地頭力を鍛える
2009年01月01日(木)
問題解決に活かす「フェルミ推定」
細谷 功著
東洋経済新報社
2007年12月20日発行
1600円
「日本全国に電柱は何本あるか?」
コピペ族が氾濫し、考える能力がますます退化していく現代において、人材確保のために利用している企業の面接問題である。考える手がかりもほとんど無い状況下で、3分以内に答えを出す。結果の正確さではなく、思考のプロセスを試す問題である。
また、「フェルミ推定」を使って地頭力を鍛えよう。自分なりに答えを出してページをめくり、答えを読むWhy型の好奇心を持ってこの本にチャレンジしていただきたい。
1.フェルミ推定が面接試験で用いられる3つの理由
①質問の内容が明快かつ身近なものである
②「正解がない」ことで、純粋に考える「プロセス」が問える
③簡潔でありながら問題解決の縮図である
例題 シカゴにピアノ調律師は何人いるか?
世界中で1日に食べられるピザは何枚か?
世界中にサッカーボールはいくつある?
日本全国に信号機は何本あるか?
2.人間の知的能力は3つ
それは、記憶力(知識力)、対人感性力、地頭力である。そして、環境変化が激しく、過去の経験が未知の成功を保証するとは限らない現在において、「地頭力」が未知の領域で問題解決していく能力という点で重要な能力といえる。
「地頭のいい」人材は潜在能力が高く、どんな分野に取り組んでも業務知識の習得が早くて高いパフォーマンスが期待できる。
3.地頭力は、「考える力」の基礎
3つの思考力(仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力)とベースとなる3つの力(論理的思考力、直感力、知的好奇心)から構成される。
「地頭力」とは、「離れて考えること」ではないかと思っている。「こちら」から「向こう」へ離れるのが仮説思考、「部分」から「全体」へ離れるのがフレームワーク思考、「具体」から「抽象」へ離れるのが抽象化思考といった具合である。
4.「フェルミ推定」とは何か
把握することが難しく、ある意味荒唐無稽とも思える数量につい何らかの推定ロジックによって短時間で概数を求める方法をフェルミ推定という。「原子力の父」として知られるノーベル賞物理学者エリンコ・フェルミ(1901-1954)が講義でよく使われたので、彼の名前を取ってフェルミ推定と呼ばれる。
5.守りの「論理」と攻めの「直感」
最初に仮説を立てるという冒険をしなければ、事柄は進まない。これに対して、設定した仮説に基づいてそれを検証していくのは論理の側面が強くなる。アインシュタインは以下のような言葉を残している。「発明は、最終的結果が論理的構造と結びついていても、論理的思考の結果ではない」「私には特別な才能などありません。ただ好奇心が激しく強いだけです。」
6.知的好奇心にも2種類
既に何らかの答えが出ているものに対して、安心してそれ以上のことを考えようとしない知識に対する好奇心(What型)と、自分なりの視点を加えさらによい答えがないか考える問題解決に関する好奇心(Why型)がある。
外山滋比古氏は、『人間の能力を、①受動的に知識を得る「グライダー能力」と②自分で物事を発明・発見する「飛行機能力」の2つに分けた上で、学校はグライダー人間をつくるのに適しているが、飛行機人間を育てる努力をほんの少ししかしていない。学校教育が整備されると、似たようなグライダー人間が増えすぎて、グライダーの欠点を忘れてしまう。』と批判している。
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