NPT)が発効。同年に日本も署名。核保有国の米・英・仏・露・中5カ国に核軍縮を義務づけ、それ以外の加盟国に核武装を禁じる国際条約。成立前後から「核の傘」という言葉が使われるようになった。
 NPTが「核の傘」を前提にした条約であるのに対し、核兵器の開発、実験、保有、使用などを全面的に禁じ、核保有国に対しても核兵器廃絶を義務づけたのが、核兵器禁止条約。2017年7月に国連総会で採択され、2020年10月に批准した国・地域が50に達したため、2021年1月の発効が決まった。ただし、核保有国と日本、韓国、NATO加盟国もは参加していない。
論点12  人間の仕事はAIに奪われるか
 「AI」とはArtificial Intelligenceの頭文字で、日本語では「人工知能」という。1956年にアメリカで拓かれた「ダートマス会議」で名付けられた。
 a.「ラッダイト運動」という労働運動
 19世紀の産業革命の際、機械に職を奪われた人々が機械や工場の建物を打ち壊した。一時的に大量の失業者は出たが、経済が振興し、それまでなかった職業が次々と生まれ、失業は解消された。失業した熟練工は新たな職業に就いたが、従来と同じ賃金は得られなかった。
 b.今から何を勉強したらいいか
 現在のAIは、ファージーなものが苦手で、特定の決まった作業を行う特価型。人間の脳はファージーな認識を持ち、人間の従業員は、一人で何通りもの仕事をこなせる。経営者はAIよりコストが低いなら人間を選ぶ。
 先の分からないことをあれこれ悩んでいるよりは、今の自分を磨く方がよほど有益。「考える力」や「探求する力」「問いを立てる力」がもっと必要になる。
 c.ユース・バジル
 ユース・バジルとは、人口構成で若い世代が膨れあがっている状態。仕事にあぶれる、不満を溜め込む若者が大量に発生し、社会が不穏になる。日本は深刻な労働力不足に陥りつつあるので、心配をする必要はあまりない。
 民主主義は、一定の教育が施された市民の存在を前提にした仕組み。AIが貧者の賢くなるサポートに使われたら、民主主義にとって大きな力になる。
論点13  生活保護とベーシックインカム、貧困対策はどちらがいいのか
 貧困対策は「生活保護か、ベーシックインカムか」ではなく、「厚生年金保険の適用拡大か、ベーシックインカムか」。
 社会保険のメインは、働けなくなった時の収入を保証する公的年金保険と、病気になった時の医療費を保障する健康保険であり、これが民主主義社会におけるセーフティネットの柱。
 現代日本の貧困問題 いま、社会保障基本法が必要な理由
kojima-dental-office.net/blog/20090321-4596#more-4596
 a.生活保護とベーシックインカム
 生活保護基準を下回る経済状態の世帯のうち、現実に生活保護を利用している世帯は、厚労省の推計でも2割程度。不正受給の件数は、厚労省の発表では全体の2%程度。
 ベーシックインカムとは、国民すべてに一定の支給をするという最低保障の考え方。年金や生活保護などの社会保障が廃止され、行政コストが大幅に削減される。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックで一律10万円が支給された「特別定額給付金」も一時的なベーシックインカムと言える。ベーシックインカムを導入すると、7万円×12ヶ月×1億2000万人で年間約106兆円、国家予算を超える。
 b.日本の貧困問題
 現在の日本の貧困問題の本質は、自営業者ではないのに厚生年金保険に加入できず、老後、国民年金保険では食べていけない人が大勢いること。非正規雇用で厚生年金が非適用の人は、日本全体で1300万人ぐらい。
 貧困対策として、社会保険の原理原則に立ち戻って、人に雇われている人は全員厚生年金保険に加入できるようにする、適応拡大が喫緊の課題。生活保護はあくまで社会保険を補完する制度と捉えるべき。
 c.社会保険を考え出したのはビスマルク
 ドイツでは2003年にシュレーダー政権が、「アジェンダ2010」と名付けた雇用制度と社会保障改革の一環として、年金保険の適用拡大をやろうとした。するとやはり、中小企業からの不満が続出した。それに対するシュレーダーの反論は、「ビスマルクを覚えているか」。人を雇うということは、その人が病気になったり、年をとって働けなくなったりした時に責任を持つということだ、だから社会保険料を払えない企業は人を雇う資格がないのだ、と言いきった。
 中小企業の経営者は激怒し、シュレーダーは2005年に政権を失う。しかし代わって登場したメルケル政権も適応拡大を維持した。このシュレーダー改革で社会保険負担を支払えない企業は淘汰され、ドイツ経済の足腰はとても強くなった。シュレーダーは政治生命を賭けて、社会保障改革と経済改革を断行した。
 日本でも適用拡大すれば、多くの問題が解決する。しかし、100年先のことを考えて目先の不評を恐れない政治家でなければ実行できない。
 政治家がある主張をする際に、実態に反映した「エビデンス」や「データ」を根拠にしているのか、一部の「エピソード」だけを持ちだして主張しているのかは、峻別しなくてはならない。
 d.厚生年金保険の適応拡大は一石五鳥の政策
 第1に、年金財政が大幅に好転。非適用者1300万人のうち毎月5.8万円以上の収入のある1050万人を厚生年金保険にシフトしただけで年金財政が大幅に改善。
 第2に、貧困老人が少なくなる。
 第3に、3号被保険者がほぼ自動的に消滅し、保険料を支払う加入者が増える。厚生年金保険は、加入者の配偶者が保険料を支払わなくても被保険者として扱うという年金ただ乗りの仕組みとなっている。
 第4に、適用拡大を行えば、正規雇用と非正規雇用の格差がほぼなくなる。
 第5に、人を雇いながら社会保険料の企業負担分を支払っていなかった企業が淘汰され、日本経済の足腰が強くなる。
論点14  がん早期発見・治療すべきか、放置がいいのか
 がんは治療すべきか、放置がいいのか、と言うテーマは、単に医療技術の問題だけではなく、人生観の問題でもある。病気になったら天命と思って自然の摂理に任せるという考え方と、医療の力を最大限活用したいと言う2つの考え方に分かれる。子どもが小さければ徹底的に治療すべきであり、子どもが成人した後なら本人の人生観次第、というのが基本。自分の頭で考え、自分で選択し、方針を決める。
 a.がん治療論争、近藤誠氏の主張
 ・がんには「がんもどき」と「本物のがん」がある。本物のがんは、発見した時に認められなくても、いずれ転移が明らかになるので根治は不可能。治療は無意味。「がんもどき」は、症状が出た段階で治療すれば治る。
 ・がんは放置療法がよい。がん死の多くは「術死」、転移を理由にリンパ節を広範囲に摘出するなど、患者に負担の大きい手術を施したことによる後遺症。
 b.がん治療論争、医師・研究者の主張
 ・「がんもどき」と「本物のがん」を見分けることができない
 ・抗がん剤でがんが治る、延命できるというデータは存在する
 ・近藤氏の主張は、学会発表や医学論文の形になっておらず、現代の医療で求められるレベルのエビデンスを欠いている
 c.エビデンスの有無だけでは片づけられない問題
 ・近藤氏の主張が、患者と家族の医師には言えない本音を代弁し、共感を得ている。
 ・これまでの医療が病気を治すことだけを目的とし、患者さんのQOLを考慮してこなかった
論点15  経済成長は必要なのか
 a.日本人は年々貧しくなっている
 日本の1人あたりGDP(名目)は2000年に世界ランキングで2位。2000年代前半から下降し始め、2020年現在25位まで落ちている。購買力平価ベースでは2019年に世界35位で、G7最下位。2018年の日本の1人当たり労働生産性は世界37位。主要先進7カ国で見ると、1970年以降、最下位の状況が続いている。2020年の世界幸福度ランキングで日本は62位。
 b.格差拡大
 高度成長時代の経営モデルである年功序列・終身雇用といった制度を、企業は低成長下でも捨てきれなかった。それが非効率を生み、競争力を阻害し、組織をますます疲弊させるという悪循環を生んだ。バブル崩壊後、多くの日本企業は年功序列・終身雇用を維持する体力を失い、非正規雇用者の割合は1990年の20.2%から2019年の38.3%に倍増した。末端の仕事はアウトソーシングされ、非正規労働者が増え、格差が拡大した。
 2000年以降、世界経済の成長を牽引したのは新興国。先進国の富や仕事が新興国に移った。その結果、先進国では中間所得層が没落し、さらに格差が拡大した。
 c.ゼロ成長では社会を維持できない
 マネーの極端な偏在による富みの格差が許容限度を超えつつあるこの歪みを解消するためには、経済を成長させ、税収を確保しなければならない。投資も必要。成長を見込めない国は、海外から金と人を集めることができない。
 人間はさほど賢い動物ではないので、「衣食住足りて礼節を知る」。経済成長がなければ、人間は人間らしく生きていくことができない。社会に余裕がなければ、便利な生活も豊かな文化も支えられない。
 自分の頭で考える日本の論点 3 へ続く
kojima-dental-office.net/blog/20210207-14608#more-14608
  自分の頭で考える日本の論点 1
kojima-dental-office.net/blog/20210126-14561#more-14561

 

 

 

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