のぼるくんの世界

のぼる君の歯科知識

99.9%は仮説

2008年08月24日(日)


 思いこみで判断しないための考え方
著者 竹内薫
光文社新書
700円
2006年2月発行

「最近どうも頭が固くなってきたなぁ」と思う人や思いこみ、常識、先入観、固定概念に縛られて身動きとれなくなっている人、「なんでこんな話が通じないんだ」とイライラしている人は、この本を読んでみてください。きっと、ものの考え方から世界の見え方まで、全てがガラリと音を立てて変わるはずです。仮説思考は、あなたの人生を豊かにするでしょう。最後まで気になる「残り0.1%はなに?」の秘密はどこに隠されているのでしょうか。

1.数学と科学との決定的な違い
 カール・ポパー(1902~94年)は、「科学は、常に反証できるものである」と定義しました。数学は、概念ですから一度証明してしまえば、それで決着です。しかし、科学は、頭の中にある仮説がどれくらい物理世界と一致するかを問題にし、一番新しい仮説の集まりにすぎません。要するに、何億回実験を行って理論に合うデータが出ても、つぎに理論にあわないものが出てくる可能性は捨てきれないわけですから決定的な証明などということは永遠に出来ません。
 
近代数学の始まりは、ギリシャ
kojima-dental-office.net/blog/20191225-13525#more-13525

2.科学は万能ではありません
 科学によって全てが解明されているだろうと思われていることも、突き詰めて考えていきますと、実はよくわかっていません。試行錯誤と経験によって「うまくいくこと」と、その科学的な根拠が完璧にわかっていることとは別です。
 例えば、全身麻酔については、仮説すら存在しません。医学生の教科書には、なぜ効くかについては、ほとんど何も書かれていません。また、生理学の教科書には、全身麻酔は登場すらしません。人間の意識の謎が解明されていない以上、意識がなくなるメカニズムがわかっていないのも当たり前と言えます。
 「科学的根拠」がないものは無視されますが、それはまったくナンセンスです。麻薬などを隠し持っていないかどうか探すには、犬のほうが、科学の粋を集めた化学物質の検知器より、はるかに低レベルの化学物質を嗅ぎ分けられます。

3.”頭の柔らかさ”
 常識は仮説にすぎません。ただの思いこみであり、くつがえることもあり、後の時代から見ると間違っていることもあります。仮説は次々と崩れて修正を受ける運命にあります。それこそが科学です。
 常に常識を疑う癖を付けて、頭の中にある仮説の群を意識し、「権威」を鵜呑みにすることなく、様々な意見を相対的に比べて判断することが”頭の柔らかさ”です。

4.思いこみで判断しないため
 物事は主観的(世間とは関係なしに自分だけが白だと考える仮説に従う)より客観的(世間の誰もが白に近いと認める仮説に従う)に見るのがよいとされていますが、世の中に100パーセントの客観などあり得ません。
 話が通じないのは、お互いが当たり前の前提と考えている複数の仮説が食い違っているからです。豊かで実りある人間関係と文化を作り上げるためには、自分の仮説を絶対視せず、他人の仮説をも理解しようとする柔軟な態度が必要です。世の中を対比化してみますと、それまで自分が採用してきた(頑なな)仮説のもとではまったく見えていなかったことが見えてくることがあります。

5.科学革命
 科学革命というのは、古い仮説を捨てて新しい仮説に引っ越す作業にほかなりません。アインシュタインは、エネルギーは動いているものからしか発せられないというニュートン力学を完全に覆し、原子のような小さな止まっている物体でも、とてつもないエネルギーを持っていることを発見しました。さらに、ホーキングは「実在論」から「実証論」へと進みました。整合性がとれれば、実際に整合するための対象の実在にこだわらず、空間や時間というものを実在するものとして考えていません。

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