のぼるくんの世界

のぼる君の歯科知識

自分の頭で考える日本の論点 3

2021年02月07日(日)


自分の頭で考える日本の論点出口治明著
 立命館アジア太平洋大学学長、ライフネット生命創業者
幻冬舎新書
2020年11月25日発行
1100円
 自分の頭で考える日本の論点 1
kojima-dental-office.net/blog/20210126-14561#more-14561
 自分の頭で考える日本の論点 2
kojima-dental-office.net/blog/20210203-14589#more-14589

論点16 自由貿易はよくないのか
 日本は資源のない国なので、自由貿易を掲げ、他国と国際協調していく以外に、生きる道はない。現代の快適な生活は、化石燃料、鉄鉱石、ゴムという3つの資源の上に成り立っている。
 a.自由貿易か保護貿易か
 自由貿易は原則的には強者の論理。主体が強いか弱いかで貿易に対するスタンスは大きく変わる。自由貿易か保護貿易かは、主義主張だけの問題ではなく、その国の発展段階に応じた時間軸の問題。自国の弱い産業については保護貿易、強い産業は自由貿易となる。
 例えば、アメリカの南北戦争。圧倒的に競争力のある農産物を有していた南部は自由貿易を主張し、ひ弱な繊維産業や軽工業しかなかった北部は保護貿易を主張した。結果は、北部が勝利し、アメリカは保護貿易を行うことになった。ところが、ひとたび大工業国になったら、アメリカが自由貿易を主張し始める。
 b.先進国の中間層の没落と格差拡大
 京都大学大学院準教授の柴山景太郎氏は「新しいタイプの国際分業」の結果だと分析する。「20世紀中盤までの国際分業は、先進国が工業化し、途上国が脱工業化(農産物や原材料の生産に特化)する形で進んでいた」が、80年代以降は、生産拠点の海外移転により、「新興国が工業化し、先進国は脱工業化(ハイテクや一部サービス産業に特化)」していった。その結果、ハイテク産業の恩恵に与ることのできない先進国の中間層の多くが、低賃金労働者へと没落していった。
 c.日本は農業を保護しているのではなく、見捨てている
 「食料安全保障」の考え方は、輸入農産物に関税を課して制限をかける一方、輸出補助金をたくさん出して農家を増やし農地を広げるという農業政策。しかし、日本政府がやってきた最大の農業政策は米の減反政策。補助金だけ与え米作をやめさせた農地は、何も作物を作らないまま放置。米の作付け面積は1960年代のピーク時に比べればほぼ半減、農地全体で見れば約3割減っている。
 日本の農産物は品質が高いことで、既に人気がある。休眠農地をやる気のあるベンチャー企業に開放し、付加価値の高い農産物をどんどん作れば、近い将来10兆円くらい輸出できる可能性はある。オランダは、面積が九州と同じくらいで、しかも国土の4分の1は海面下。それでも、年に10兆円前後の農産物を輸出している。
 2019年度の日本の食糧自給率は、カロリーベースでは38%だが、生産額ベースでは66%で、他の先進国との差はそれほど大きくない。農産物自由化を阻止して既得権益を守りたいグループが、ことさらにカロリーベースの数字を偏重している。
 d.自由貿易
 1994年のウルグアイ・ラウンドをもってGATTは発展的解消、1995年に発足した国際機関・WTO(世界貿易機関)に引き継がれた。2001年に開始したドーハ・ラウンドの行き詰まりで世界的に模索されるようになったのが、2国(地域)間もしくは多国(地域)間で結ぶFTA(自由貿易協定)やFTAの内容に加えて投資や知的財産保護など幅広い分野での連携を行うEPA(経済連携協定)の締結。
 2018年12月には、環太平洋経済連携協定(TPP11)が発効。人口5億人、世界のGDPの13%をカバーする巨大経済圏。
 2019年2月には日本・EUのEPAが発効、人口6億人、世界のGDPの約3割をカバーする巨大な自由貿易圏が誕生。
 TPP問題を考える
kojima-dental-office.net/blog/20120119-3076#more-3076
論点17  投資はしたほうがいいか、貯蓄でいいか
 a.お金による民主主義
 投資か貯蓄かという問題は、経済的な損得だけで判断できる問題ではなく、その人の人生観が深く関わっている。将来や老後に対する不安を減らすには、「投資か貯蓄か」よりも「働くこと」。仕事が体力維持にも役立つ。高齢者になって体力が落ちる最大の原因は働かないこと。
 投資の目的は利殖だけではない。企業の思想や方針を支援し、社会に貢献すれば、達成感と充実感がある。境(E)・社会(S)ガバナンス(G)に配慮した経営を重視するESG投資や、共感する企業やNPOの活動へのクラウド・ファンディングもある。
 b.貯蓄が安心
 金融知識を身につける時間も熱意もない場合は、財産を殖やすより減らさないことを目指した方が安全。
 お金の運用についての大原則に、「72のルール」がある。「72÷金利(%)」が元金が2倍になる年数の目安という法則。例えば普通預金の金利0.001%とすると、72÷0.001=72000となり、銀行に預けているだけでは元金が2倍になるのに7万2000年かかる。一般論で述べれば、金利が低い時は貯蓄より投資。
 投資か貯蓄かを自信を持って選ぶには、子どもの頃から金融リテラシーを高める教育が必要になる。アメリカやイギリスでは、小学校から全学年で、貨幣やクレジットカード、利子などについての基礎知識を指導し、予算管理などの演習も行う。
 c.ドルコスト平均法
 投資の世界には、「複数の卵を一つのバスケつとに入れてはいけない」という格言がある。資産を複数に分けてもつことで、リスクを分散しようという意味。
 リスクを少なくするには「安い時に買って高い時に売る」。ただし、いつ安くていつ高いのかが分からない。それを解決した唯一の投資法は、「ドルコスト平均法」。毎月一定額ずつ投資信託を買う方法。そうすれば、結果的に安い時により多くの口数を買っている計算になる。
論点18  日本の大学教育は世界に通用しないのか
 a.世界大学ランキング
 イギリスの教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」による「世界大学ランキング」の2021年度版でトップはイギリスのオックスフォード大。1990年代以降、世界に留学生という巨大な市場が生まれた。90年代終わりにイギリスのブレア政権は2005年までに留学市場の25%獲得を目指すと宣言、高等教育は重要な外貨獲得の手段であり、将来的にイギリスに富と人材をもたらすビジネスと位置づけた。この政策を支えたのがこのランキングだった。自国の大学の優位性を世界にアピール。
 被引用論文のウェイトが大きく、非英語圏の大学がランキング上位に食い込むのが難しい。とはいえ、中国は、精華大20位でアジア最高、200位以内に7校。シンガポールは、シンガポール国立大が25位。香港は香港大が39位で、200位以内に5校。韓国はソウル大が60位で200位以内に7校。日本は、東京大が36位、京都大が54位、200位以内に2校だけ。
 b.日本の大学に求められるもの
 日本は、明治以来150年にわたって、西欧から学びつつも完全な西洋化はせず、ローカルな言語、日本語による知の体系を積み上げてきた。社会学者でオックスフォード大学教授の刈谷剛彦は、「大学の順位より日本の知が作ってきたコンテンツのほうが国際貢献できるはず」と語る。少子高齢化、介護保険、地震防災、原発事故、省エネなど、日本が世界に先んじて経験したことは多い。
 これからの時代を牽引するのは、好きなことに徹底的に打ち込む人、そこに染まらない個性豊かな尖った人材。今の日本の閉塞感を打ち破る新しい発想は、彼らからしか生まれてこない。
 大学に求められるのは、優れたチェンジメーカーを生み出すこと。それぞれが好きなジャンルを文系理系の枠を超えて究められる大学が必要。
 c.日本の教育予算は、GDP比でOECDの中では、ずっと最下位レベル
 15才の教育は、日本は安定的にトップレベルを維持している。基礎学力を養うためのもので、先生が一度に多くの生徒を教えるスタイルでやれる。小中学校では、予算の不足を先生の熱心さと優秀さでカバーして高い学力をゆっくり育てているが、大学では、学生一人一人の能力・適性・興味関心に沿った指導をしていく必要があり、どんな優秀な教師でも10人程度の学生の面倒を見るのが限界。お金がかけられていないから、細やかな教育が実践できない。
 d.日本の大学がお金を集められない理由
 ハーバード大学は1636年の学校創設以来、ずっと寄付集めに力を注いできた。今では4兆円規模の自己資金(大学基金)を持っている。何もしなくても毎年1000億円を超える金利も入ってくる。アメリカの有名大学の自己資金は、そのほとんどが高度成長期に増殖したもの。7%の経済成長が10年続けば、元本は2倍に、50年も続けば32倍に膨れあがる。
 しかし、高度成長時代の日本は各年度毎の予算で大学運営を行っていた。金利ゼロの今、自己資産を増やそうにも限界がある。さらに、企業のガバナンス改革が進めば進ほど、経営者の自由度は下がり、企業から大学にお金が集まらなくなる。特に基礎研究部門。
 アメリカでは、企業のトップが、ポケットマネーで基礎研究に多額のお金を出している。ビル・ゲイツは財団をつくり、新型コロナの基礎研究に振り向けている。アメリカの企業トップは、巨額の収入を得ているが、それを社会に還元している。
論点19  公的年金保険は破綻するのか
 a.公的年金保険は破綻しない。
  ①国の財政が赤字でも、保険料が集まる限り公的年金は破綻しない
 日本の年金制度は、積み立て方式ではなく、賦課方式。積み立て方式とは、自分が払い込んだ保険料を運用して、一定の年齢なってから受け取る方式だが、賦課方式とは現役世代の払い込んだ保険料を、その時代の高齢者の年金として使う方式。
 2018年度の公的年金保険の給付総額52.6兆円のうち、現役世代からの保険料収入は38.4兆円(約73%)。12.7兆円(約24%)は税金からの国庫負担(基礎年金の1/2相当)。残額1.5兆円(約3%)は、2020年6月末に総額163兆円ある年金積立金(給付に使われなかったこれまでの保険料収入)の運用益から拠出。
  ②マクロ経済スライド
 賦課方式の年金制度にとって最大のリスクは少子高齢化。2065年には高齢者1人を現役1.3人で支えることになると予測されている。そこで2004年の年金制度改正で「マクロ経済スライド」が導入され、現役人口の減少や平均余命の延長に合わせて給付水準を自動的に調整する仕組みができた。これを発動する限り、年金が破綻するような給付は行われない。年金財政は5年ごとに財政検証が行われている。
 b.公的年金はなぜ危ないといわれるのか
 大きな理由は、老後の生活の不安を煽ることが商売になる業界がある。個人年金や投資を勧めたい金融機関やマスコミ。政治的にも、年金不安は、野党が与党を攻撃する際の格好の材料となる。また、増税して財政再建を進めたい財務省や、年金関連の利権を失いたくない厚生労働省も国民の不安が大きいほうが都合がいい。
 c.国民年金保険料は払うだけ損か
 国民年金保険料(基礎年金)の2分の1は国庫負担で、税金が投入されている。支払った額と同額を国が上乗せして負担してくれている。こんな条件のよい貯蓄手段は他にはない。国民年金保険料を払わず、自分で積み立てるなんてとんでもない。9割以上の人が国民年金保険料をきちんと払っている。
 d.制度維持のための対策は必要
 厚生年金の適用対象をパート労働者にも拡大する「適用拡大」。年金改革関連法では、月収8万8000円以上は変わらないが、企業規模の要件が2022年10月に「101人以上」、2024年10月に「51人以上」へと段階的に緩められる。これにより加入者が約65万人増える見込み。
論点 20 財政赤字は解消すべきか
 a.財政ファイナンス
 日銀が国債を買うのであれば、いくらでも国債を発行できる。放漫財政につながるとして、現在では世界の多くの国々が憲法や法律で禁じている。日本でも財政法5条で禁じられている。政府は日銀が直接買っているのではなく、いったんマーケットに出たものを買っているので問題ないとしている。しかし、事実上日銀が直接買っているのと何ら変わらない。
 日本が突出して大きな借金を抱えている。財政赤字が恒常化してしまい、日本人の感覚がマヒしているが、日本の財政は危険水域に突入している。2018年度末の累積債務は、対GDP比をG7各国で比較すると、日本237%、イタリア132%、アメリカ104%、フランスが98%、カナダが90%、イギリスが87%、ドイツが62%(G7のうち2018年の単年度黒字はドイツのみ)となっている。
 b.国債を日銀が買い支えている
 2013年以降、日銀は「異次元緩和」により、長期国債を年間上限80兆円の“爆買い”を続けてきた。政府は毎年30数兆円程度の国債を新規発行しているが、それのみならず過去に発行した分も買い取っている。2013年4月の「異次元緩和」開始時に約130兆円だった保有残高は、2020年5月に500兆円を突破した。
 日銀という中央銀行が国債を大量に保有すると、正常な債券市場がなくなる。長期金利を市場が決めるのではなく、日銀が「異次元緩和」の一環とする0%程度に操作している。株式市場においても日銀と年金積立金管理運用独立法人(GPIF)という政府機関が最大の株主になりつつある。日本では債券市場と株式市場という金融市場の両横綱が機能しなくなっている。これはもはや自由主義経済ではなく国家統制による社会主義経済。
 c.政府の借金は民主主義と矛盾する
 若い人たちの時代に新しい政策を思い切って実行できないほど、日本の財政は逼迫している。借金は増加するのに人口は減っていくので、1人当たりの負担額は将来さらに大きくなる。度を超した財政赤字は、民主主義の正当性そのものを踏みにじることにもなる。現在暮らしている人たちが、未来の日本人が分けるべき彼らの税金を勝手に先食いして費消する権利など微塵たりとも持っていない。
 国債を買っているのはお金持ちの豊かな人たち。国債を発行すればするほど、お金持ちが裕福になる。財政本来の機能である所得の再分配機能も歪められている。
 d.「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」
 1年間の行政サービスの経費を、できるだけその1年間の税収だけで賄うようにする。日本以外の先進国では財政に対する規律が厳しく求められ、政治の争点になるが、日本では増税には目くじらを立てるが、財政規律には感度が鈍い
論点21  民主主義は優れた制度か
 a.民主主義とは
  チャーチルは、人間の貧弱な脳みそは、民主主義よりマシな政治形態をまだ考え出していないだけ。「選挙に出る人間にろくなものはいない。選挙とは、そのろくでもない人たちの中から少しでもマシな人を選ぶ忍耐だ」。その後に有名な「民主主義は最低の政治形態である。ただし、王政や帝政など、これまで試みられてきた民主主義以外のすべての政治形態を除いては」が続く。
 宇野重規著「民主主義とは何か」では、民主主義とは、「公共的な議論によって意思決定すること(参加)」と「決定されたことについて自発的に服従すること(責任)」に加えて、「人々が自らの地域的課題を自らの力で解決する意欲と能力を持つこと」だと指摘している。
 b.民主主義を回すためには公文書が不可欠
 民主主義は、意思決定のプロセスを検証することの積み重ねによって成熟してきた仕組みだから、記録に残すこと、すなわち公文書の管理と公開のルールを徹底することが重要。公文書(記録)が残っていなければ、PDCAサイクル(計画Plan→実行Do→評価Check→改善Action)を回すことができなくなる。
 c.政権与党は投票率が低い方が都合がよい
 選挙には、投票率が低いと永遠に政権与党が当選し続けるという性質がある。市民が勉強せず、政権交代の可能性を信じなければ、実質的には一党独裁となり、政府は腐敗する。選挙をつまらなくすることは、政権与党にとってある意味では最高の選挙戦術。他の先進国では、選挙の仕組みをきちんと教育している。
 積極的に投票したい候補がいなくても、「誰には当選して欲しくないか」「誰ならマシか」という判断をして誰かに投票する。白票も棄権も実質的には有力候補に投票するのと同じ結果となる。
 d.民主主義を機能させるためには投票率を上げることが必要
 どんな社会にも、現状の政治システムから利益を得ている既得権益層が2割ぐらい存在する。制度上優遇を受けたり補助金をもらったりしている人たちは、政権与党の後援会を組成する。
 日本では、国政選挙の投票率は5割前後だから、仮に有権者が100人いたとすると、後援会が推す候補者を当選させようとすれば、後援会20人以外に5票獲得すれば過半数となる。後援会組織を持たない新人は5倍の25票獲得しなければ当選できない。だから新しい血が政界に入りにくい。
 一方、投票率8割のヨーロッパでは、後援会が推す候補でも過半数40票までに20票上積みしなければならない。後援会なしの立候補者も40票だが、その差が2倍となり、当選の可能性が高くなる。G7で世襲政治家が5割を超えている国は日本だけで、他の国は1割にも満たない。
論点22  海外留学はしたほうがいいのか
 a.文化は言葉
 AIが進化し、自動翻訳してくれるデバイスが次々と登場しても、これからも語学は勉強したほうがいい。語学は単なる言葉の勉強ではなくて、外国人の発想や思考のパターンを理解する手段でもある。
 語学習得が目的なら留学は費用対効果が低い。本格的に語学力が求められる企業では、特定の分野についての専門性がなければ、就職に有利とはなりにくい。
 b.海外留学
  東京大学大学院教授の本田由紀さんは、日本の教育の特徴を「垂直的序列性と水平的画一性」と断じた。今の日本の教育では尖った個性が育つはずがない。世界では、ひとりひとりの個性が独創を生み、ひいては社会を成長させる。
 留学は世界の多様性を実感するまたとない好機。若い時期に留学したら、知識として知っているだけではなく、五感で体全体で知るから、その国が好きになる。その分、世界に対する感受性が飛躍的に高くなる。広い世界を経験することは、国家のためではなく、面白い人生を送れる。
 社会人になって10年働いたら、再び大学に戻って勉強したり、留学ししたりして自分をもう一度高め、改めて別の会社を探した方が人生は楽しくなる。
  NHK BS1の番組
最後の講義 完全版 適応力 新時代を生き抜く術          
出口治明(著/文)
発行:主婦の友社
定価 1,400円+税    
発売予定日 2021年3月1日

自分の頭で考えるための10のヒント
 自分の言葉で腹落ちするまで考えて自分なりにジャッジするというトレーニングを日頃から積み重ねる。
①タテ・ヨコで考える
 タテ=時間軸(歴史軸)、ヨコ=空間軸(世界軸)で立体的に考えるクセをつける。二次元で考えると、物事の実態や本質がより明確に見える。「タテ」の発想で先人が繰り返した試行錯誤から学び、「ヨコ」の発想で世界の人々の考え方や実践を学べば、自分ひとりの能力ではたどり着けない、よりよい方法や正しい答えに行き着くことができる。
②算数、すなわち数字・ファクト・ロジックで考える
 数字(データ、エビデンス)・ファクト(事実)・ロジック(論理、理屈)の3つが欠けていると、曖昧で説得力のない主張しかできない。3要素によって合理的な説明がつく。
③外付けハードディスクを利用する
 思考力と知識量は別物。自分の頭の容量を超える知識や情報は「外」において、必要な時に調べればいい。また、自分の知らないことは、「知っている人」に聞くのも大切。
④問題を分類する「自分の箱」をいくつか持つ
 問題がどういう性質のものなのかを見極め、仕分けすることが大切。それがどんな「箱」に分類されるのかを考える。「正解があること」と「正解のないこと」の2つの箱に分けることができる。 専門に研究している真っ当な学者の世界ではほぼ結論が出ているのに、メディアに煽られた世間の「俗論」がそれに反対している「ポピュリズムに載りやすい問題」や、既得権や人気取りから生まれた「俗論」を見抜くには、「まず専門家の意見を虚心に聞く」ことだと心得る。
⑤基礎知識を持った「考える葦」になる
 「考えれば必ず答えの出る問題」しか知らない人間だけでは、未来を切り拓くことはできない。混迷の時代は、知識偏重の教育を受けた受験秀才ではサバイバルできない。人間を「基礎知識を持った考える葦」として育て、「正解のない問題」にあふれた社会に送り出すのが教育の役割。
⑥自分の半径1メートル圏内の行動で世界は変えられる
 15才のグレタ・トゥーンベリさんがたった一人で始めた「気候のための学校ストライキ」は、1000万人を超える若者を動かした。世界を変えるのに一番手っ取り早い行動は、選挙での投票。
⑦「みんな違って当たり前」だと考える
 教育に求められることは、「違い」を受け入れること、「個性」を大事にすること。「人がみんな違う」という発想があれば、社会に多様性が生まれ、そこから新しいものが生まれる。
⑧人の真贋は言行一致か否かで見極める
 公の場で相手によって意見や態度を変え、言行が一致しない人は、リーダーとしても失格。
⑨好き嫌いや全肯定・全否定で評価しない
 人の意見を聞く時は、自分の好き嫌いは脇に置いて、意見は意見として独立して判断する。
⑩常識は徹底的に疑う
 新しい問題を解決するためには、常識を疑うことが何よりも重要。「疑う」と「否定する」ことは同じではない。否定できるだけの明確な証拠がなければ、長く続いてきた伝統や慣習はそのまま大事にしておけばよい。

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